ジャガールクルト・レベルソグランドGMT

Jaeger-lecoultre|Reverso grande GMT

千葉県T.T.様ご依頼品

ジャガールクルトのレベルソのオーバーホールご依頼です。2本お申し込みの2本目です。ジャガールクルトと言えばレベルソというほど、同ブランドの代表作です。他のどの腕時計にもない際立ったルックスのためか、高級腕時計にもかかわらずしばしば服飾系の雑誌にまでオシャレアイテムとして紹介されているほど。このため、時計ファン以外にも愛用者の多いめずらしい位置付けにある時計でもあります。今回はレベルソシリーズの中でも複雑で多機能なGMTのご依頼です。当工房ではカレンダー付程度のものはオマケで基本オーバーホール料で受付しておりますが、さすがに今回ばかりは、ビックカレンダーにパワーリザーブ、GMT、24時間表示と4つもの機能が通常のレベルソサイズに詰め込まれた非常に複雑な機構のモデルであるため、クロノグラフ相当の時計としてお受けすることにしました。


ジャガールクルト・レベルソグランドGMT

まずは分解前の歩度測定から。やや遅れ気味の姿勢もあるものの、マイナス10秒程度までに収まっており、振りも出ていて状態はほどほどに良いと思われます。

 

ケースから出して文字盤まで外したところ。ムーブメントの状態もパッと見たところは良さそうです。

 

1箇所だけ赤いサビと思われる粉がはみ出している部分を発見。GMTの早送りボタンにつながるハンマーが取り付けしてある所。ここにはプッシャーをポチポチと押すときの力が伝わってくる所ですから、摩耗したり痛みやすい部分といえます。

 

ハンマーを取り外して裏返したところ。やはりサビておりました。

 

サビの部分はハンマーの内部まで少し進行してしまっており、サビを落としたところ少し虫食い跡のような凹みが残りました。今後の利用により強度や機能に問題が出てくるほどではなさそうですので、サビ止め効果のある強めのグリスオイルを塗って再利用とします。

 

こちらはリュウズのささるパイプ周りの様子。ケースには緑青の吹き出しも見られます。構造上この面はケーシングしても外気に触れる部分のため、お使いになるうちにはどうしてもこのように汚れがたまりやすく、サビや緑青が出てきます。定期的にメンテナンスをすることで、劣化を最小限に防ぐことが長持ちさせるコツになります。

 

全てのパーツを分解したところ。パーツの量が通常の時計の2、3倍あり、しかも小さく細かいです。

 

こちらは外装パーツの様子。文字盤もレベルソは裏と表で2枚あります。

 

地板にバランスを取り付けて、ひげゼンマイなどの調整を行います。

 

底面のGMTプッシャー用の取り付け穴は、プッシャーを外すとこんな感じの長細い穴となっており、、。

 

これをバランス確認用の窓として使えるようにもなっています。さすが老舗のジャガールクルト。小洒落たセンスの良さは内部ムーブメントにまで及びます。ひげゼンマイはご覧の通り水平一直線であり、今回私が特に調整しなおす必要はありませんでした。

 

ベースムーブメントを組み立てていきます。輪列に歯車を乗せたところ。香箱はダブルとかツインバレルと呼ばれるタイプで、2つあります。パワーリザーブ機能も単なる伊達ではなく、これにより通常より2倍以上長い駆動時間を確保できます。

 

輪列受けを組んでベースムーブメントの完成したようす。さらにこの上に付加機能用の歯車が並んでいきます。

 

ひとまず半巻き程度にゼンマイを巻いて特性のチェック。すでに分解前の全巻きの特性と同等まで回復しており、オーバーホールは順調に進みます。

 

GMTやパワーリザーブの機構の組み付けへ進みます。似たような形や大きさの歯車がいくつもあり、注意深くよく噛み合いを確認しながらやらないと、あとでエライ目をみます。きちんと合っていないものを無理に取り付けると、動作が正常でないばかりか、最悪の場合は部品を破損してしまったりします。難しい機構です。

 

ムーブメントのキャリバー878は搭載モデルもそう多くなく、修理の現場でもあまり見かけない珍しいものです。これを整備するのは私は今回がはじめてとなりました。レベルソ・シリーズは種類が多く、いろいろなモデルがあるのですが、これは最も複雑なモデルのひとつだと思います。

 

表輪列側の組み付けはここで完成です。あとは文字盤を乗せて針を付けていきます。

 

表輪列(裏側)は黒の文字盤にGMT、24時間計(針)、それにパワーリザーブがつきます。

 

こちらは裏輪列(表側)のようす。ビッグカレンダーはなかなかのアイディア賞で、日付一桁の円形ディスクに外溝を設けて、これを「10」「20」「30」「31」と経て「1」へと戻る都合4回だけ左下の四角い「0123」ディスクを動かす仕組み。簡単で部品点数が少なく面倒な調整もいらないため、楽でした。(ビッグカレンダーの中には恐ろしく複雑怪奇な機構もあり、脳みそフル回転しないと分解や組み立てがままならないものもあります、、)

 

文字盤と剣付けをして、表側も完成。針回しは裏と表で同時に長短針が動く機構のため、これは馴れないとズレが出たりして少しコツがいります。これは全レベルソに共通する特徴です。こういう点も含め総合的に組み立て・調整の難易度の高いムーブメントです。

 

最終特性

左上)文字盤上 振り角 302° ビートエラー0.2ms +014 sec/day

右上)文字盤下 振り角 306° ビートエラー0.0ms +010 sec/day

左下1) 3時下 振り角 256° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

左下2)12時下 振り角 257° ビートエラー0.1ms +014 sec/day

右下3) 3時上 振り角 236° ビートエラー0.1ms +012 sec/day

右下4)12時上 振り角 250° ビートエラー0.3ms +003 sec/day

 

完成

【レベルソグランドGMT ref.Q3028420】
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□オーバーホール料金 手巻き・複合機能 ¥ 30,000
□その他
 ・外装研磨サービス 洗浄のみ                    ¥ 無料
 ・特別費用 サビ取り&パーツ補修          ¥ 10,000
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合計金額                       ¥ 40,000

 

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