Hamilton 922

Hamilton|Handwind watch 922

栃木県M.S.様ご依頼品

ハミルトンの懐中時計の修理ご依頼です。製造から約100年経過しているため、どこかに不具合などがあっても普通は交換用パーツなどが手に入りません。リュウズを巻いて動作することが修理受付の前提になります。懐中時計も動くものは多くの場合オーバーホール可能ですが、当工房ではあまり懐中時計の修理経験はありませんので、万全の結果は得られないかもしれません。腕時計の修理のようにはスムーズに行かないこともあります。それでも良いという方に限り受付しております。


ハミルトン懐中時計922

分解前の測定から。一応動きはするものの、ご覧の通り一見して明らかにメチャクチャな特性であり、これではまともに時を刻まないだろうことは明白です。バランス(テンプ)のタテアガキが異常に大きく、ピンセットで軽く前後に動かすと、受けに片足が収まっておらずグラグラします。これは、ホゾが折れているのでは?と思われたほどです。

 

バランス単体を分解してホゾの両端を計測します。5.238 mm

 

こちらは交換用の新しい天真です。5.328 mm ですので、0.09 mm ほど長さが短くなっていることがわかります。天真は 1/100 mm でもすり減ったら、製造時と同じ性能は出ません。それが 9/100 mm も減っているということは、余程の長期に渡ってろくにメンテナンスもせずに無理に使い続けた証拠です。こういうものをただ興味本位でご入手されて当工房に直せと言われましても、おいそれとは受付できません。今回はたまたまパーツが取り寄せ可能なものですので、バランスの天真とヘアスプリングの交換を実施します。

交換用の天真が新品のくせに妙な長さに感じられるのは、おそらくアメリカの規格がインチであるためです。ヨーロッパはメートル法を採用している国がほとんどですが、製造された国や地域によってはこういう違いもあります。ネジなどもインチ規格のものにメートルネジを入れると、痛んだり壊れてしまいます。

 

ヘアスプリングをテンプから取り外したところ。どんどん分解していきます。

 

古い天真を取り除いて、新しい天真をいれます。

 

天真を指して、タガネでかしめているところ。

 

天真のホゾが恐ろしく細く感じられます。ホゾの径は0.1mmほどしかありません。ちょっと何かにぶつけたりしたら、簡単に折れてしまいます。慎重な取り扱いが要求されます。

 

こちらは香箱のゼンマイを交換しているところ。古い懐中時計は鋼鉄製のゼンマイが入っていることが多く、バネ性が経年と共に劣化します。現代の腕時計にも使用されているものと同じステンレス合金製のものに入れ替えます。

 

全てのパーツの分解と洗浄をしたところ。ひとつひとつのパーツが大きいです。

 

外装ケースはメッキ品であるため、研磨はできません。今回洗浄のみの予定でしたが、リュウズ部分の一部パーツが分解できなかったため、このままとします。無理に分解しようとすると内部がサビていたりしてパキーンと割れてしまい、どうにもならなくなるという地獄のような展開が待っていたりします。だいたい天真があのザマですから、外装ケースだけが定期メンテナンスを受けているはずもありません。100年使い込んだと考えるのが妥当です。そういうものを製造時と状態が同じと思い込んではいけません。(過去に相当痛い目にあっており、こういうものは慎重安全第一さわらぬ神に祟りなし)なんでもかんでも予定通りいきません。古いものはこういうこともあります。どうかご了承ください。

 

ムーブメント本体を組み立てていきます。機械台も懐中時計用の特大クラスのものです。見た目のがっしりとした質感通り、非常にビッグでタフな作りです。いかにもアメリカ人好みなところが、時計作りにもよく現れております。

 

ムーブメントの完成。新しい天真になったバランスはビュンビュンと元気に動いております。

 

ムーブメントの測定。分解前とは別物によみがえりました。若干タテ4姿勢よりヒラ2姿勢が進みますが、この年代の懐中時計としては優秀な結果と思います。ハミルトンのこのタイプの懐中時計はアメリカでは鉄道時計として採用された実績があり、信頼性の高い機械です。

 

文字盤と剣つけ。懐中時計の文字盤はポーセリン(陶磁器)がお約束のように各ブランドで使われました。目立つようなクラックなどもなく良好です。針は若干サビが見られますが、非防水のためこれもある程度は仕方ないものです。現状のままとします。

 

最終特性

左上)文字盤上 振り角 255° ビートエラー0.1ms +023 sec/day

右上)文字盤下 振り角 255° ビートエラー0.1ms +023 sec/day

左下1) 3時下 振り角 197° ビートエラー0.0ms +016 sec/day

左下2)12時下 振り角 194° ビートエラー0.1ms +002 sec/day

右下3) 3時上 振り角 198° ビートエラー0.1ms +009 sec/day

右下4)12時上 振り角 192° ビートエラー0.0ms +025 sec/day

 

【hamilton 992】
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□オーバーホール料金 手巻き懐中時計 ¥ 15,000
 (精度出来上がり現状渡し)
□追加パーツ費用
 ・天真         ¥ 5,000
 ・ヘアースプリング   ¥ 15,000
 ・ゼンマイ       ¥ 5,000
□その他
 ・特別料金 天真交換   ¥ 10,000
 ・特別料金 サビ取り&パーツ補修 ¥ 10,000
 ・研磨サービス 洗浄のみ ¥ 無料
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合計金額          ¥ 60,000

 

 

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