今日の時計『オメガ シーマスター・コズミック』

Omega|Seamaster cosmic
Omega|Seamaster cosmic

東京都M.M.様ご依頼品

オークションで入手した cal.565 搭載の70年代オメガシーマスーター・コズミックのオーバーホールとフルポリッシュのご依頼です。今後はアンティーク品やヴィンテージの古い時計は特別料金がかかります。その線引きというか、具体的にどの辺が適用の分かれ道となるのかなども解説していますので、同様の時計の依頼をご検討中の方は是非ご参照ください。


オメガ シーマスター・コズミック

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オメガ/シーマスターのオーバーホールとフルポリッシュのご依頼です。オークションで手に入れたそうですが、ご覧の通り風防にもケースにもキズ多数の状態です。バネ棒などは腐食がひどくて固着しており、破壊して取り外しました。

 

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分解前の歩度測定です。+70〜120秒までとバラツキがあります。それにしても随分と極端な進みです。こういうものはテンプなど内部パーツに問題があることがほとんどで、オーバーホールの実施のみでは改善が難しいことが多いです。

 

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リュウズを取り外したところ。ケースのパイプとの間にあるガスケット(ゴムパッキン)が、経年の劣化によりヘドロ状となって溶け、まわりにこびりついています。当然ながらこれでは防水性は期待できません。こびりついたドロドロを全て落として内部ガスケットを交換するのはかなり大変です。

リュウズ単体そのものは分解を前提には作られていません。時計学校にもリュウズを分解して再整備するプログラムはありません。みな職人各自が独自に編み出した方法やノウハウで行っているのが実情です。ですから、出来ない人は歴何十年のベテランでもできません。職人の世界では技は盗むものです。いちいち手取り足取り教えてもらえません。そのためパーツが手に入る場合は新品に交換するほうが確実です。交換せず再利用する場合は修正のため特別料金となります。それは当工房の技術を見込んでご依頼いただくものです。他店とよく比較検討された上、慎重にご判断ください。

 

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今回リュウズとパイプはオメガ純正品(パッケージ入り新品)に交換することにしました。風防も当初は交換予定でしたが、今後この時計の型番に合うものは入荷しないことが後になって判明し、取り消しとなってしまいました。とうとう恐れていたことが起こりはじめました。今後はオメガ(およびスウォッチグループ)の新品純正パーツは次第に入手が困難になることが必至です。純正品でのパーツ交換サービスご検討中の方はお急ぎください。

※スウォッチグループは2015年末をもってサードパーティ向けのムーブメントおよびパーツ供給を停止しました。そのため、グループに属するサービスセンターなど一部をのぞいて、新たにパーツを取寄せできません。在庫のみで終了になります。

 

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パイプを交換したところ。ケースも研磨済みです。

 

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こちらは研磨前のケース内部の様子。防水が効かず、湿気が内部に入り込んだ状態で長期間放置するとサビや緑青などが生じます。これはまだ軽いほうです。サビ取りおよびパーツ修正の特別料金10,000円の適用は、ケースだけならセーフで見送りというところ。リュウズはアウトですが、今回は新品に交換するため修正料金の適用は見送りとなります。ほかにもムーブメントのパーツの劣化状況など加味して、トータルで通常のオーバーホール作業の倍以上の時間がかかるものには適用とさせていただきます。

 

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こちらはケースの洗浄と研磨後です。ほとんど汚れは取り除くことができました。

 

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研磨後のケースです。オリジナルはサイドカットの部分が『旭光仕上げ』(放射状に中心から直線が外へ向かってのびる)ですが、これはメーカーでは専用のマシンを使って機械的に模様を入れています。当工房には旭光仕上げのできる設備はございませんので、擬似的にサテン仕上げを放射状に施しています。そのためオリジナルとは風合いが異なります。

 

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代わってこちらは、内部パーツの分解と洗浄をしたところ。

 

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幸い内部パーツは比較的サビや摩耗したパーツが少なく、継続利用可能でした。

 

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巻き上げ機構から組んでいきます。ジョイント式の巻芯なのでリュウズはケース装着時に合体させます。ムーブメントの地板周囲が変色しているのが分かります。おそらく過去に水や湿気が入ったまま放置したものと思います。

 

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辺縁と比べて中心部分のパーツは痛みが少なく、過去にオーバーホールしたような形跡もほとんど見られません。買って動かなくなるまで使ってからポイの典型パターンです。

 

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こちらは輪列を組んでいる様子です。歯車のホゾには摩耗など劣化がみられます。腐食が地板周囲までで止まり、内部まで進行しなかったのが本当に幸いです。内部パーツも錆びていたら、おそらく修理不可だったと思います。それもこれもヘドロ状のリュウズのせいです。内部に水が入ることは時計にとって致命傷です。リュウズあなどるべからず。虎の子を投じてでも新しいリュウズへの交換をオススメしている理由です。

 

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ベースムーブメントの組み上がったところ。こうして上からみると、全体的にはまだキレイな状態が保たれています。

 

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ローターブロック(自動巻き機構)も取り付けました。ローターは一部が変色していましたが、根性で甦らせました。

 

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ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 226° ビートエラー0.0ms +031 sec/day

右上)文字盤下 振り角 225° ビートエラー0.0ms +031 sec/day

左下) 3時下  振り角 193° ビートエラー0.3ms +035 sec/day

右下)12時下  振り角 190° ビートエラー0.1ms +021 sec/day

組んでざっと調整した状態でまだ少し進み気味ですが、当初と比べると雲泥の差です。さらに微調整で追い込めば日差20秒以内に入る性能と思います。むしろ以前の持ち主によるこれまでの取り扱いがひどすぎました。その割に健闘している結果と言って良いでしょう。オークションに出回るものには、今回の時計のような状態のものも多いということを覚悟の上で臨んでください。

 

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ケース研磨前。カンの付近におおきな傷多数です。この傷の程度はついた場所によってはフルポリッシュでも取りきれないほどの深い傷です。今回はたまたま場所が狭い部分に集中しており、ケース形状もごまかしが利く形状だったため、思い切って削り落としました。

 

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ケース研磨後。傷は跡形もなく消えました。旭光“風”のサテン仕上げとなっているところはご愛嬌です。旭光仕上げはウチではできません。念のためもう一度言っておきます。過去にも何度も言ってますが、依頼が後を絶ちません、、、なぜなんだろう。

 

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こちらはケース裏側です。カンとカンの間のナナメのところを中心に深い傷多数でしたが、こちらも全部削りました。おかげでオメガマークも消えました。傷消すのかマーク残すのかどちらかです。マーク残して傷だけ消すとか、そういう都合の良いことはできません。研磨というのは表面を削り落とすことです。

 

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研磨前と後。

 

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風防のキズは目立つ割に浅かったことが幸いし、パーツ交換できなくて申し訳なかったこともあり、奮発して技を駆使して研磨させていただきました。

 

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ムーブメントの分解前と仕上がり後。ムーブメントのフチの緑青や、ローターの変色のところにご注目ください。ベンジンで洗浄しただけではこうはキレイに戻りません。特殊な薬品や加工処理をしますが、手間のかかる作業です。

 

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完成

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