今日の時計『ブルガリ・ディアゴノ』

BVLGARI |DIAGONO
BVLGARI |DIAGONO

奈良県M.I.様ご依頼品

ブルガリのディアゴノのオーバーホールご依頼です。お洒落ですねぇ。しかし、この時計は完全に欧州仕様というか、ケース径も大きくものすごく重いのです。2、3本分位あります。日本人なら力士のような大柄な体格でないとちょっと似合いません。熊の出る地域では、足跡をみると熊のおよその大きさが分かるといいますが。時計師は腕回りから持ち主のおよその体格が分かります。ご依頼主様はかなりの巨漢とお見受けしますが、私も一度こんな時計がしてみたいです。(彼がやるときっとイタリアの伊達男。私がやるとパパの背広着た小学生。。ウラヤマ)


ブルガリ:ディアゴノ

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分解前の歩度測定から。−5〜−10秒程度の遅れが出て来た状態で、ちょうどオーバーホールの時期が訪れた頃のようです。その割に平姿勢で340°(!)も振っており、これは少し振り過ぎです。振りが少なくても良くないのですが、振り過ぎはもっと良くない事が起こります。“振り当たり”といって極端に歩度が進んでしまうのです。放置していれば正常なのに、身につけると1日に何分も進む場合は真っ先にこの現象が疑われます。ご依頼主様は特にそういう現象は訴えてないものの、これは修正が必要なレベルです。

 

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さっそく分解していきます。これはベンジンカップで洗浄をしているところです。1つの時計の作業毎にベンジンは全部入れ替えて、常に綺麗な状態で洗浄をします。とくに良好な洗浄が求められる繊細なパーツから順に洗浄していきます。テンプは分解して個別に洗うこともありますが、このように地板と受けに組んで洗うこともあります。

 

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全てのパーツの洗浄が終わりました。まだ新しい時計のようで、中のパーツもほとんど新品と変わりません。交換が必要となるパーツも見当たりませんでした。

 

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洗浄後のパーツは伏せ瓶でいつでも保護できるようにします。ちょっと休憩したり席を外す場合には、このようにパーツ全部を覆って、チリやホコリの侵入を防ぎます。作業机が常に清潔に保たれるようにすることは、この仕事でとても大切なことです。

 

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テンプの調整を行っているところです。長く使用された時計では、ひげぜんまいが変形していたりしますので修正が必要です。今回はほとんど修正の必要もなく、すんなりと次へ進みます。

 

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香箱とゼンマイの注油を行います。左が分解前です。ほとんど汚れておらず、そのままでも使えそうでしたが、念のために取り出して洗浄し、再注油します。99%大丈夫だろうと思っても、1%に泣くのがウォッチメーカーの世界です。「かも知れない」ということを忘れてはいけません。

 

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ムーブメント本体の組み立てに移ります。まずは巻き上げ機構から。

 

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続いて輪列の歯車を組んでいきます。

 

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アンクル(脱進器)まで進んだところ。ここで問題を発見しました。

 

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これはアンクルを拡大したところです。2つある赤いツメ石のうち、右のツメ石の取り付け量(赤い矢印で挟まれた部分)が小さ過ぎるため、具合が良くないことが判明しました。そこで、0.01mm〜0.03mm程度ツメ石を引き出して、最もふさわしい位置に固定しなおしました。「そんなことが可能なの??」ハイ。そういう調整が楽にできるようでないと、これでメシは食えません。「それっぽっち動かしたって、何が変わるの?」それは次を見れば一目瞭然です。

 

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ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 310° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

右上)文字盤下 振り角 305° ビートエラー0.0ms +003 sec/day

左下) 3時下  振り角 285° ビートエラー0.1ms +008 sec/day

右下)12時下  振り角 280° ビートエラー0.2ms +010 sec/day

分解前に340°振っていましたが、310°以下まで30°落とすことに成功しました。かつ、これは理想的な振り角です。主犯はツメ石くんでした。たった1つのパーツが、0.01mmかそこら取り付け位置が違うだけでこうなのです。まして0.05mm以上も手元が狂ったら、「あれ〜200°しか振らないよ?なんで!?」なんてことになります。それでも動けばまだいいでしょうが。もし、心得のない者が真似したら、、、二度と動かぬ鉄の塊と化すでしょう。笑

0.01mm(100分の1ミリ)の変化が分かる『目と手で』仕事しています。

 

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ベースムーブメントが良好なので、カレンダーと文字盤/剣付けへと進みます。

 

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陽気に自動巻ブロックを組みます♪

 

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あっという間にケーシングで出来上がり。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 308° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

右上)文字盤下 振り角 294° ビートエラー0.1ms +004 sec/day

左下1) 3時下 振り角 282° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

左下2)12時下 振り角 285° ビートエラー0.3ms +010 sec/day

右下3) 3時上 振り角 282° ビートエラー0.4ms +007 sec/day

右下4)12時上 振り角 280° ビートエラー0.1ms +001 sec/day

全姿勢差Δ9秒 少し開きがあるものの、まずまず合格と言って良いでしょう。

 

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外装研磨サービスはライトポリッシュです。といっても、全体がほとんどヘアライン仕上げなので、磨いた部分はバックルの裏とベゼルのフチの2カ所だけです。洗浄のみでも十分キレイな個体でした。

 

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完成

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