Omega: Constellation Cal.561

オメガ・コンステレーション Cal.561

omega561-1

分解前の測定から。平姿勢は一見よさそうですが、縦姿勢でリュウズ下(3時下)が−9秒と遅れなのが気になります。しかし、主要四姿勢で姿勢差はΔ20秒以内に入っており、テンプの状態は悪くありません。ベースはオーバーホールのみで直りそうです。

 

omega561-2

これは自動巻きブロックを構成するパーツのうち、切替車といいます。ローターが右に回っても、左に回っても、軸はゼンマイを巻き上げる一方向にだけ動くようにできています。それはこの切替車のおかげです。ホゾのところが摩耗しているため、これは交換が必要でした。(左:交換前/右:新しいパーツ)

 

omega561-3

風防もかなりキズ多数で、過去に何度か磨いたような跡もみられます。(写真上)あまり研磨を繰り返すと風防そのものが薄くなってしまい、いざという時に割れて風防の役目を果たしません。Omega 純正品でないものが使われていたこともあり、ご依頼主様に純正品への交換をおすすめし、交換実施することに。Omega 純正品のプラ風防を取寄せしました。(写真下)ちなみにスウォッチ・グループは2015年末まででサードパーティ向けへの部品供給を全て停止したため、今後はオークションなどで運良く出回るものを時価で入手する機会を探すことになっていきます。まだ時計材料店に在庫の残る今がチャンスです。在庫が無くなり次第、この手のパーツは天井知らずにプレミア価格になっていきます。(さもなければスウォッチ・ジャパンへ行けということです)もうじき今の価格では提供できなくなるでしょう。

 

omega561-4

オメガの純正風防を拡大したところ。純正のプラ風防には中央にオメガ(Ω)の透かしシンボルが入っています。現在の技術では中国あたりで簡単に偽造できてしまいますから、当工房では必ず未開封のオメガ・パッケージ入りのものだけを信頼できる筋から仕入れています。(ロレックスのほうはともかく、オメガのプラ風防のニセモノなんて、まだ聞いたことはないですが。今後出回る恐れもあり警戒しています。)

 

omega561-5

プラ風防なのでビニールで養生しつつ、ケース本体へはめ込みます。防水タイプのものはきつく圧入するため、非防水タイプのプラ風防とは全く異なり、とても素手で押し込んだ程度ではビクともしません。グラス・プッシャーを使って装着します。

 

omega561-6

防水プラ風防は力加減が難しいです。御徒町のとあるベテランは、これと似た装置のハンマーグリップの部分を上から空手チョップのように手を振り下ろして一気に入れておりました。(それを見て後日真似したところ、見事にグラスを叩き割りました。)かといって、グリップを少し握ったくらいじゃ全然入らないほど固いのです。握力60kg↑の怪力でプチッと入れます。変な裏ワザには走らず、正攻法の力技のほうが私には向いているようです。

 

omega561-7

ハイ。ちゃんと奥まで入りました。そしてどこにもキズやヒビなど微塵もありません。こんな職人芸みたいな作業の連続なんです。時計修理は。

 

omega561-8

内部ムーブメントの分解と洗浄が済んだところ。

 

omega561-9

本体の組み立て。リュウズの防水パッキンが溶けてヘドロ状になっていたため、パッキンのみ交換しました。防水が甘かったためかずいぶんあちこち変色したり緑青やサビも見られましたが、幸い軽微で機能に影響のない程度だったので、補修して再利用で済みました。

 

omega561-10

ベースムーブメントの完成。それにしてもキャリバー56X系は根強い人気ですね。工房開いてから半年経過ですが、すでに数十個やっております。ブログ掲載事例だけでも数例あります。(修業時代を含めると、もういくつやったか数えきれないほど。)今後も何十何百とお付き合いする可能性がプンプンする機械のうちのひとつだと思います。頭が痛いことに、修理需要の割にパーツは入手困難です。

 

omega561-11

ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 243° ビートエラー0.1ms +015 sec/day

右上)文字盤下 振り角 243° ビートエラー0.0ms +007 sec/day

左下) 3時下  振り角 207° ビートエラー0.3ms +009 sec/day

右下)12時下  振り角 206° ビートエラー0.1ms +007 sec/day

気になっていた3時下の遅れはほぼ解消されたのでよしとします。

 

omega561-12

カレンダー機構の組み立てと、文字盤&剣付けをしたところ。

 

omega561-13

ケーシングまで来ました。

 

omega561-14

最終特性

左上)文字盤上 振り角 253° ビートエラー0.1ms +010 sec/day

右上)文字盤下 振り角 249° ビートエラー0.0ms +010 sec/day

左下1) 3時下 振り角 242° ビートエラー0.3ms +004 sec/day

左下2)12時下 振り角 232° ビートエラー0.1ms +005 sec/day

右下3) 3時上 振り角 236° ビートエラー0.2ms +001 sec/day

右下4)12時上 振り角 231° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

全姿勢差Δ9秒と性能も問題ありません。振りはやや低めですが、年式相応と思います。よく「280°振るはずだ」とか言う方いるのですが、それは時計の状態によります。半世紀前に作られた時計ですから、使用状況やら持ち主と共に歩んだ道により大きな差がつきます。これだけ振っていれば上等です。あとたった30°あげるために、場合によっては何から何までパーツを交換しなければなりません。「パーツにいくらでも金は出す」というなら引き受けます。オーバーホールだけでなんとかしてくれないか?という、ナンセンスなお話にはお付き合いご遠慮させていただきます。いくら技術を駆使しようが、経年劣化したものは修理にも限界があります。

毎度ながら、出来る事は全てやっております。私もできるなら元気いっぱいに振るテンプが見たいです。それでもこれが現実の結果なのです。老体に鞭打つような方法もありますが、愛用の時計の余命は急速に縮んで昇天確実です。私はそんなことはしたくありません。場合によってはわざと振りを落とします。高い振りに耐えられないほど弱っているものもあるからです。

よく知らないで振り角だけを盲目的に追い求める方。どこへいっても嫌われます。

(同じ理由で精度とか何だとか病的なこだわりのある方もそうですよ)

 

omega561

完成

今回のサービス料金:オーバーホール(自動巻き) ¥20,000

外装研磨サービス:洗浄のみ ¥0

交換パーツ費用:オメガ純正 風防 ¥10,000 /切替車 ¥15,000

合計:¥ 45,000

 

トップへ戻る