今日の時計『セイコー GS 6246-9000』

SEIKO|GS 6246-9000
SEIKO|GS 6246-9000

東京都Y.T.様ご依頼品

実に約3ヶ月ぶりという、久しぶりというか、「え?つぶれたんじゃないの」と言われてしまいそうな、間のあいた投稿となります。つぶれてもいなければ、やめたわけでもございません。単にブログ掲載オプションのご希望が偶然なかったご依頼が続いただけで、お仕事そのものは有り難いことに舞い込み続けております。

去年は出だしの一年ということで、かなり積極的な施策や広告などのマーケティング戦略を打ち、それが奏功しすぎた面があります。頭脳も腕もフル回転でした。今年は自然体というか、通常モードに移ってゆきます。どっしりと腰を据えて、あせらず着実に。

不思議なもので、1件申込みがあると、立て続けに何件も『ブログ掲載オプション』続きとなることがあります。まさかに客がグルだった、、、なんてことは無いと思いますが。(笑)今回含めましてすでに何件かご予約をいただいておりますので、去年ほどのハイペースではないものの、今後は月に1件か2件くらいご紹介できればよいのかなと考えております。忘れた頃にでも当ブログをのぞいてやってください。それでちょうどよいペースになると思います。


セイコー GS / 6246−9000

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セイコーのGS 6246-9000 のオーバーホールのご依頼です。『35年前にオーバーホールを実施し、そのまま保管されていた品物』をご入手されたとのこと。さて、いかがなものでしょうか。

 

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裏蓋にブルーシールが貼ったままです。しかし、よく見ると裏蓋を開閉したときに付いたと思われるキズが複数箇所にあり、シールも所々破れています。こういうものは使う前に剥がしてから着用されることを強く推奨します。つけたままですと、後日固着して剥がせなくなったり、シールの隙間から汚れなどが入り込んで、かえってサビの原因となることがあります。(シールしている意味がありません)

今回はこちらで除去させていただくこととしました。

 

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ブルーシールを除去した完成後の裏蓋のようす。引っ掻きキズは元々つけられており、これはどうしようもありません。前の写真と見比べれば分かると思います。結局、シールの意味は何だったの?と言いたくなってしまいます。

 

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分解前の測定です。ビートエラーが出ていることの他は特段の問題はない模様。

 

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裏蓋をあけたところ。内部にはサビなどは見られず、オーバーホールのみでいけそうです。長らく保管されたままですと、内部にはサビが生じていることがよくあります。程度が軽め〜中程度のものであれば、サビ取り&パーツ補修料の加算により対処可能な場合があります。裸眼でみても明らかに分かるほど全体が真っ赤なものはもうムリです。(一般的に言われるサビのイメージ)ここでいう「サビ」とはごく僅かでも動作に影響するようなものも含みます。時計はほんのちょっとのサビでも、生じた箇所によっては致命傷です。とても繊細なものなのです。

 

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香箱(ゼンマイの入った車)を取り外したところ。内部の油がだだ漏れしてます。上面いっぱいにベットリ汚れがついてしまっています。これはかなり酷いです。前回オーバーホール時にゼンマイに差した油が不適切だったものと思われます。残念ながら時計修理の職人の腕前は驚くほどピンキリです。中にはこのように不適切な油を自分の好みで差し放題にしてしまう人もいるということです。

 

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香箱のゼンマイは取り出して、キレイに洗浄します。

 

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左)洗浄前 右)洗浄後

WOSTEPの『五点差し』を忠実に。このタイプに適正な油を、適正な量を守って、適正な位置に差しております。

(くどいようですみません。しかし、今回ほどこうした基本がいかに大切かアピールする良い機会はありません)

 

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ムーブメントのパーツも全て分解して洗浄します。放置されていた期間が単に長いというだけで、過去にずいぶん使用された様子。パーツのあらゆる部分に摩耗などが見受けられましたが、交換するまでには至らないといった程度でした。ブルーシールの件とあわせますと、外装の状態の割には内部の使用感があるという奇妙な組み合わせ。整合性のある推測は『店のディスプレイケースの中で長年売れ残りつつ、動作だけはさせられたもの』などに多いパターンです。

