今日の時計『ロレックス・デイトジャスト』

ROLEX|Date Just Ref.16200
ROLEX|Date Just
Ref.16200

大阪府T.M.様ご依頼品

若かりしあの頃に買ったロレックス。気がつけば四半世紀、、、。そんな方も多いのではないでしょうか。今回の時計は長年に渡ってご愛用されてきたものが、とうとう動かなくなったというご依頼です。純正パーツ(角穴車とリュウズ)を交換した事例で、当工房としては珍しく高額修理となりました。最近ロレックス続きでもう飽きたと言わず、ぜひご覧ください。


オーバーホール事例;ロレックス  “デイトジャスト”(大阪府T.M.様ご依頼品)RLX3135

長年ご愛用のデイトジャストの修理ご依頼です。cal.3135 が出たばかりのX番(1991年製)です。症状は動いたり止まったりして、何かが外れている音がするということ。さっそく裏蓋を開けてみます。

 

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何かが外れている音の正体は、なんと自動巻きブロックが外れておりました。そのため、角穴車の駆動車が正しく噛み合っておらず、手で巻き上げたときに異常な負荷がかかり、角穴車の歯が折れていました。また、リュウズも経年劣化でロック不良となる一歩手前の状態のため、合わせて交換することに。

 

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ロレックスは自社の系列関係にない外部に対して、パーツの販売を一切行なっておりません。角穴車の交換パーツは、ebay などの海外オークション経由で主にアメリカなどの海外から入手しますので、時価となります。今回は実費12,000円にて取り寄せしました。非正規ルートではありますが、不法行為ではありません。

 

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こちらのリュウズも同様に時価で取り寄せしました。お値段はなんと¥40,000(!)オーバーホール料金の倍以上です。これも時価となりますので、時期によって変動します。王冠マーク無しの汎用品なら数千円ですが、ご依頼主様のご希望により、純正品での修理となりました。

 

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リュウズ交換後の様子です。古いタイプのリュウズは内側のネジ部分が真鍮製のため、削られやすく緑青も出やすい欠点があります。自動巻き時計は、なるべく手で巻き上げないほうが良いため、時刻と日付合わせ以外では、リュウズのロックを外さずにご使用していただくのが長持ちさせるコツです。手で巻かなければすぐ止まるようなら、それはオーバーホールの時期だとお考えください。

 

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分解前の測定です。おおむね各姿勢とも+10秒前後で、振りも平姿勢で270°も出ており、普通の機械式時計として見ればこのまま使えるように錯覚しがちな特性です。しかし、内部の注油具合などがホゾは乾ききっているのに、一部は辺り一面に油がはみ出すほど不自然な点がみられ、実態はとても安心して使い続けられる状態ではないため、オーバーホールを行います。測定結果だけでは判断できません。

 

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パーツ分解直後(上)と、洗浄後(下)の様子です。内部の交換部品が角穴車だけで済んだのは、むしろ幸運だった方です。10年以上オーバーホールをせずに使い続けると、油が乾ききってしまい、歯車のホゾなどは摩耗して痛むと継続使用が不可になります。輪列の歯車が全滅に近く、パーツ代金だけで10万円を超えることもあります。

 

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香箱の洗浄前(左)と洗浄&注油後(右)です。洗浄前の様子は一見するとそんなに汚れていないように見えますが、すでに油が乾ききってパリパリの乾燥フレーク状になっているため、粘性を失っているからです。ゼンマイが切れていなかったのが不思議な位でした。

 

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テンプの分解前(左)と洗浄&注油後(右)です。分解前は耐震装置に一滴も油が残っていませんでした。加えてひげぜんまいの中心にもズレが見られたため、修正してあります。テンプ一式を交換すれば、ロレックスの場合だと5万円以上します。つくづく運が良かったとしか言いようがありません。その位、油が切れた状態で動作させることは危険です。
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こちらはケースの分解直後(上)と洗浄後(下)です。経年のご使用によるサビが見られますね。ステンレスは錆びないわけではありません。「錆びにくい」というだけで、ロレックスの誇る904L 特殊ステンレス鋼でさえ、やっぱり錆びるのです。キレイに落として洗浄します。

 

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風防のパッキンはボロボロで、割れてしまっていて継続利用できませんでした。本来はこのパッキンは有料交換ですが、見積もり時に見抜けなかったので今回は当工房の負担によりサービスで交換することに。一見ただの輪に見えますが、実は内側に精密なスリット加工があり、ロレックス専用のパーツです。

 

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ケースやブレスレットの研磨を行って、洗浄を終えた組み立て前の様子です。ブレスレットはかなり伸びがみられる状態でしたが、なんとか磨ける部分だけをフルポリッシュにして、肉が薄くなった部分はライトポリッシュという具合に、技を使い分けながら仕上げました。

 

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ケースの防水検査をしているところです。年式からすると(91年製)もはや現行品とは言い難く、非防水扱いといってもいいのですが、cal.3135 が搭載されているモデルには、まだ製造後数年のものも多いため、ハッキリ線引きしにくいのです。今回はリュウズを新調したこともあり、5気圧で入念にテストします。気泡の漏れは見られず合格です。

 

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こちらは本体組み立て途中の様子です。地板は一部が油まみれだったため、プレ洗浄を行なってから本洗浄を行ないました。輪列受けの穴石にご注目ください。光を反射させても、一点の曇りもありません。穴石はこうでなくてはいけません。油ははみ出さないようにホゾに注油します。少しでもはみ出したら「洗浄し直せ」と親方に叱られます。そんな世界です。

 

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ベース本体が組み上がったところ(上)カレンダー機構を組み立て途中(下)

 

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カレンダー機構が組み上がったところ(上)文字盤と剣付けまで完了(下)

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ケーシングして、いよいよ最終調整です。テンプのマイクロステラナットを専用工具で調整します。cal.3135 は緩急針を持たないオーバーコイルの通称『ブレゲ式』のため、歩度の調整はテンワのナットを外側に出したり、内側に寄せたりして、慣性モーメントを変化させることで行ないます。余程にひげぜんまいやバランスの加工精度が良くないと、たちまちおかしな特性になる難易度の高いものです。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 277° ビートエラー0.1ms +003 sec/day

右上)文字盤下 振り角 268° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

左下1)  3時下 振り角 259° ビートエラー0.3ms +000 sec/day

左下2)12時下 振り角 254° ビートエラー0.2ms +002 sec/day

右下3) 3時上 振り角 257° ビートエラー0.1ms +004 sec/day

右下4)12時上 振り角 255° ビートエラー0.0ms +001 sec/day

いつもの「ロレックス」です。

 

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研磨前(左)研磨後(右)

 

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完成

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