外装研磨サービス『手仕上げ』について


ここでは外装研磨(ポリッシング)サービス『手仕上げ』の作業の流れや、お申し込み前に知っておきたいポイントについてまとめてあります。当工房の研磨サービスは、ひとつひとつの作業が手仕上げです。メーカーのように大規模な工場で専用設備やロボットにより製造された新品とは、風合いなどが全く異なります。新品のような無機質で完璧な美しさを期待される方には向きません。手仕上げでも大変優れた技術を持っているジュエラー(宝飾師)のような職人も世の中には存在しますが、当工房では本業がウォッチメーカー(時計師)である私が兼務しておりますので、研磨サービスの技術はおまけ程度のものです。その点をよくご理解いただきました上でご利用ください。

【このページのコンテンツについて】

  • 外装研磨サービス『手仕上げ』の作例・RADO“Cornell”

 

➡その他の作例についてはコチラをご覧ください。

 


『手仕上げ』の作例・RADO“Cornell”

オーバーホールに加えて外装研磨のご希望をいただきました、ラドーのコーネルです。60〜70年代に製造されたもので、アンティーク時計の扱いです。ケースや風防には大小無数のキズが見受けられます。内部の文字盤には変色や劣化が見られます。(針や文字盤の扱いは原則として当工房ではそのままとなります。ダイヤル・リダンなどは承っておりません)

 

さっそく裏蓋を開けて、分解をしていきます。相当年月に渡ってメンテナンスを行っていないものは、このように内部にサビが生じてしまいます。研磨を行う前に、まずは生じてしまったサビ等を落として下地を整える作業が必要になります。これは研磨サービスとは別に『サビ取りパーツ補修』対象の特別料金となっております。

 

こちらは風防とベゼルを外したところ。アンティーク時計では風防がプラスチック製のものが多く、取り外そうとしても上手に外れてくれなかったり、割れてしまったりして、取り外すだけで壊れてしまうことがあります。そのため、ポリッシュ料とは別に、風防やその他の外装パーツなどを新しく交換する必要がでてくる可能性が非常に高いです。ケースバイケースなのですが、プラ風防の時計を研磨する際の見積もりには、交換用パーツ代も含まれることが多くなる傾向があります。

➡『洗浄のみ』の場合は外装をここまで分解する必要がないため、外装パーツの交換は任意となります。

 

大きなサビはドライバーなどを使って粗く削ぎ落とします。細かい部分やデリケートな部分は、サビ取り液などで可能な限りサビを落とします。

 

サビ取りを行なった後に、外装パーツの洗浄を行います。ちなみに研磨サービスを行わず、『洗浄のみ』(希望なし)を選択された場合は、外装の処理はここまでとなります。この先が研磨サービスの実施内容となります。

 

当工房で使用しているバフ研磨機です。業務用機ではありますが、卓上小型なのでモーターの出力も弱く、あまり長時間の作業は行うことができません。フロア設置型のような大型機とは同じ時間内にできる作業の量に差がでます。このため、あまりに深いキズや変形のひどいケースなどでは、研磨サービスの実施をお断りさせていただくことがございます。何とぞご了承ください。

 

硬質フェルトバフに研磨剤を塗って、いよいよ研磨開始です。リュウズ用のパイプは素材が真鍮であったりするため、誤って研磨すると一瞬で削り取られて消えてしまいます。そのため耐摩耗テーピングなどで保護します。

➡ケースの形状などによってはパイプそのものが研磨作業の邪魔になるため取り外しますが、再取付が不可の素材や構造であることが多く、これもプラ風防と同様にパーツを新しく交換する必要が生じます。パーツ代は研磨料とは別途に加算します。

 

研磨の具合をチェックしつつ、どの程度まで削っていくか慎重に見極めます。切削面に白い点々のように見える部分は取りきれていないキズです。あまりに削りすぎると、キズが消えたとしても形が元のシェイプから崩れてしまって、出来上がりの格好が良くないものになってしまいます。

➡小キズや線キズ程度などはすっかり消えますが、深いキズや打ち傷などはこのように少し残ってしまう場合があります。

 

今回はさらに切削を進めていき、裸眼で見える程度の傷は取りきれました。一つ前の画像と見比べると、白い点々も消えてまっさらな状態になっていることが分かると思います。

 

続いて目の細かいラスターバフを使って、さらに表面光沢仕上げを行います。切削面周囲にこびりついた研磨カスもよく落とします。

 

よりきめの細かい光沢となり、いわゆる“鏡面仕上げ”のできたところ。

 

ひとつの面を仕上げるまでに要する時間は15分〜30分。これを全部の面で行います。途中でモーターの冷却のため休憩をはさみますので、全部の面が磨ぎ終わるのは半日仕事です。研磨作業は非常に時間がかかります。

 

様々な角度から光を反射させて、キズの取り残しなどがないかを目視でチェックします。よりレベルの高い研磨専門の職人になるとキズミやルーペを使って細かいところまで入念に仕上げます。当工房では作業環境の制約上そこまでのクオリティは追求しておらず、裸眼で自然に見える範囲までとなります。

➡あまりに元のキズが深いものや、バフ研磨では磨けない部分は思ったようにキズが落ちないこともあります。多少のキズの取り残しについてはご容赦ねがいます。

 

ケース全面の研磨が終わり、再び洗浄で研磨カスなどを完全に取り除いたところ。

 

ケースの上面は元のデザインを受け継ぎ、ヘアーライン仕上げを実施します。基本的にはオリジナルの状態に近い外観を目指しますが、必ずしも同じ仕上げにこだわっているわけでもありません。ヘアーラインではなく鏡面仕上げがよければそのように変更することもできますし、逆もまた同じです。

 

“手仕上げ”の真骨頂。ヤスリを手に持ち、これでヘアーラインの模様を入れていきます。

➡この形状のヤスリでは物理的にヘアーライン仕上げのできないもの(例:ブレスレット駒やクサリなど細かい曲面)は、バフ研磨機にサテン仕上げ用のバフを取り付けて行います。

 

右半分に筋目を入れたところ。写真では光の加減がうまく捉えられず、少し見えにくく、差がわかりづらいです。

 

上が実施前。下がヘアーライン仕上げ後。ディティールが甘いとお考えの方はウチのサービスご利用はご遠慮ください。手仕事っぽさが感じられて良いねとお感じいただけた方はぜひどうぞ。

 

外装研磨サービス “手仕上げ” の完成した本体ケース。外装研磨サービスはたいへんな時間と手間がかかります。エネルギーと集中力を使い果たしますし、正直とても疲れます。そのため私も喜んでいただける方のために実施したいです。このページの情報がお互いにとって有益となり得ることを祈ります。

 

【Before & After】

かんの部分

上面ベゼル

側面部分

裏蓋

オーバーホール完成

【サービス参考価格】RADO cornel (ETA 2760)
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□オーバーホール料金 自動巻  ¥ 20,000
□追加パーツ費用
 ・裏蓋ケースバックのパッキン ¥ 500
 ・汎用パイプ交換       ¥ 3,000
□その他
 ・研磨サービス “手仕上げ”  ¥ 10,000
 ・ブログ掲載オプション ¥ 5,000
 ・サビ取りパーツ補修  ¥10,000
 ・ベルト交換(持ち込み) -
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合計金額        ¥ 48,500

 

 

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