 

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地板にテンプだけをまず組んで、バランスの調整をします。ひげぜんまいの具合をチェック。こちらはそれほど狂いはなく、簡単な修正で済みました。ひげぜんまいはバネの一種ですから、経年の使用などにより、どうしても曲がりやズレが出てきます。正しくカーブを修正しないと、良い特性にはなりません。国産のものはどうも伝統的にこの点が甘く、製造時の特性こそスイス高級時計を凌駕しているものの、10年20年たつと、、、というような感じです。(とくに70年代以降〜現在に至るまでその傾向が顕著)カタログスペックには表れない部分にこそ、時計作りの奥深さを垣間みる気がします。うわべだけ追うようなことを脱却して、未来の時計ファンをうならせる、愛され続ける製品づくりに期待したいですね。

 

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ムーブメント本体の組み立てのようす。6246A はオールドセイコーの中では組み立てやすい部類で、特に難しいところもなく順調にすすみます。手巻き機構を省略しているため、丸穴車がありません。そのため、初動のためには少し身に付けて自動巻きによるゼンマイの巻き上げが必要です。

 

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ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 219° ビートエラー0.1ms +004 sec/day

右上)文字盤下 振り角 219° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

左下) 3時下  振り角 200° ビートエラー0.0ms +003 sec/day

右下)12時下  振り角 200° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

数値は立派です。しかし、計測器上の特性データと、実際に使ったときの日差はかならずしも一致はしません。特性はゼンマイがほどけるに従っても変化していきますし、実際に身に付けて動作させることでも異なってきます。データはある瞬間の測定値を弾き出しているだけにすぎません。

 

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ベースムーブメントの測定には問題がありませんので、カレンダー機構の組み上げに進みます。カレンダー送り車がメタルですので、故障が少なくて良いです。(同じセイコー製にも悪名高い樹脂製のカレンダー送り車を採用したキャリバーがありますが、軒並み故障で修理不可です。パーツが手に入りません)

 

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こちらは自動巻ブロックを裏側からみたところです。セイコーのマジックレバーによる巻き上げ機構は、ご覧のように巻き上げの車と、それを挟むレバーというシンプルな構成です。これが幸いして、長く使っても故障しにくく丈夫です。巻き上げ効率も良いため、手巻き機構のカットに踏み切れたのでしょう。このあたりはコストダウンと品質の両立を高い次元で実現できた良い例だと思います。(ちなみに、マジックレバー方式は現在でもセイコー機械式時計の一部モデルに採用され続けています。)

 

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自動巻ブロックを仮組して、動作具合をチェックします。問題なく両方向とも滑らかに回転しながら巻き上げすることができました。

 

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このモデルはデイデイトのため、最後に曜日カレンダーディスクを取り付けます。

 

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文字盤をとりつけて、剣付けまで来ました。

 

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いよいよケーシングです。外枠には若干の変色などがみられるものの、緑青などは生じておらず、まずまずの状態といってよいと思います。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 230° ビートエラー0.1ms +004 sec/day

右上)文字盤下 振り角 224° ビートエラー0.0ms +003 sec/day

左下1) 3時下 振り角 241° ビートエラー0.1ms +005 sec/day

左下2)12時下 振り角 221° ビートエラー0.0ms +006 sec/day

右下3) 3時上 振り角 200° ビートエラー0.2ms +000 sec/day

右下4)12時上 振り角 204° ビートエラー0.1ms +011 sec/day

静止した測定では問題のない結果ですが、実測では日差が+10秒を超える日があったため、すこし暴れ気味です。波形もよく見ると少し波が目立つ姿勢があります。安定するまでに数週間〜数ヶ月ほど使い込む必要があるかも知れません。(あるいはテンプの交換か、、、しかし交換パーツなどありません)

 

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完成

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