今日の時計『ロレックス・プレシジョン』

ROLEX|Precision Cal.1400
ROLEX|Precision
Cal.1400

東京都S.O.様ご依頼品

ロレックスのプレシジョンのオーバーホールとフルポリッシュのご依頼です。レディースの時計は小さめのサイズのものが多いですが、これはそのなかでも小さくて豆粒のようなサイズです。オーバーホールにしても研磨にしても、小さいものほど難しくなります。ちょっとのミスが命取りになります。


オーバーホール事例:ロレックス・プレシジョン(東京都S.O.様ご依頼品)

rolex1400-1

ロレックスのCal.1400搭載の手巻き“プレシジョン”のオーバーホールとフルポリッシュのご依頼です。久しぶりの18K金無垢ケースで、しかも極小サイズのため、調子の良い日を選んで作業しました。最も難易度の高い組み合わせです。

 

rolex1400-2

分解前の測定です。平姿勢で50〜70秒(裏平差Δ20秒)の進み。縦は−14秒〜36秒までと少し開いております。ビートエラーもまちまちの状態で、波形も少しうねりが気になります。オーバーホールで直るかどうか判断の難しい所です。見積もりはお茶を濁したような回答になり気味です。

 

rolex1400-3

みなさま。ご自身の中指の爪をご覧下さい。これから分解しようとする時計の大きさは、そんなもんです。はっきりいって、気が狂います。

 

rolex1400-4

テンプの耐震装置には油が一滴も残っておりません。中古品に多いパターンです。この状態で無理に使い続けると、摩耗によりパーツは継続利用が不可になります。

 

rolex1400-5

分解して洗浄したパーツを並べたところです。拡大してますのでいつものような感じに見えますが、この面積はマッチ箱位です。

 

rolex1400-6

幸いパーツには摩耗やサビなどがほとんど見られず、状態は良好です。それにしても、このアンクルとガンギ車はどうでしょう。極小サイズにもかかわらず、細部まで丁寧に完璧に仕上げがされています。これは70年代頃の製品ですが、すばらしい仕事が見てとれます。内外他社のパーツと比較したら、他が可哀想になる位に圧倒的な差があります。

 

rolex1400-7

香箱のゼンマイも洗浄して注油しました。ゼンマイにツブツブがたくさんついているように見えますが、実際には何もついていません。かなり小さくゼンマイも薄いため、端がわずかに変形して光を不均一に乱反射しているためです。

 

rolex1400-8

組み立て前に、テンプの調整から行います。フラットが出ていなかったため、そこだけ修正しました。これも拡大してますのでいつものように作業しているように見えますが、実際には少しだけ触るのも怖いくらいの手がすくむような小ささです。中指の爪を思い出してください。

 

rolex1400-9

ベースムーブメントの組み立てです。いつもはススーっと進むところも、今回はひーひー言いながら組み立てます。ネジ1本締めるのにさえ手に汗握るような慎重さで行います。サイズがサイズだけに、力加減ひとつ間違うと簡単に壊れます。

 

rolex1400-10

アンクルのツメ石に注油して、ガンギの歯と噛み合わせたところ。歯と石のスキマに程よい量の油がのっています。これより多すぎても少なすぎてもダメです。はみ出すのは論外です。口で言うのは実にカンタン。うんうん。

 

rolex1400-11

ベースムーブメントが完成しました。極小世界の芸術品です。

 

rolex1400-12

ベースムーブメントの測定です。

左上)文字盤上 振り角 281° ビートエラー0.2ms +018 sec/day

右上)文字盤下 振り角 280° ビートエラー0.0ms +009 sec/day

左下) 3時下  振り角 220° ビートエラー0.3ms +025 sec/day

右下)12時下  振り角 218° ビートエラー0.3ms +026 sec/day

裏平差がΔ10秒を超えるようだと、よい調整とは言えません。平姿勢の裏平差は辛くもΔ10秒以下に収まり、調整前よりは改善したので良しとします。縦姿勢が平姿勢よりも進みになっており、こちらも順調です。本機は緩急針がないフリースプラングのひげぜんまいですから、もしも縦姿勢が平姿勢に対して遅れのままだと厄介なことになります。ひとまずホッとしました。

 

rolex1400-13

文字盤と剣付けに進みます。ご依頼主様は文字盤の汚れも取り除きたいご意向でしたが、あいにく当工房では文字盤のリダンは行っておらず表面の清掃程度としております。ケースが非防水構造のため経年劣化には勝てず、文字盤の母材が酸化するなどして表面に緑青様となって浮き出てきます。ブツブツのタイプや変色タイプなどあり、進行すると表面剥落を起こします。非防水の宿命です。

 

rolex1400-14

ケースの研磨前(上)と研磨後(下)

 

rolex1400-15

同じく研磨前(左)と研磨後(右)

 

rolex1400-16

ケーシングしたところ。18K金無垢のケースは、研磨機などで磨こうとすると、あっという間に削れてなくなってしまいます。そのため、部分的には手仕上げを併用して、最終仕上げ用に軽くバフ機にあてるだけです。こういった極小サイズのものを拡大しても不自然でない雰囲気に仕上げることは至難の業です。

 

rolex1400-17

最終特性

左上)文字盤上 振り角 263° ビートエラー0.1ms +021 sec/day

右上)文字盤下 振り角 247° ビートエラー0.2ms +017 sec/day

左下1) 3時下 振り角 191° ビートエラー0.3ms -001 sec/day

左下2)12時下 振り角 206° ビートエラー0.3ms +020 sec/day

右下3) 3時上 振り角 194° ビートエラー0.0ms +017 sec/day

右下4)12時上 振り角 199° ビートエラー0.3ms +009 sec/day

全姿勢差が約Δ20秒以内になんとか入りました。極小サイズですが、通常サイズに劣らない実用性があります。4倍以上の大きさの機械なのに、これより性能の良くないものはざらです。すごいことです。

 

rolex1400-18

完成

トップへ戻る