今日の時計『ジン・クロノグラフ』

Sinn|Sports Chronograph
Sinn|Sports Chronograph

山梨県K.O.様ご依頼品

少し更新の間が空きまして、久しぶりの掲載となります。(決して暇だった訳ではなく、まとまった数のご依頼が重なって忙殺されておりました)

今回はジンのクロノグラフです。派手さはないものの、視認性に優れたダイヤルや針、しっかりとした作りのケースなど、いかにもドイツ製らしい真面目な作りです。それでいてスイス製のメジャーブランドの同等品よりもお買い得な価格設定(といっても、結構なお値段しますよ)で、通好みなお品かも知れません。きっちりと仕事させていただきました。


ジン スポーツクロノ・オートマチック

Sinn-01

まずは分解前の歩度測定から。平姿勢で−15秒、縦姿勢では−30秒程度の遅れ。平姿勢と縦姿勢の差が少しあるものの、波形におかしな乱れもなくオーバーホールで直りそうな状態。

 

Sinn-02

実際にパーツを分解してチェックします。(上)何箇所が問題があったものの、幸い交換が必要なパーツはなし。問題の部分は後ほど修正するとして、ひとまず分解したパーツを洗浄して並べ直したところ。(下)

 

Sinn-03

ゼンマイも洗浄して巻き直し、新しく注油します。(ホワイトバランスがおかしく少し赤みがかってみえますが、実際は赤くありません)

 

Sinn-04

こちらは地板にテンプだけを組んで、ひげぜんまいの調整などをしている様子。測定時に見られた不具合の原因の半分以上はここです。きっちりと修正しておきました。

 

Sinn-05

こちらは輪列の穴石の調整をしているところ。2番車につく出車を分解した際に、あまりに固く押し込まれていたため、出車を抜くときに石も一緒に動いてしまって位置がおかしくなっていました。そういうこともままあります。

 

Sinn-06

ムーブメントのETA7750は3/4受けに近く、受けを取り付けてしまうと輪列のアガキ量(ホゾと石の隙間のこと)がみにくい構造です。そのため、歯車だけをのせた状態でもかみ合いに問題がないかチェックしたりします。もちろん組んだ状態でも入念に動き具合などを確認します。

 

Sinn-07

輪列の受けを組み、巻き上げ機構やアンクルまで組んで、ベースムーブメントの残りはテンプのみです。

 

Sinn-08

テンプを組んで動作させます。これは偶然撮れた1枚です。見る人が見ればわかるのですが、、、。少し難しい解説が必要なため、詳細は省略します。ガンギの歯がアンクルのツメ石のまさに中央を衝撃中に、ひげぜんまいのアオリが緩急針のど真ん中にある様子が分かります。(はい。何の話かさっぱりですね。それで普通ですから気にしないでください。)とにかく、理論通り順調な仕上がりを示す証拠です。

 

Sinn-09

ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 292° ビートエラー0.0ms +003 sec/day

右上)文字盤下 振り角 290° ビートエラー0.0ms +006 sec/day

左下) 3時下  振り角 271° ビートエラー0.1ms +007 sec/day

右下)12時下  振り角 270° ビートエラー0.0ms +006 sec/day

実に理想的すぎて、何も言う事はありません。ムーブメントに起用されているETA7750 は良くできた機械です。

 

Sinn-10

ベースに問題なく、クロノグラフ部分の組み立てへと進みます。たくさんあるパーツを手順よく組み立てていきます。

 

Sinn-11

自動巻のローターも仮組みして動き具合をチェックします。切替車のホゾに少し摩耗が見られるものの、交換するまでにはまだ至らない状態のため、今回はそのまま継続使用します。今後このパーツは摩耗が進めば交換が必要になってきます。ポイントは『あまり手でゼンマイを巻かない』ことが大切です。自動巻の時計全般に言えることで、手でゼンマイを巻くと切替車のホゾは高速回転するので痛みやすくなります。初動に必要な数回だけ巻いて、あとは実際に身に付けて使うか、オートワインダーなどにかけるほうが機械のためには良いです。最悪なのは毎日全巻きになるまで手巻きすることです。そのような使い方をされると、切替車はあっというまに摩耗します。

 

Sinn-12

さらにカレンダー機構の組み上げに進みます。デイデイトのため、ディスクが2枚ついていますが、良く見るとローマ字が英語ではなく、、。

 

Sinn-13

SINN(ジン)はドイツのメーカーです。いわゆるジャーマンウォッチの流れがあり、『AUTOMATIK』もドイツ語です。(英語ではAutomatic)そして6時位置にはスイス高級時計にお約束の”SWISS MADE”の表示がありません。つまりスイス製ではないのだよと。メーカーのこだわりが感じられます。

 

Sinn-14

ケーシングまで来ました。ローターに彫られた Sinn のネームがひときわ目を引きます。

 

Sinn-15

最終特性 クロノグラフ ー ON

左上)文字盤上 振り角 287° ビートエラー0.1ms +005 sec/day

右上)文字盤下 振り角 292° ビートエラー0.0ms +008 sec/day

左下1) 3時下 振り角 259° ビートエラー0.2ms +008 sec/day

左下2)12時下 振り角 254° ビートエラー0.0ms +006 sec/day

右下3) 3時上 振り角 253° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

右下4)12時上 振り角 257° ビートエラー0.2ms +007 sec/day

全姿勢差Δ3秒と非常に優秀です。もう少しゼロ秒ギリギリまで合わせられなくもなさそうですが、長くお使いになるうちにはだんだんと遅れてきます。オーバーホール直後の性能だけを見てはいけません。機械それぞれの個性や状態、これまでの来歴などにより、最適な調整の方法は異なります。

 

 

 

Sinn-16

完成

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