新コース『全ておまかせプラン』の創設

日ごろはアトリエ・ドゥをご利用いただきまして、誠にありがとうございます。

さて、このたびアトリエ・ドゥでは新コース『全ておまかせプラン』を創設しましたので、お知らせさせていただきます。


  • 『全ておまかせプラン』について

近頃、オークションなどで中古品を入手され、当工房に修理をご依頼いただく案件が非常に多くございます。しかし、状態は実にさまざまで、オーバーホール実施のみで直るものから、ほとんどジャンク品に近く修理不能なものまでいろいろです。

ひとくちにアンティークと申しましても、形見のようにその家で大切に保管されていたものと、オークションなどで得体のよく知れない経路をめぐってきたようなものとでは、時計の状態にも雲泥の差があることも多く、いつも頭を抱えております。

当工房のブログなどで修理の実例などをご参考にされて、「同じ時計だから大丈夫だ」とお思いになって申込みされるお客様も多いのですが、我々プロから申し上げますと、同じ時代ないし同じ形式のムーブメントであるから、同じように直る、などというのは全く根拠もない勝手な妄想と言わざる得ません。

時計の状態は実にさまざまです。オーバーホールのみで直った実例をブログでご覧になられて、お手元のジャンク品に近いようなものを、同じ費用で直ると思ってしまう方が後を絶ちません。見積もりを出して、金額を見てビックリされ「やっぱりやめます」という方もとても多いです。

アトリエ・ドゥでは見積もりは無料で実施しております。しかし、裏蓋をあけた瞬間に、ほとんど分解しなくても状態がわかるほど良好なものから、隅々まで全部分解しないと本当のところが分からないようなものまで、こちらも様々です。後者の場合は見積もり作業だけでもたいへん時間も手間もとられます。

しかし、そんなジャンク品に近いような分解するだけでも難しい(下手に分解するとそれだけでさらに壊れることもあります)ようなものを、正しい見積もりをすべく必死になって分解して、不良箇所を特定し、手に入るかどうか分からないようなパーツを皿の目のように検索を駆使して世界中から探し出した挙げ句、次のひとことが返ってきたらどうですか?

「やっぱりやめます」

あー。冗談ではございません。そんな軽いお気持ちだったのかと。それはまあ、ご予算というものがありますでしょうから、無理ならキャンセルOKです。そのつもりでアトリエ・ドゥでは見積もりは無料にしております。

でも、商売としてこれではどうなのかと思うに至りました。

汗水たらした時間=コストです。それが無駄に消えていく。これはなんとかしなければ。その同じ時間を対価を払ってご依頼してくださるお客様のために使いたい。半ば高みの見物気取りのような方には、なるべく貴重な時間を私としてもさきたくありません。

その一方で、「いくら払ってでも、直したい」という方も、非常にごくまれですが、需要として確かに存在しているということも見えて参りました。

そこで、物見遊山のような軽いお気持ちの方には申し訳ないですが、より熱く本気度の高いお客様に、予算に糸目をつけず最高のサービスを提供すべく、この度の新コース設立と相成った次第でございます。

以上のような背景で、【ジャンク品でも実働品に甦る】をキャッチ・フレーズに、それこそ予算や手段を選ばず、私個人として本当の意味で可能なことは全て提供する、正にハイエンドのサービスを提供開始するということです。

ジャンク品をどうしても直したい場合の方法はひとつしかありません。

まったく同じ型番のムーブメントで動くものを見つけて来て、中身をそっくり取り替えてしまうのです。邪道もへったくれもありません。キレイ言はもうたくさん。散々いい訳を聞かされた挙げ句、「うちでは受付できません」と言われたら、ショックじゃないですか。

でも、予算や方法は問わないから、とにかく動くようにして欲しい、というご要望に対しては、最終手段であり、有効な修理方法です。

実際のところ、他のムーブメントから部分的にパーツを抜き取って修理する、という方法は決して当工房に限ったものではなく、広く世界的に昔から修理の現場で行われている方法です。私が昔修行した、御徒町の某有名修理専門会社でも、それは普通の当たり前のこととして、日々行っておりました。そこには棚がびっしり、引き出しの中には小分けされたパーツやジャンクムーブメントが、古今東西どこのメーカーの何と言うマイナーなものであれ、およそ全てストックしてあるのではないか?と、素人の想像を絶する膨大なコレクションが眠っておりました。(その店は、「この店で直らなければ、日本中どこへいっても無理」と時計ファンに言わしめるほどの評がありました)

そんな有名店ですら、そうやって直しているのが実情なのです。見て来た、実際に従業員としてメシ食わせてもらった私が言うのですから、間違いありません。

ここまでお話してお気づきのように、メーカー年式問わず、どんなものでも直すためには、そういう途方も無いストックが必要だということがお分かりになったと思います。

そして、その会社の社長さんは時計修理の職人としても一流の方でしたが、経営者としては少し問題のある方でした。それほどの膨大なコレクションを使って修理をしておいて、交換パーツ費用をほとんど取らないのです(!)顧客の目からみたら、神様のような方です。(しかし、実態は大赤字で経常利益はほとんどない会社として問題のある店でした)

とても真似できません。真似したら倒産して路頭に迷います。その社長さんは十分な修理人生を歩んで来られ、得る物はおよそ全て得てきたから、そんなやり方ができるのです。創業したてのアトリエ・ドゥでは到底無理な営業スタイルというわけです。

しかし、技術で負けているとは思いません。(私もかつてその一員だったわけですから笑)経験と地力で負けます。それだけが違います。必要なムーブメントは都度ebayなどの海外オークションで入手しなければいけません。そのお代はお客様もちです。抜き取った余りはアトリエ・ドゥに寄付して使わせてください。いずれ必ず恩返しさせていただける時がまいります。(私も社長のような70〜80代ゴールデンエイジとなった頃)

そういうサービスですので、ご予算10万円からとさせていただきます。(が、その実ちっとも手取り収入の増加にならないサービスだということがお分かりになると思います。予算のほとんどは、次にいつ使われるかもしれない金属のかたまりとなって、延々アトリエ・ドゥの引き出しに眠るというわけです)

 

この趣旨にご理解・ご賛同いただける熱い時計ファンのご利用をお待ちしております。

アトリエ・ドゥ代表