タグホイヤー・カレラ

TAG heuer|Carrera

新潟県K.F.様ご依頼品

タグホイヤーのカレラのオーバーホールと外装ポリッシュのご依頼です。クロノグラフはプッシャーボタンなどのでっぱりがたくさんあるので、こういうものを研磨するのはとても大変です。お金もかかります。その割には新品同様のような輝きが戻るかと言えば、あんまり自信がありません。研磨のやり方とかかる費用や技術の巧拙程度は、店(職人)によってぜんぜん違います。私はムーブメントの組み立て調整の専門で、外装の研磨は素人とたいして変わりません。ですから当工房ではあまり研磨はおすすめしておりません。使えばまたすぐ傷だらけになりますし。それでもやはり研磨したくなる方は後を絶ちません。ご依頼が来てしまったからには仕方ありません。しぶしぶ出来る限りのサービスをすることにいたします。


タグホイヤー・カレラ

分解前の歩度測定。まずまず振り角も保たれており、そろそろ油が切れはじめて来た頃かなというところ。

 

ケース本体を分解していきます。クロノグラフプッシャーなどは、研磨するためにはケースから取り外す必要があります。分解や再組み立てができる構造のものであっても、経年の劣化などにより再利用できないものも多いです。そのためプッシャーやリュウズまわりの外装パーツは新しく交換することになります。とくにプッシャーの軸シャフトは細いため、何かに少しぶつけたりひっかけたりしただけで曲がってしまい、分解しようとすると軸が折れたり他のパーツを傷つけたりします。過去に実際にあったのですが、今回と同じモデルの研磨ご依頼でプッシャーを分解して再利用したところ、研磨後に防水が効かなくなり、水入りしてクレームになったことがあります。(なんでもシャワー浴びるときにも身につけていたとかで、使う方も使う方だと思いましたが)

クロノグラフなど複雑な構造の外装パーツを持つのを研磨するのは、新しく製造し直すのと同じ技術やパーツのクオリティが要求されます。ゆえに研磨料のほかパーツ交換費用がかかり、トータルの費用は高くつくことをご理解ください。

 

ケースからムーブメントとリュウズを抜いたところ。洗浄のみであればこの状態で可能ですが、研磨する場合はさらにベゼルや風防やプッシャーなどを全部ケース本体から取り外さなければなりません。

 

分解途中の様子。ご購入から数年以内など新しいものは比較的分解と再組み立てが容易ですが、数十年とかずっと長くお使いだったものを同じように分解して研磨できるかというと、まず無理なものが多いです。たいがいそういうものは汚れなどがたまって内部が腐食したり劣化したりしていて、取り外した瞬間にパーツが壊れちゃったりします。そうすると再利用もできません。交換用のパーツも手に入らなかったりします。もう最悪です。ですから古い時計ほど研磨することは非常にリスクが高く、難しくなります。(1980年より昔のアンティーク品など多くの場合は研磨のご依頼があってもお断りさせていただいております)

 

こちらは内部ムーブメントをすべて分解したところ。

 

ムーブメントのパーツを洗浄してパーツケースにおさめたところ。

 

ベースムーブメントの組み立てまで完了したところ。

 

ベースムーブメントの測定。推奨値の範囲内まですっかり回復。問題なし。

 

続いてクロノグラフ部分の組み立てへと進む。過去に整備された形跡がなく、ネジの頭などどこを見ても痛みがなく、たいへん状態がよいです。

 

カレンダーと文字盤・針の取り付け。

 

ケース本体の研磨も行い、ピカピカになりました。エッジなどの稜線は若干研磨前よりもゆるく丸みが出てきます。研磨はやればやるほどシャープな輪郭が消失して、丸く小さくなってしまいます。あんまりやりすぎると、オリジナルの頃の雰囲気とは別物になってしまいます。

 

ケーシングのようす。研磨したものにパーツやらムーブメントを取り付けるのも一苦労です。ステンレスとはいっても、完全に鏡面仕上げしたものはわずかな拭き傷でも目立ってしまいます。テッシュペーパーで拭いただけでも傷がつきますよ。そんなものをネジだの裏蓋だのパーツだの、工具を使って取り付けたり締め直したりするわけですから、尋常でない細やかな神経が要求されます。場合によっては組み立て完成後に部分的に再研磨したりもします。どうしても組み立てキズなどがついてしまうことがあるので。こうして記事としてまとめるとさも簡単そうにやっているようで、実は毎回ヒーヒー言いながらやっております。

 

最終特性 (全巻き・クロノグラフON)

左上)文字盤上 振り角 297° ビートエラー0.0ms +000 sec/day

右上)文字盤下 振り角 289° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

左下1) 3時下 振り角 269° ビートエラー0.2ms +010 sec/day

左下2)12時下 振り角 268° ビートエラー0.1ms +003 sec/day

右下3) 3時上 振り角 264° ビートエラー0.0ms +006 sec/day

右下4)12時上 振り角 270° ビートエラー0.2ms +009 sec/day

状態よく、ほぼ新品同様の性能と思います。タグホイヤーのクロノにはSW500という、ETA7750のライセンス品が使われているモデルもあるのですが、やはりオリジナルETA7750のほうがなにかと優れているような気がします。今回は7750搭載機です。

 

《Before & After》

 

【タグホイヤークロノグラフ cal.7750】
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□オーバーホール料金  クロノグラフ ¥ 30,000
□交換パーツ
 ・純正クロノグラフプッシャー@2        ¥ 20,000
 ・ガスケット類          ¥ 2,000
□その他
 ・外装研磨サービス 手仕上げ    ¥ 20,000
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合計金額              ¥ 72,000

 

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