今日の時計『ロレックス・エアキング』

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『ブログに載せて500円引き』キャンペーンの栄えある(?)第一号は、

静岡県にお住まいのM.O.様でした〜!

この時計のオーバーホールのハイライトは、以下のページにて詳細を公開しております。ぜひご覧ください。


オーバーホール事例;Rolex “Air King” (静岡県M.O.様ご依頼品)

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今回のお品は、ロレックスのエアキングです。Cal.3000を搭載した毎時28,800振動のハイビート・ムーブメントになります。なお、ご依頼のサービス内容は、オーバーホール&ライト・ポリッシングです。

 

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さっそく裏蓋を開けてみます。一瞬、何かの間違いではないか?と思うほど、綺麗な状態でした。ネジにも潰れや舐め跡がどこにもなく、一度もオーバーホールされていない新品のような状態でした。過去に変な所で手入れされて、内部があちこちキズだらけだったりするのは、この世界では日常茶飯事です。このように綺麗な状態だと、背筋が伸びます。(おかしな事したら確実にバレてしまうので。苦笑)

 

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分解前の測定です。全体的に−5〜−10秒程遅れているものの、波形に乱れが無く素性の良さが見て取れます。時計師としては実にありがたいことです。きちんとした技術を持っていれば、ロレックスのような高級機ほど楽に作業できます。逆にいいかげんな造りの安物になるほど、まともな精度を叩き出すのに相当な苦労をする羽目になります。技術屋泣かせの事情が時計の裏にはございます。ロレックスを修理できるからといって、それは技術が高いとは限らず。もともとの時計の出来が違うのです。(まあ下手な人がやると駄目にしてしまいますが、、)むしろ、アンティークのボロボロな機械で、この写真の測定器のような波形を出せたら、かなり大したものです。

 

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分解が完了したところ。自動巻きの香箱は、必ずゼンマイを取り出して洗浄します。ロレックスの公認店や日ロレなどでは、オーバーホールごとにゼンマイを新品に交換していますが、同じ理由によるものです。使ううちに香箱内に汚れがたまり、エネルギーが落ちてしまうので、手入れが必要です。時計修理の人によっては「メーカーが推奨する通り香箱は開けず、そのままにしろ」など、したり顔で言い放つ技師がいたりしますが、もってのほかです。なぜなら、そういう人ばかりだと、ゼンマイは油が乾ききって無理な負荷がかかって切れるまで誰も手入れしないため、最後には確実に切れて二番車や三番車のホゾが吹っ飛び、、、想像するだけで恐ろしい結末が待っています。ちゃんと手入れさえすれば、そうそう切れるものではありません。

 

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ゼンマイを巻いて、香箱にセットしなおしています。ワインダーと呼ばれる工具を使い、写真のようにハンドルをくるくると回していったん納め、それを後ろから押し出して元の香箱の中に入れます。アトリエ・ドゥではBergeon製の汎用ワインダーと、ETA専用ワインダー+ロレックス専用ワインダーを使用しております。

 

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左が洗浄前。右が洗浄して巻き直し後に注油したところです。

洗浄前は油がすっかり乾ききって、香箱内にこびりついている様子が見てとれると思います。これでは本来の性能は発揮できません。

 

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パーツの分解と洗浄が完了したところです。ゴミやホコリが混じらないように、厳重にガードしつつ、この辺でひと休憩しています。リフレッシュしたところで、まずテンプだけを先に組んでしまい、ヒゲぜんまいの具合を調整してしまいます。今回は経年の使用によるヨレを、軽く1カ所だけピンセットでつまんだら、あっという間に製造時並みの美しいアルキメデス・スパイラルが蘇りました。下手な人がいじって駄目にする所No.1はテンプです。つくづく思うに、時計を壊すのは持ち主ではなくて、時計師だと思います、、、。あちこちつまみまくられ、ぐちゃぐちゃになったヒゲぜんまいは、如何に技術の達人でも完全に元には戻せません。下手の横好きとは良く言ったもので、駄目な技術者ほど余計な所をいじって壊します。そんな状態の時計を渡され、直せないから大した事ないって言われるのが一番辛いです。。

 

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本体を組み上げていきます。センターと筒カナから組み、裏回り、表輪列と進みます。ロレックスの機械はいつ見ても美しく、感心させられます。今回はとくに状態の良い個体だったこともあり、うっとりと見入ってしまいそうになりつつ、そこはキチンとチェックするところをおさえながら組みました。

 

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AirKing のテンプは緩急針を持たないフリースプラングです。歩度の調整はテンワに取り付けられたロレックス独自のマイクロステラナットで行います。これはその専用工具です。これが無く、代用品でやろうとすると、パーツを痛めてしまいます。でもこれ、、1万円もするんです。時計の工具って摩訶不思議なお値段の連続です、、。(似たようなやつでオメガ専用の工具も持っています。こんな調子でゼロから修理工具集めたら、新車一台くらい余裕で買えます。相当酔狂でないと新規参入できない職業です)

 

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組み上げ後の歩度測定。まだ自動巻きブロックなしで、文字盤上(DU)で振り角 275° ビートエラー0.0ms 歩度は+003秒/日、、ほかの姿勢も軒並み0〜5秒以内に収まっています。ほとんど何もせず洗浄と注油と”ひとツマミ”でこれです。こんな怪物のような時計はロレックス位でしょう。

 

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今回の一番の難所はむしろ自動巻きブロックでした。そのうちの切替車と呼ばれる、回転錐の動力を香箱へと伝える途中にある車(赤い色の二つある歯車です)が、当初うまく回りませんでした。実は、この車は不調をきたす原因の中でもトップにあげられる部品のひとつです。自動巻きの時計は、手でもゼンマイを巻き上げられるように作られてはいますが、それはあくまで初動のためや身につけずに長時間腕から外さねばならない時の補助用になります。自動巻きブロックのある時計を手で巻くと、この切替車の軸は高速回転してしまい、ものすごい負荷となります。そのため、手でゼンマイを巻くような動作を日常的に行っていれば、真っ先にこのパーツが駄目になります。幸い、なんとか交換せずに済む延命処置を施して、スムーズに動くようになりました。(自動巻きのオーバーホール料金が手巻きより高い所以です。手巻きの時計にはこの機構はありません)

ケースのポリッシングを終えて、防水試験機にも通りました。(5気圧)あとは、いよいよ最終組み上げです。

 

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完成。このあとは、オートワインダーという機械でひたすらぐるぐる回してエージング行程に入ります。その間、実測の歩度の記録をとり、大きく進み遅れが出るようなら、再度歩度のみを調整します。ロレックスの場合はここでも特異性を放ち、滅多に再度の手入れは必要ないことが多いのですが、稀に変化する個体もあるため、念には念を入れます。

 

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