RADO: Manhattan (AS 1859)

ラド・マンハッタン

昔、お父様に買ってもらったRADOとのことです。フラ風防はもとより、ケースも大小のキズが多数あります。フルポリッシュご希望ですので、可能な限りキズを取るようにバフ研磨します。

 

まずは分解前の測定から。全姿勢とも−10〜−20程度の遅れですが、振り角はしっかりしており、歩度も各姿勢で揃っていますので、内部の機械の状態には深刻な問題はなさそうです。

 

分解していきます。風防やケースなど外装に経年のご使用による劣化・痛みがきております。

 

サビに加えて、防水パッキンのゴムもヘドロ状です。これはかなり大仕事になりそうです。文字盤は軽くブラッシングで取れる汚れやゴミを取り除きますが、当工房ではダイアル・リダンなどは行っておらず、基本的に現状のままとさせていただきます。

 

ムーブメント本体には心配していたサビなどの移転はほとんど見られず、まずまず年式の割に良好な状態です。

 

ムーブメント本体を分解し、洗浄が完了したパーツをならべたところ。

 

パーツは伏せ瓶で保護します。机の上には作業に関係のないものを極力出さないスタイルです。これまでもそうですし、これからも変えるつもりはありません。スイスの一流ウォッチメーカーの作業風景をお手本にしています。(びっしり道具だらけの机は一見いかにも時計師らしく見えますが、私は好きではありません。)

 

香箱のゼンマイを取り出して、洗浄をします。

 

ベンジン・カップの中のようす。ゼンマイは一番油汚れがひどく量も多いため、香箱を除いた全部のパーツが洗浄し終わった後に行います。

 

洗浄前(上)と洗浄後(下)

 

ゼンマイを巻き直して、新しい油を差したところ。

 

こちらはテンプを地板に組んで、ひげぜんまいなどを調整しているところ。

 

 

香箱と受けを組んでみて、アガキ量などをチェックします。軽く動かしてみて問題なさそうでしたので、このまま組み立てていきます。

 

つづいて、輪列の歯車を組み立てていきます。

 

3番車と4番車、ガンギ車を拡大したようす。先端のホゾの部分にご注目ください。フォルムがまだかっちりとしており、かつピカピカです。分解前の外装の状態からも分かる通り、かなりの年月に渡って使われてきたはずです。にもかかわらず、ほとんど摩耗が見られません。よい材料で丁寧に作られた証拠です。

 

ベースムーブメントが出来上がったところ。

 

さらに自動巻き機構とカレンダー機構を組み上げます。

 

外装はサビや汚れをさっぱり落として、バフ研磨をかけました。深い線キズや打ちキズなどはフルポリッシュでも取りきれず、幾分残ってしまいましたが、全体としての印象はかなりリフレッシュできたと思います。

 

プラスチック風防は一部ヒビ割れ部分に汚れが入り込んで、完全には落とせませんでした。研磨で取りきれない線キズなども風防内側などに残っています。(バフ機では内側はうまく磨けません)金属ケース内側の表面にびっしりあったサビは可能な限り落としてあります。

 

リュウズはガスケットがヘドロ状でしたので、分解して汚れを全てこそぎ落とし、徹底的に洗浄してあります。ここが防水のキモになる部分ですから、キチンと手入れが必要です。

 

新しいガスケットを付け直します。このガスケット探しはなかなか骨が折れます。リュウズなんてどのメーカーも同じと思ったら大間違いで、ガスケットのはまるリュウズ内部の内径と深さ、それからリュウズを差し込む方のパイプの外径および内径、それから長さ、さらには巻芯の形状や太さ/タイプなどにも影響される場合があり、そういった複数の項目の組み合わせが時計のブランドやモデルにより見事にバラバラのため、ほとんどのメーカーに共通する規格のようなものはありません。汎用品の交換パーツの中から、カット&トライで見つけ出します。時計師の経験がものを言います。

 

ピッタリなガスケットを見つけたところで、同時に剣付けも行います。マンハッタンは特殊なケース形状で、リュウズを差し込むパイプは時計の裏蓋についています。(普通はケース上面側または胴部分につきます)

 

そのため、裏蓋にまずムーブメント本体とリュウズをセットしておき、その後で風防をとりつけます。さらに風防のうえからケース上面をはめ込んで、風防とムーブメントをサンドイッチするようにしてケースを閉じます。

 

最終特性

左上)文字盤上 振り角 251° ビートエラー0.0ms +010 sec/day

右上)文字盤下 振り角 272° ビートエラー0.1ms +009 sec/day

左下1) 3時下 振り角 233° ビートエラー0.3ms +012 sec/day

左下2)12時下 振り角 225° ビートエラー0.3ms +005 sec/day

右下3) 3時上 振り角 249° ビートエラー0.1ms -001 sec/day

右下4)12時上 振り角 232° ビートエラー0.1ms +010 sec/day

 

最後にベルトを取り付けます。ポツポツに見えるものは研磨で取りきれなかった深い打ち傷です。

 

研磨前(左)研磨後(右)

 

写真で見る限り、細かな線キズ程度は落とせましたので、遠目にはキレイになった印象です。(実物を間近で注意深くみると、取りきれなかった深いキズが結構残ってしまいました)

 

完成

今回のサービス料金:オーバーホール(自動巻き) ¥20,000

外装研磨サービス:フルポリッシュ ¥5,000

ブログ掲載オプション:¥5,000

錆びとりパーツ補修:¥ 10,000

合計:¥ 40,000

 

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