アンティーク時計はなぜ『非防水』扱いなのか

waterproof

これは防水検査の試験機を使って、テストをしているところです。

アトリエ・ドゥでは、修理する時計が元々防水仕様のものであれば、なるべく製造時の性能の再現を目指しており、とくに現行品は必ずこの試験機を用いて防水性能をチェックすることにしています。アンティーク製品であっても、製造時に防水仕様を持たせて作られた時計であれば、現行品同様に本来は防水性をチェックして、時計の動作と同様に1年間の保証をつけるべきだとは思います。

わざわざ回りくどい表現をするのは理由があります。まず、防水性を保つためには金属ケースやリュウズや裏蓋、ベゼル、風防といった、個々のパーツを組み上げるときに、ある程度の水圧にも耐えるような気密性が必要となりますが、ここが実はかなり曲者です。裏蓋とケース本体のように、取り外しがしやすく、ゴムで作られたガスケット(パッキン)などが交換しやすい部分では、通常あまり問題は起こりません。ところが、リュウズとケース本体をつなぐパイプの部分など、構造的にも弱い部分は、経年の使用によりヒビが入ったりサビが発生したりして、機械強度的にはまだ使用上問題がなくても、防水性能的にはすでに破綻していることが良くあります。

リュウズやパイプの間に入るパッキン(Oリング)も、汎用品で済む場合は交換可能ですが、中には特殊な規格のものや独自構造を持つものもあり、こうした物などは古くなるほどオリジナルパーツの入手が困難で、汎用の代用品ではうまく機能しないこともあるのです。風防まで含めるともっと話は面倒になり、風防をそもそもどのようにしてケースに固定しているか、だけでも大まかに分けて3通りのタイプがあり、接着剤でケースに付けているもの、Iリングパッキンを間に挟んで圧入しているもの、裏蓋のようにOリングまたは平型パッキンをかませ、ベゼルと共にはめ込むことで固定させるもの、などがあります。それぞれに防水不良を起こしたときの対処も違ってきますし、ムーブメントの修理に負けず劣らず、経験とノウハウが必要になります。たかが防水と思うなかれ、です。

時計の持ち主が自分の時計は防水だから大丈夫と思い、時計をつけたままお風呂に入るとか、プールや温泉などに入ってしまったときに悲劇が起こります。時計の部品は鉄ですから、当然ですが水が入ると錆びます。(温泉や海水はなおさらです)中のパーツにまでどっぷり浸水してしまうと、パーツ交換だけで新品がもう一つ買えてしまう位の値段がかかることもあります。こうした悲劇を招くような誤解はどうしても避けなければなりません。

こうした事情もあり、アンティーク製品では例えそれが製造時に防水仕様であったとして、防水テストをして耐えられるのを確認したとしても、保証は難しい現実があります。相当年月の利用により、いつ防水不良を起こすかはほとんど予測不能だからです。(極端な話、テストに通った翌日に不良化したとしても、何の不思議もないほどです)

そのため、アンティーク製品では基本は『非防水』とせざるを得ないのです。