今日の時計『オメガ・スピードマスター』

Omega|Speedmaster cal.1866
Omega|Speedmaster
cal.1866

東京都M.T.様ご依頼品

オメガのスピードマスターが少し遅れてくるようになったとのことで、オーバーホールとライトポリッシングのご依頼をいただきました。ムーブメントの cal.1866 はハイグレードな仕上げがされていますが、テンプの調整が理想的とは言い難い状態だったため、修正を行ないました。結果はどうなったのでしょうか。作業の様子は下記のリンクからご覧いただけますので、のぞいてみましょう。


 オーバーホール事例;Omega “Speedmaster” (東京都M.T.様ご依頼品)speedmaster0

オメガのスピードマスターで、ムーンフェイズとカレンダーを付加した cal.1866 搭載モデルのオーバーホールのご依頼です。ムーブメントはベーシックなタイプのcal.861 系と同じで、毎時21,600振動の手巻きロービートモデルです。

 

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分解前の歩度測定です。平姿勢では約10秒進みですが、縦姿勢では約10秒の遅れとなっており、少しお行儀が良くありません。腕から外せば進むけど、身につけていると遅れるという典型例です。その差Δ20秒が偶然に実生活で相殺されて、実測上は日差数秒のトントン調子に落ち着く場合もありますが、それはまれな例です。この機会に本来の姿に更正させましょう。

 

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ムーブメントを分解していった直後(写真上)と、ベンジンカップでパーツを洗浄して、並べ直した様子です。(写真下)

 

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最初にテンプのみを地板に取り付けて、ひぜげんまいの調整を行ないます。最終的な歩度の特性の80%はテンプの良し悪しで決まる、といっても過言ではないほどです。あらゆる角度からひげぜんまいをチェックします。いくつかの問題が見られましたが、全て修正できました。組み立てに先立ち香箱にも注油しておきます。

 

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ベースムーブメントの組み立てです。まず裏回りの巻き上げ機構から組みます。(写真左上)続いて表輪列へと進み、(写真右上)輪列受けまで組みました。(写真左下)ガンギ車と受けを組んだら、アンクルよりも先に出車をつけてしまいます。ザラ回しを行い、出車も含めて各歯車が水平に振れがなくスムーズに回ることを確認します。(写真右下)

 

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輪列に問題がなく、アンクルとアンクル受けを組みます。(写真左)アンクルとガンギ車の歯の噛み合い量をチェックし、問題がなければ注油を施します。(写真右)ガンギやアンクルは表面がよく磨かれてグレードの高いパーツのようです。受けなども面取りがされて磨かれています。

 

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テンプを組んで、ベースムーブメントの完成です。受けにはコート・ド・ジュネーヴ(さざ波)模様が施され、見栄え良く仕上げがされています。

 

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ベースムーブメントのみの状態での歩度測定です。

左上)文字盤上 振り角 299° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

右上)文字盤下 振り角 293° ビートエラー0.0ms +006 sec/day

左下)  3時下  振り角 273° ビートエラー0.2ms +005 sec/day

右下) 12時下   振り角 255° ビートエラー0.0ms +012 sec/day

分解前にΔ20秒あった姿勢差はΔ7秒まで改善されました。テンプ修正の効果が出ています。

 

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クロノグラフ機構を組み立てします。まずプッシャーと接続するオペレーティング・レバー回りから取り付けします。(写真上)クロノグラフ・ランナーや受けに至るまでの各パーツを組み上げて行きます。(写真下)

 

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表輪列のクロノグラフ機構まで完成しました。個々のパーツが丁寧に仕上げられており、とても美しい個体だと思います。

 

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引き続き、裏回りのクロノグラフ機構と、カレンダーおよびムーンフェイズ機構の組み立てです。カレンダーモジュールを組んだところ。(写真上)クロノグラフ機構が出来上がり、(写真左下)ムームフェイズとカレンダー機構まで付けてムーブメントが完成しました。(写真右下)

 

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文字盤を取り付けしたところ。(写真左上)剣付けを行い、針の高さや間隔などが適正かどうかチェックします。(写真右上)とくに、クロノグラフ秒針を帰零させた時、0時00分の真上に戻るように、作業を注意深く行ないます。(写真下)

 

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最後にケーシングの様子です。耐磁性を持たせるためのシールドが内蓋になります。美しいムーブメントの見納めで名残惜しい気持ちです。(写真右上)裏蓋には修理履歴が書かれていることがありますが、今回は何もありませんでした。ちなみにアトリエ・ドゥでは番号で過去の修理履歴を管理しており、本体内部に書き込みや彫り込みは一切行ないません。

 

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最終特性を測定します。最初にクロノグラフOFFの状態です。

左上)文字盤上 振り角 316° ビートエラー0.0ms +006 sec/day

右上)文字盤下 振り角 309° ビートエラー0.1ms +008 sec/day

左下1)3時下 振り角 276° ビートエラー0.2ms +003 sec/day

左下2)12時下 振り角 287° ビートエラー0.0ms +008 sec/day

右下3)3時上 振り角 284° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

右下4)12時上 振り角 266° ビートエラー0.3ms +007 sec/day

 

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続いて、クロノグラフONの状態です。

左上)文字盤上 振り角 295° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

右上)文字盤下 振り角 292° ビートエラー0.1ms +009 sec/day

左下1)3時下 振り角 252° ビートエラー0.2ms +010 sec/day

左下2)12時下 振り角 276° ビートエラー0.0ms +011 sec/day

右下3)3時上 振り角 243° ビートエラー0.0ms +010 sec/day

右下4)12時上 振り角 246° ビートエラー0.3ms +013 sec/day

全姿勢差Δ10秒(最高+013 最小+003)ON/OFF差(最大7秒最小1秒)最大ビートエラー0.3ms(推奨値 ≦ 0.3ms)最大振り角316°最小振り角243° ON/OFF差約20°〜30°

cal.1866の真の姿です。気持ち進み気味に調整してありますが、1年の保証期間を過ぎてなお3年〜5年先のことを考えると、遅れるか遅れないかのギリギリに合わせることはあまり得策とは言えません。メーカー製造直後の状態とは異なりますので、数年先まで実用可能な精度を保つために、少し余裕を持たせています。

 

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完成

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