Omega: Speedmaster Professional ref.145.0022 (cal.861)

オメガ:スピードマスター プロフェッショナル

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オメガのスピードマスターのオーバーホールとフルポリッシュのご依頼です。ref.145.0022 はオリジナルのcal.861を搭載した初期型の復刻版で80年代に製造されたものですが、ムーブメントも含めてほぼ同じ作りになっています。パーツもほとんどが相互に交換可能なほどです。

 

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分解前の測定から。振り角が220°前後とあまり元気がありません。波形も一見すると二本線でビートエラーがずいぶんあるようにも見えますが、これは油切れによるものと、ケース内部の残響音を機械が読み取ってしまったものと思われます。毎度ながら、測定器の結果だけでは判断できません。しかし歩度は各姿勢でよく揃っており、オーバーホールで十分に回復が見込まれます。

 

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ケース分解途中のようす。長年に渡りご愛用だったとのことで、ご覧の通りケースはキズや凹みが多数です。

 

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クロノグラフ・プッシャーは汚れが詰まって ON/OFF が正常に切替えできないほどでした。ケース本体をフルポリッシュするためには、プッシャーもケースから全て外さねばなりません。丁度良い機会ですので、2つとも新品に交換することになりました。クロノグラフのケースをフルポリッシュするときは、合わせてプッシャー交換を強く推奨しております。(古いプッシャーでも再利用できないこともないのですが、防水不良の原因になりやすいため)

なお、今後はオメガ純正パーツは入手が困難になります。(2016年よりスウォッチ・グループはサードパーティ向けパーツの供給を廃止したため)価格も高騰していく可能性がありますのでご注意ください。

 

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ムーブメントも分解していきます。

 

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全てのパーツの分解と洗浄が完了したところ。

 

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パーツにはホコリなどが混入しないよう、伏せ瓶でガードしながら作業を進めます。

 

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香箱のゼンマイも洗浄して注油し直しました。

 

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まずテンプを先に地板に組んで、ひげ具合の調整を行います。ほとんど修正する部分がなく、順調でした。

 

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続いて巻き上げ機構の組み立てです。過去に何度かオーバーホールに出していたそうですが、腕の良い職人だったのでしょう。パーツがとても美しい状態のままです。(意識の低い職人にいじらせると、一発であちこち傷だらけ&ヘンテコな状態にされます。あきれるくらいもう本当に。)

 

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さらに表輪列を組んでいきます。

 

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これほどの拡大にも耐えられる程、パーツの状態がよいです。まるで製造ラインにいるみたいですね。

 

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輪列受けを組んだら、ガンギを組む前に4番車の出車をつけてしまいます。カップリングを仮組みして実際に回転させて、歯と歯のかみ合いをチェックします。ブレなく滑らかに回転するように調整します。

 

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ガンギ車とアンクルまで取り付けしたところ。受けのフォルムがきっちりとして、ネジの頭も綺麗なままです。ドライバーはネジ溝に合わせて研ぎます。溝にピッタリ合っていないもので開け閉めすると、ネジの頭は簡単に痛みます。仮に頭の径が1mmのネジでも、メーカーによって溝の幅は千差万別です。1mm用のドライバーをただ安直にそのまま突っ込んで使えばいいという訳ではありません。(ドライバーの手入れや選別をちゃんとしない職人がいじるとすぐネジ頭に跡がつくので、それで意識の程度や腕前がわかるのです)レベルの高い職人は、各ムーブメント毎に専用のドライバーセットを揃えているほどです。ウチはさすがにそこまでしませんが、みっともない跡だけはつかないようにドライバーの状態には常に気をつけております。

 

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テンプまで組み上がりました。かなりウラネタでしたが、ネジひとつとっても、色々な情報が分かります。最近ネジの話好きですが、端的に分かりやすく、ここがしっかりしてさえすれば、他の部分もきちんとしていることが多いのです。中古ムーブメントの品定めを写真でしか判断できない場合、ぜひご参考ください。ネジ溝が痛んでいるものは、得てしてその他の部分にもっと深刻なトラブルを抱えている可能性が高いです。ウソのような本当の話。案外そんなものです。

 

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ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 284° ビートエラー0.1ms +002 sec/day

右上)文字盤下 振り角 282° ビートエラー0.0ms +002 sec/day

左下) 3時下  振り角 243° ビートエラー0.2ms +002 sec/day

右下)12時下  振り角 240° ビートエラー0.1ms +000 sec/day

これ以上は望めないほど良い結果と思います。

 

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クロノグラフの組み立てへ続きます。cal.861 はたいへんよくできた機械で、クロノグラフのお手本となる機械のひとつだと思います。工房主はwostepのサティフィケートを取得しておりますが、その最終試験のうちクロノグラフ部門の課題時計がまさにこの機械でしたので、いろいろと思い入れがあります。

 

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ネジ頭も美しいままに、線キズひとつ付ける事なく、無事に綺麗にムーブメントが組み上がりました。きっと試験は満点でしょう。(笑)

※wostepは美しさを競う試験ではございません。くれぐれも早合点なきよう、、。

 

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こちらは裏回りのようす。実際には表を組んだり裏を組んでまた表、、と、cal.861の組み立て手順は少し複雑なのですが、ここでは見た目に分かりやすいように配慮して写真をまとめました。

 

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針の夜光がずいぶん経年により汚れており、夜光の入れ直しをご希望されたため、こちらもあわせて実施させていただきました。夜光の入れ替えはどちらかといえば高度な塗装技術であり、実は私は塗装があまり得意でありません。なんとか裸眼にはそこそこキレイかな?という位にはできたと思います。スピマスの針はホワイトが塗装してあるため、有機溶剤を使う夜光塗料の入れ替えは容易ではありません。(はみ出したら塗装が溶けたり混ざったり、、、)

そうかと言って、スピマスの針セット一式交換はキョウビ1セット1万円也のご時世です。なんとかやるしかないのです。

 

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剣付けまできました。ウンウン。倍率下げれば十分キレイ♪ え、文字盤?(針ですらヒーヒー言っているのにそんなの無理に決まっているじゃないですか!)

、、、アトリエ・ドゥでは文字盤のリダンは行っておりません。夜光入れ直しも基本はお断りさせていただいております。スミマセン。「どうなっても文句言わないから」という心の広い方にのみ、意を決して実施させていただきます。

 

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フルポリッシュの完了したケースをいよいよ組み立てます。

 

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ムーブメントを組み込みました。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 301° ビートエラー0.0ms +005 sec/day

右上)文字盤下 振り角 298° ビートエラー0.0ms +010 sec/day

左下1) 3時下 振り角 258° ビートエラー0.0ms +006 sec/day

左下2)12時下 振り角 247° ビートエラー0.3ms +009 sec/day

右下3) 3時上 振り角 253° ビートエラー0.2ms +012 sec/day

右下4)12時上 振り角 258° ビートエラー0.2ms +012 sec/day

良好な出来具合と思います。

 

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研磨前(左)研磨後(右)

 

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ブレスレットはオールサテン仕上げ

 

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完成

今回のサービス料金:オーバーホール(クロノグラフ) ¥30,000

交換パーツ費用:オメガ純正プッシャー @2 ¥20,000

外装研磨サービス:フルポリッシュ ¥5,000

特別料金:クロノグラフケース研磨 ¥ 5,000

針夜光塗料 入れ替え ¥ 2,000

ブログ掲載オプション:¥5,000

合計:¥ 67,000

 

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