MHR mahara sparviero (ETA 2824)

マハラ・スパルビエロ (ETA cal.2824)

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マハラのスパルビエロのオーバーホールご依頼です。ご依頼主様が機械式時計に興味を持つきっかけとなった思い入れのあるモデルとのこと。珍しいブランドであまり見かけないマイナーなもの(※)ですが、ムーブメントは汎用性の高いETA2824が採用されており、メンテナンス性には全く問題がありません。90年代以降の機械式時計ブームに乗った非常に多いパターンです。(本業が靴・バッグ・服飾など他業種のブランドが機械式時計も出している場合は、中身がETA汎用ムーブメントであることがほとんどです)その後、機械式時計に詳しくなるにつれ、より『コア』な世界へと向かうわけですが、やっぱり『想い出の一本』というのはいつまでも特別な意味を持っていることがあるわけです。大切なお品を任されているという認識で作業に臨みます。

※マハラは現在他社に買収され時計を作っていません。元はイタリアの宝石デザイナーが始めたブランドのようです。しかし、時計事始めにはなんとも素敵でお洒落なデザインですね。

 

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分解前の歩度測定をします。ビートエラーが軒並み3.0msあるものの、これはよくある緩急針とヒゲ持ちのズレに起因するものでしょう。振りが弱めなのは、内部の油が乾いているためと思われます。波形におかしな乱れはなく、どの姿勢でも一本調子に真っすぐ伸びており、深刻なエラーは抱えていないようです。オーバーホールで直る典型例です。

 

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全てのパーツを分解して洗浄します。交換が必要となるものは見当たりませんでした。

 

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最初にバランスを地板に組んで、テンプの調整から行います。

 

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テンプのひげぜんまいが、ずいぶん傾いています。素人目にもハッキリ分かるほど傾いており、これは問題です。本業が時計屋でないブランドは、外注の下請け業者が安く作ったりします。修理のときも格下扱いで下っ端の職人にやらせたりします。そのため今回のような大雑把でデタラメな調整をされてしまったものをしばしば目にします。私に出会ったが運の尽き。キッチリと修正してしまいましょう。笑

上が修正前で、下が修正後です。

 

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香箱のゼンマイも洗浄して巻き直し、注油します。

 

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ムーブメント本体を組み立てるようす。ETA2824は時計界の大ベストセラーといえます。多くの採用例があるには理由があります。よく考えられた設計で精度もよく、合理的な作りで故障も少ない。時計ファンには将棋の歩のごとく軽くあしらわれてしまう憂き目をみることもありますが、それだけ普及している証拠でもあります。商業的な成功などを抜きにして、純粋に機械として見た場合、ETA2824 はたいへん優れたムーブメントだと思います。

 

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ベースムーブメントの完成です。

 

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ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 305° ビートエラー0.0ms +001 sec/day

右上)文字盤下 振り角 309° ビートエラー0.0ms -001 sec/day

左下) 3時下  振り角 283° ビートエラー0.1ms +006 sec/day

右下)12時下  振り角 275° ビートエラー0.1ms +005 sec/day

簡単にクロノメーター級の精度が出ます。他のムーブメントでは簡単には出せないものです。

 

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カレンダー機構の組み立てのようす。ロレックスのような瞬間送り機構に比べてしまうと、ガッチャンと間をおいてディスクが切り替わりますが、一般的に要求される必要最小限の機能を低コストかつ信頼性の高い機構で実現するとこうなるよ、というお手本のような作りです。これ以上は簡素化できないほど少ない部品点数ですが、決して粗悪という訳ではありません。故障が少なく、丈夫で長持ちする良いものです。

 

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文字盤と剣付けをしたところ。サーモンピンクにブラックの針が映えます。時計の文字盤はデザイナーのような職業の方からみると、かなり製作意欲をそそられるようで、中身はETAだけど文字盤は有名デザイナーとコラボみたいな組み合わせで生まれた時計は枚挙に暇がありません。そんな時計をお持ちの方に朗報です。中身がETAならどんなブランドでも同じ価格でオーバーホールできる『アトリエ・ドゥ』がオススメ!(しっかり宣伝、、、)

 

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剣付けを横からチェック。真っすぐ等間隔になるのが理想です。わずかに曲がっている程度はご愛嬌です。(そのわずかな曲がりを完全に真っすぐにするべく針をいじった瞬間に、得てして塗装が剥げたり、小傷がついたり、非常に難しいものです。それが針です。ですから、基本は針はいじりません)

 

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ケーシングまで来ました。過去の修理で乱雑に扱われたのか、ローターのネジ周りには少し小傷が目立ちます。全体としては他にそれほど目立つ傷などはなく、状態はまずまず良いほうだと思います。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 293° ビートエラー0.0ms +002 sec/day

右上)文字盤下 振り角 307° ビートエラー0.0ms +000 sec/day

左下1) 3時下 振り角 260° ビートエラー0.2ms +010 sec/day

左下2)12時下 振り角 260° ビートエラー0.0ms +003 sec/day

右下3) 3時上 振り角 269° ビートエラー0.1ms +008 sec/day

右下4)12時上 振り角 270° ビートエラー0.1ms +011 sec/day

標準的なETA2824の性能が出ており、問題ありません。同じ2824系でも例えばチュードルなどはもっといいじゃないかとお思いになる方もいるかと思います。あれはモノが違います。特注品だったりします。おまけに高級時計ブランドの場合は大量の納品の中から、さらに自社の厳しい基準をクリアしたパーツだけを使っていたりします。(不採用品は廃棄/返品ですから、当然その分のコストが合格品にのしかかって最終的な製品価格が高くなるわけです)

 

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研磨前(左)ライトポリッシュ後(右)

 

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完成

今回のサービス料金:オーバーホール(自動巻き) ¥20,000

外装研磨サービス:ライトポリッシュ ¥1,000

ブログ掲載オプション:¥5,000

合計:¥ 26,000

 

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