Citizen: Homer Date (cal.1802) #2

オーバーホール事例;Citizen “Homer Date” (東京都Y.S.様ご依頼品)

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こちらはシチズン・ホーマーデイト(その2)のオーバーホール事例です。その1と雰囲気がよく似ていますが、こちらのほうがケースが一回り大きく、カレンダー窓にレンズが付いております。それにしても、文字盤の中に異様と言ってよいほどの毛ゴミが目立ちます。こういう仕事をされた時計は中身も推して知るべしです。

 

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分解前の歩度測定です。案の定、とんでもない特性になっています。悪徳業者が歩度だけ合わせて転売したような不自然さです。ビートエラーが3msもあります。ご覧のように波形が二本線になってしまっています。ビートエラーの推奨値は0.3ms以下ですから、10倍以上も基準値を超えてしまっております。経験上、6msを超えると正しく動作せず頻繁に止まるようになります。ともかく、まずはこれを直さなければなりません。

 

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ムーブメントを分解していきますが、中のパーツもこの有様です。いったいどういう場所で裏蓋を開けたのか、考えられないほどもはや芸術的ですらあります。

 

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キレイサッパリと洗浄が完了しまして、これから魂を入れ替えたいと思います。

 

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その1と比べて、香箱内もすっかり油が乾ききっておりました。(写真左)洗浄したものの、あまりに長期間乾いたまま使用したためか、汚れが焼き付くようにこびりついて完全に取りきれませんでした。一度に全部取りきろうとするとかえってゼンマイを痛めますから、少し不本意ながら注油しました。(写真右)新しい油がなじめば、古い汚れも徐々に分解され、次のオーバーホールを怠らなければ、キレイに落とせます。

 

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さて、ビートエラーの訂正にとりかかりましょう。まずはテンプのバランスとひげぜんまいを調整します。ひげぜんまいは天真から出ているすぐの部分をピンセットなどを使って、内端カーブを整えます。当初は少しずれていましたが、幸い変ないじられ方がされておらず、数分程度であっさり修正に成功しました。

 

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テンプを地板に取り付けて、アオリ具合の調整です。その1でも触れたように、この機械は「内あて」でOKですから、これで問題ありません。むしろ問題は「振り石」と呼ばれる部分です。写真ではひげぜんまいよりも下で見にくいですが、天真のすぐそばに赤くて四角い石が1つぶら下がっているのが分かりますでしょうか?これが「振り石」です。この振り石をアンクルが左右へと押すことで、テンプを行ったり来たり往復させて、回転運動のエネルギーに変えています。振り石がブランコに乗ったお子さんなら、背中を押したり引いたりする親がまさにアンクルです。

 

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その振り石は、テンプが自然に静止している状態のとき、アンクル中心と呼ばれるライン(写真の白い点線)の真上にあるのが正常です。アンクル中心は、ガンギ車の軸とアンクルの軸を結び、さらにテンプの中心軸をまっすぐに貫く必要があります。このラインから振り石がズレることが、すなわちビートエラー(片振り)の要因となります。緩急針を動かしても(写真左から右)、振り石の位置が変わらないように、ひげぜんまいのカーブを調整しなければなりません。写真ではわずかに振り石が動いていますが、この程度はなんとか許容ラインです。ちなみに当初はライン上から振り石がはみ出すほど論外な状態でしたので、雲泥の差です。

 

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テンプの調整が完了し、本体を組み上げていきます。センターの2番車と筒カナから始まり、巻き上げ機構、再び表輪列と進みます。香箱受けまで取り付けたところでザラ回しを行い、各歯車が上下に振れず滑らかに回転することを確認します。問題がなければ、忘れないうちに歯車のホゾへ注油を施します。

 

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ベースムーブメントが完成しました。その1と比べると、若干ムーブメントのあちこちに小傷が目立ちます。いい加減な仕事をする修理屋は思っている以上に多く、傷だらけになってしまったムーブメントもしばしば見かけます。この程度はまだマシなほうと言えます。

 

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ベースムーブメントのみで仮の歩度測定です。

左上)文字盤上 振り角 215° ビートエラー0.0ms +010 sec/day

右上)文字盤下 振り角 227° ビートエラー0.0ms +010 sec/day

左下)12時下  振り角 201° ビートエラー0.1ms +007 sec/day

右下) 3時下   振り角 201° ビートエラー0.1ms +010 sec/day

かなりシビアに振り石の調整をした甲斐ありまして、ビートエラーは文字盤上下共に0.0msをマークしました。歩度の裏平差に至ってはΔゼロ秒ですから、テンプ含めた調速機構および脱進器の調整には問題がないことがわかります。振り角が低めであるのは、その1でもご説明した通りです。同じキャリバーだけに、キチンと調整するほどに同じ特性となります。

 

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ベースムーブメントの調整が無事に終わって、カレンダーを組み上げます。受けを付けてしまったため見えませんが、カレンダー送り車のハンマーがプラスチックではなく、メタル製でした。こちらの機械のほうが製造年が古いものと思われます。

 

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剣付けの様子です。いつも0時ちょうどの写真では芸がないので、趣向を変えて6時半にしました。いちいち写真に撮らないだけで、実際には3本の針が重なる全ての時刻に合わせて、針と針の幅が均等に保たれていることを確認しています。地味な作業ですが、ちゃんと見なかった時に限って、なぜか針と針がぶつかって時計が止まり、再修理と相成ります。恥ずかしいったらないです。二度とご免です。だからキチンと毎回見ております。

 

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ケーシング後の最終特性を測定します。

左上)文字盤上 振り角 227° ビートエラー0.1ms +007 sec/day

右上)文字盤下 振り角 223° ビートエラー0.1ms +011 sec/day

左下1)12時下 振り角 206° ビートエラー0.3ms +007 sec/day

左下2)3時下 振り角 194° ビートエラー0.2ms +009 sec/day

右下3)3時上 振り角 204° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

右下4)12時上 振り角 196° ビートエラー0.0ms +011 sec/day

ベースムーブメント単体とケーシング後では、わずかにビートエラーの値が異なることが分かります。振り石が理想的な位置に調整されていても、他に様々な要因によって、わずかな片振りが生じるからです。それは調整技術による限界を超えた話です。これ以上の結果を求めるなら、時計師に言わず設計者なりメーカーなりに言って欲しいです。(いくら説明しても「どこそこの時計は全部0.0msだった」とか言ってくる頑迷な方がまれにいらっしゃいます。。苦笑)

 

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完成。

今回のサービス料金:オーバーホール(手巻き)¥ 15,000

Citizen Homer Date その1を見る

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