今日の時計『ロレックス・オイスター・プレシジョン』

ROLEX|Oyster Precision
ROLEX|Oyster Precision

大阪府T.O.様ご依頼品

ロレックスのオイスター・プレシジョンのオーバーホールとライトポリッシュのご依頼をいただきました。他所の修理の悪口はあまり言いたくないものの、「どうして?」を突き詰めると、触れないで説明するのが面倒すぎるため、ありのまま事実を正しくお伝えするために書く事もあります。決してウチの腕自慢をしたくて言うのでもなければ、他人をこき下ろしたくて言うのでもありません。ただただ持ち主の方に真実を知っていただきたく、正しい修理に努める時計師がひとりでも多く増えたらいいと願っています。私一人に生涯かけても直せる時計の数など、たかが知れているのですから。


オーバーホール事例:ロレックス・プレシジョン(大阪府T.O.様ご依頼品)

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最初に分解前の測定から。平姿勢に対して縦姿勢が20秒以上も遅れています。姿勢差は−30秒〜+4秒までΔ34秒もあり、まったく良くありません。振り角も平姿勢で200°ちょっとで元気がありません。さて、オーバーホールでどこまで回復できるでしょうか。

 

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ムーブメントを分解して、全てのパーツの洗浄が完了したところです。パーツには大きな摩耗などの痛みがなく、交換すべきものは見当たりませんでした。

 

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香箱も洗浄して油を注油しなおします。左は洗浄前で少し汚れが目立ちます。右は注油し直した所です。

 

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これはテンプのバランス本体を振れ見にセットして、ひげぜんまいの水平出しの調整の様子です。左は修正前で、ひげぜんまいがテンワに対してフラットではなく、傾いているのがわかります。右は修正後です。テンワとひげぜんまいが真っすぐ平行になりました。これが正しい状態です。時計のご使用に伴ってこの部分が曲がってくることはあまりなく、主に分解時の取り扱い方が悪いことで起こります。つまり今回以前の修理によってすでに『壊されていた』という、何度もこのブログで指摘している腕の劣った職人の仕業というわけです。たったこれだけ曲がっただけで、日差10秒以内などは夢のまた夢になります。ひげぜんまいは繊細であり、テンプこそ精度の命です。

 

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こちらはひげぜんまいの内端の中心出し(振れ取り)の調整をしている様子です。写真は静止画なので、実際にどうやって振れ見をしているのかビデオをつけました。カメラが民生用ですので、ビデオでも少し分かりにくいです。実際の動きを目の当たりにすると、正しく調整済みのひげぜんまいの動きは、まるで渦巻きに吸い込まれるように滑らかな動きをします。0.01mm中心がズレただけで、酔っぱらい眼のようにグラグラするので、スーっと吸い込まれるようになるまで追い込みます。(超高速度撮影というのでしょうか。ハチドリの羽の動きが分かるくらいのやつで撮れたらいいのですが、、)

ひげぜんまい内端中心調整の動画をみる(約5MB)

 

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ムーブメント本体の組み立てです。今回は輪列から組みます。

 

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続いて、裏回りの巻き上げ機構を組みます。

 

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再び輪列に戻って、3番車の出車と秒カナ、アンクル/テンプまで組んだところでベースムーブメントは完成です。

 

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ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 270° ビートエラー0.1ms +010 sec/day

右上)文字盤下 振り角 264° ビートエラー0.0ms +008 sec/day

左下) 3時下  振り角 244° ビートエラー0.2ms +009 sec/day

右下)12時下  振り角 270° ビートエラー0.0ms +001 sec/day

姿勢差(Δ)はΔ34秒からΔ9秒へと1/3以下へ回復しました。ひげぜんまいの調整が効いています。今回に限らず、劇的に改善しているオーバーホール事例ではほとんど全てひげぜんまいの調整をしています。(ブログ上では紹介していないだけです)もちろん、ブログに載せようが載せまいが、気に食わないテンプは全て直しています。ひんまがったテンプでメシ食いたくありません。つくづく私にとって時計修理は天職だと思います、、。笑

 

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少し熱が入りました。剣付けでもして落ち着きましょう。

 

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カレンダーがないので、スッキリしてます。(楽チン)

 

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あっという間にケーシングです。サビもなく綺麗なケースでした。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 293° ビートエラー0.0ms +011 sec/day

右上)文字盤下 振り角 289° ビートエラー0.0ms +010 sec/day

左下1) 3時下 振り角 256° ビートエラー0.3ms +020 sec/day

左下2)12時下 振り角 260° ビートエラー0.1ms +006 sec/day

右下3) 3時上 振り角 268° ビートエラー0.1ms -002 sec/day

右下4)12時上 振り角 266° ビートエラー0.0ms +011 sec/day

全姿勢差では3時上の−2秒が足を引っ張ってしまいΔ22秒となってしまいましたが、3時上は実生活で影響するのはつり革に捕まっているとき位ですから、一番どうでもよい姿勢です。なんといっても3時下(直立・歩行時)12時下(机の上で作業しているなど)が重要です。そして腕から外した時の文字盤上です。まずまず使いやすい状態になっていると思います。

 

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完成

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