今日の時計『セイコーマチック6216-9000』

SEIKO|Seikomatic 6216-9000
SEIKO|Seikomatic
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広島県T.M.様ご依頼品

昔使っていた時計が、40数年ぶりに出て来たとのこと。また使いたいとのことで、修理のご依頼をいただきました。風防とケースのフルポリッシュもご希望でしたので、セイコー純正風防に交換しました。ムーブメントの状態が思わしくなく、かなりハードな修理となりましたが、なんとか実用可能なレベルに回復したと思います。


オーバーホール事例:  セイコーマチック 6216-9000(広島県T.M.様ご依頼品)6216-9000-1

セイコーマチックの修理と風防交換のご依頼です。40数年ぶりに出て来たが動かないとのこと。新しい風防に合わせて、フルポリッシュも行うことに。

 

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最初に風防を外してみます。ケースもかなりサビなどが見られますね。風防はオリジナルのセイコー “トキライト” が見つかり、取り寄せました。さすがに純正品だけあって、ピッタリです。

 

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セイコーマチックは手で巻き上げることができない構造のため、香箱を直接ドライバーで巻き上げたところ、動く事は動いたのですが、、。裏平差30秒で立平差に至っては3分以上もあります。ちなみに天真が曲がっていると、こんな感じの特性になります。3時下の日差は+218秒で12時下の+016と比べてΔ約200秒は、異常です。(写真左下参照)

 

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今回の場合は天真はどうやら曲がっておらず、テンワのバランス取りを過去に行ない過ぎて、おかしなバランスになっているのが原因のようです。ご覧のようにテンワは穴ぼこだらけです。ここをあまり削ると、テンワそのものの重さが軽くなりすぎてしまい、設計上期待される性能がでなくなってしまいます。

 

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全てのパーツを分解して洗浄しました。だいぶ摩耗しているパーツもありますが、交換用の部品は入手できませんので、なんとか誤摩化しつつ使うしかありません。

 

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香箱のゼンマイに注油し直したところです。セイコーのゼンマイは、セイコー独自規格のものが多く、当時のオリジナルパーツが入手できない今日の修理事情においては頭の痛い問題のひとつです。幸い、オリジナルのゼンマイが健在でした。ここが切れていると、交換パーツが無いために修理不能ということもあります。

 

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テンプのひげぜんまいは、外端も内端も中心もフラットも、もう何もかも狂っているばかりか、やはり過去にここも変ないじられ方をされて、ずいぶん妙なことになっていました。あちこち下手にいじられると、もう完全に元には戻せません。なんとか使えそうな状態にまで持って行きましたが、フラットではありません。少し傘型に見えますが、ひげぜんまいの途中途中で、少しずつ曲がっているので、これが修正の限界でした。

 

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ムーブメント本体を組み立てます。最初に輪列と針回し機構から組み、香箱受けやアンクル・テンプまで組んでベースムーブメントの完成です。どこまで元に戻ってくれるか、祈るような気持ちで組み立てます。

 

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ベースムーブメントの測定です。

左上)文字盤上 振り角 250° ビートエラー0.0ms +019 sec/day

右上)文字盤下 振り角 251° ビートエラー0.1ms +018 sec/day

左下) 3時下  振り角 226° ビートエラー0.0ms +046 sec/day

右下)12時下  振り角 215° ビートエラー0.1ms +005 sec/day

ひげぜんまいの調整の甲斐あり、裏平差はΔ30秒からΔ1秒まで改善しました。しかし、縦の姿勢差はひげぜんまいの調整だけでは取りきれません。やはりテンワの穴ぼこがガンです。テンワのバランスは、ひげぜんまい以上に姿勢差への影響が大きく、安易に削ってリバランスすべきではありません。しかし、どういうわけか、ろくにひげの調整ができていないテンワに限って、こんな具合なのです。

 

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ベースムーブメントは当初よりは随分改善しましたので、カレンダーの組み立てと剣付け、ケーシング、と進みます。ローターの回転錐も、ベアリングが経年劣化しており、巻き上げ効率は本来の半分程度に落ちています。寝る時とお風呂の時以外は常に装着していないと、ゼンマイの持続時間がもたずに止まるかも知れません。個人差があるため、難しいところです。オートワインダーで巻き上げできて、規定の時間以上動き続けていれば、当工房では合格とせざる得ません。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 241° ビートエラー0.0ms +014 sec/day

右上)文字盤下 振り角 247° ビートエラー0.0ms +007 sec/day

左下1) 3時下 振り角 223° ビートエラー0.2ms +024 sec/day

左下2)12時下 振り角 235° ビートエラー0.1ms -001 sec/day

右下3) 3時上 振り角 230° ビートエラー0.0ms +007 sec/day

右下4)12時上 振り角 229° ビートエラー0.2ms +030 sec/day

針付け・ケーシングまで進むと、ベースムーブメントの特性が変化する場合がありますが、今回は良い方向に変化したため、これで最終特性とします。元が日差3分だったことを考えれば、Δ30秒は十分だと思います。あとはランニングテストを行いながら、実測の記録を見つつ実際に使いやすそうな程度まで微調整を行ないます。

 

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完成

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