セイコー・ロードマーベル 5740-1990

SEIKO|Lord Marvel 5740-1990

広島県S.O.様ご依頼品

もともとお父様のご遺品だったロードマーベルを紛失されてしまったものの、忘れられずに同じロードマーベルを探してご入手されたものとのこと。厳密にはご遺品ではないのですが、お気持ちを汲みましてささやかながら少しサービスしてあります。商売は買う方売る方両方いてはじめて成り立ちます。どちらか片方だけでは成立いたしません。お互いに謙虚さと敬意をもちたいものですね。俺様は客だぞといわんばかりの招かざる方からは容赦なくふんだくります。今回のご依頼主は丁寧に詳しく時計の入手経緯や思いなどをしたためられ、メールからも情熱が伝わってくる方です。そういう方にサービスしたくなります。私も人間ですから。お金さえ払えば同じ品質のサービスが得られると考える方は、自動販売機でジュースでも買ってください。例えばお寿司屋さんにいってオレ様態度でいいネタにぎってもらえるとお考えなのでしょうかというお話でした。


セイコー・ロードマーベル

分解前の測定から。波形がかまぼこ型で姿勢によって遅れや進みがバラバラです。だいぶ使い込まれている模様。

 

購入は某有名ショップで工房主も何度か個人的に利用したことのあるところ。しかし、今回の機械を担当した職人はモグリというかこれはちょっとダメな注油の仕方です。香箱から完全に油がはみ出して、受けにまでベットリと広がってしまっています。油の量と種類が適切でないばかりでなく、香箱真と香箱のすき間が経年によりすり減ってガタが来ており、さらに液体が漏れやすくなっていることも原因です。だいたいそういう点が見抜けない職人に限って、いい加減な注油しますので、こうなります。

 

こちらは分解前のバランス(上)と修正後(下)

ひげぜんまいがやはりというか、傘型に曲がってしまっており、ヒドイ有様。中心もずれており、まったく仕事になっておりません。これも当工房できっちりと修正させていただきました。まっすぐに、平らでなくてはなりません。

 

香箱のゼンマイも洗浄して再注油します。いつもの五点指しですが、これが正しい油の量です。どう考えても冒頭のようなベットリあふれるような量ではありません。これでゼンマイ全体の表面に油が行き渡ります。油漬けにする必要はないわけです。

 

全てのパーツの分解と洗浄がすみました。

 

ベースムーブメントを組んでいきます。いくつかの箇所は摩耗が激しいため修正してあります。交換パーツは入手できません。

 

ベースムーブメント完成。

 

ゼンマイを半巻きにしての測定です。まだ波形はいくらか曲がっています。周期的にうねりが出るのは使い込まれて摩耗した機械で、修正に限界があります。少し全体的に進みぎみに調整して余裕をもたせます。

 

文字盤と剣つけ。機械の中身の状態に比して文字盤や針の状態は目立つ傷や劣化もなくまずまず良好です。もっとも、中古屋で販売されるものはムーブメントと外装を入れ替えたりしてある可能性がありますから、他から取ってつけたものかも知れません。

 

針を真横からみたところ。独特のカーブがつけられています。これはオリジナルと同じですので、このままとします。

 

外装は18金製の最高級バージョンです。(同じ5740-1990でも金メッキタイプもあります)研磨サービスご希望のため、軽めに研磨してあります。少し深めの傷が全体にみられたため、あまり完璧に傷を落とそうと深く研磨しますと、金はとてもやわらかい金属のため、研磨で削れてあっという間に目方が減って変形してしまいます。ほどよくオリジナルのシェイプを保ちつつ、細かな傷だけを落とします。

 

風防は古いタイプで、プラ風防をパチっとベゼルに手ではめ込んであるだけです。もちろん非防水ですから、直接水がかかるような環境でのご使用はおひかえください。

 

ケーシングのようす。裏蓋との間に防水リングがあるものの、くどいようですが非防水です。当時はまだ腕時計の防水そのものが世界的にもめずらしい状況(1950年代ごろ)で、各メーカーとも試行錯誤の状態でした。そのため現在の感覚からすると風防ベゼルと裏蓋側で仕様の異なるずいぶんちぐはぐにも思える防水パッキンの使われ方などが見受けられます。

 

最終特性

左上)文字盤上 振り角 264° ビートエラー0.1ms +010 sec/day

右上)文字盤下 振り角 261° ビートエラー0.1ms +016 sec/day

左下1) 3時下 振り角 221° ビートエラー0.1ms +034 sec/day

左下2)12時下 振り角 231° ビートエラー0.3ms +019 sec/day

右下3) 3時上 振り角 224° ビートエラー0.4ms +021 sec/day

右下4)12時上 振り角 227° ビートエラー0.4ms +035 sec/day

手は尽くしましたが、だいぶ波形が眠たいので、まず日差30秒以内をめざして、数日ランニングテストで様子見しながら少しずつ追い込んでいくことにしました。古い時計は使用する季節など外気温などの影響でも歩度が変化します。その分も折り込みまして、実測で1日あたり10秒程度の進みとなっていれば丁度良いものです。今回はもう少し、15秒くらいなら合格でしょう。

 

【Seiko Load Marvel (5740-1990) 】
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□オーバーホール料金 手巻き   ¥ 15,000
□その他
 ・研磨サービス 手仕上げ (18K ケース、風防) ¥ 5,000
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合計金額      ¥ 20,000

 

 

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