今日の時計『カルティエ・シータイマー』

Cartier|Sea-Timer Cal.2892A2
Cartier|Sea-Timer
Cal.2892A2

奈良県M.I.様ご依頼品

カルティエのシータイマーの歩度の調子が安定せず、机に置いておくと数時間で止まるとのことで修理のご依頼をいただきました。ムーブメントはETA2892A2を搭載していますが、ETAは2016年から交換パーツの供給も停止したので、今後はETAムーブメントもアンティークと同様、パーツの入手困難な仲間入りをしていくものと思います。今後パーツ価格は上がることはあっても、下がる事はあまり期待できません。当面は在庫がありそうですから、ETAの機械が入った時計をお持ちの方は、今のうちに早めのメンテナンスを受けることをおすすめします。


オーバーホール事例:カルティエ “シー・タイマー” (奈良県M.I.様ご依頼品)

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カルティエのシータイマーが歩度が安定しなくなり、パワーリザーブもすぐに止まってしまうとのこと。ご依頼内容はオーバーホールとライトポリッシュです。さっそく分解していきます。

 

Cartier-02

自動巻きブロックのうち、リバーシングホイール(切替車)のホゾに大きな摩耗が見られ、しかもサビが出ているのを見つけました。このため巻き上げ効率が落ちてゼンマイがあまり巻けず、動作の持続時間が短くなっているようです。さすがにここまで形が崩れていると研磨では補修不能で交換です。

 

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ムーブメントはETAの2892A2(毎時28,800振動)のため、ETAの純正ファクトリー・パッケージ新品へ交換します。2016年からETAはサードパーティ向けパーツの供給を停止したため、時計材料店でも在庫限りとのこと。当面はまだ在庫がある様子ですが、今後は年々貴重になりオークションを通して時価での入手経路に頼らざる得なくなりそうです。

 

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新しいパーツと見比べると、違いが一目瞭然だとおもいます。たったひとつのパーツに問題があるだけで、時計は正常に機能しません。無駄なパーツなど何一つなく、全てが正しく機能するために必要なものなのです。

 

Cartier-05

ベースムーブメントは分解前に測定をしておきます。実は当初測定不能でしたが、パーツの中に汚れのひどいものがあり、そこだけ汚れを落として注油し直したところ、一気に振り角があがって測定可能になりました。測定結果を見る限りは、ベースには特に問題なく、オーバーホールのみで調子が戻りそうです。

 

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全てのパーツの分解と洗浄が完了したところです。

 

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ゼンマイも洗浄して巻き直して注油します。

 

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テンプの調整を最初に行ないます。異なる方向からひげぜんまいの様子などをチェックして、どこから見てもひげぜんまいが水平で等間隔になるように調整します。

 

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ベースムーブメントの組み立てです。巻き上げ機構と輪列から組んでいきます。(写真上)受けを組み、アンクル/テンプまで取り付け完了しました。(写真下)

 

Cartier-10

こちらは裏回りです。カレンダー機構を組み上げていく様子です。

 

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ベースムーブメントの測定です。

左上)文字盤上 振り角 302° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

右上)文字盤下 振り角 297° ビートエラー0.0ms +002 sec/day

左下) 3時下  振り角 267° ビートエラー0.4ms +006 sec/day

右下)12時下  振り角 269° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

主要4姿勢でΔ4秒程度で、振りもしっかり300°近辺でています。波形にも乱れやバラツキはみられず一本調子で真っすぐのびており、安定している様子がみてとれます。2892A2のごく標準的な特性で問題ありません。

 

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文字盤と剣付けの様子です。針は秒針/分針/時針の間隔が等しく、どの時刻で重なり合っても同じ間隔を保つよう、針が水平に回っていることなどもチェックします。黒の文字盤は毛ゴミや汚れが目立ちますので、付着がないか良く確認します。

 

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ケース本体にケーシングしました。自動巻きブロックも装着して、あとは裏蓋を閉じるだけです。2892A2はそれほど小型のムーブメントでもありませんが、ムーブが小さく見えるほどケースは大きく頑丈な作りです。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 319° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

右上)文字盤下 振り角 311° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

左下1) 3時下 振り角 291° ビートエラー0.1ms +007 sec/day

左下2)12時下 振り角 296° ビートエラー0.2ms +005 sec/day

右下3) 3時上 振り角 277° ビートエラー0.2ms -001 sec/day

右下4)12時上 振り角 280° ビートエラー0.0ms +000 sec/day

全姿勢差はΔ8秒 で最大振り角約320°最小約280°と、全く問題のない特性に回復いたしました。2892A2も良い特性の出やすい優れた機械のひとつだと思います。

 

Cartier-15

完成

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