RADO: Minister (ETA cal.2798)

オーバーホール事例:ラド・ミニスター(神奈川県H.I.様ご依頼品)

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ラドのミニスターのオーバーホールとライトポリッシュのご依頼です。ETA cal.2798 搭載で6振動です。後続となるETA cal.2824など28系の前身となる機械で、cal.2824は8振動で別のムーブメントですが、基本的な構造や設計思想は一致しています。分解前の測定でも全体的に遅れてはいますが、姿勢差はΔ14秒ほどで振りもしっかりしており、素性の良さが分かります。オーバーホールの実施でΔ10秒以内が見込まれます。

 

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文字盤のイカリマークは、オリジナルのものは裏に軸がついていて、動くように作られています。しかし、このシンボル部分は取れやすい欠点があり、どうやら過去に取れてしまって修理で接着剤で固定してしまったようです。それだけならまだしも、曲がったまま付いています。経緯が不明ですが、なんだか少しやるせないですね。ご覧のようにべったりはみ出してますから、これでは外して再接着もできません。今こんな修理する店つぶれると思います。ある意味で昭和がウラヤマシイです。

 

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全てのパーツの分解と洗浄をして、パーツを並べたところです。うっかり写真を撮り忘れてゼンマイを組み込んでから撮影したため、香箱は出来上がってますが、ちゃんとゼンマイも取り出して洗浄しています。

 

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最初に地板にテンプだけを組んで、ひげぜんまいの調整を行います。この機械は緩急針にネジ溝がついており、ネジを左右に回すことで歩度の進み/遅れを調整する仕組みになっています。歩度の微調整がしやすく、かつ位置がずれにくい利点はあるものの、それはひげぜんまいが正しいカーブに調整済みであることが前提です。カーブが正しくない場合、緩急針をずらしながら再調整しますが、その際は上記の利点がそのまま欠点(再調整しにくい)でもあります。イカリマークで嫌な予感はしていました。やらなくて良いのに何かの一つ覚えでコテコテの内あて調整(カーブを強制的に内側に偏向させてアオリを消す手法で60〜70年代国産の安い時計に多いが、このテンプのひげぜんまいには向かない)がされており、それを再調整し直したため、少し疲れました。

 

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洗浄前の香箱とゼンマイの洗浄と再注油後の香箱です。28系は8振動のため厚いゼンマイが入っていますが、cal.2798 は6振動なので8振動よりも低いパワーで動作させることができ、ゼンマイは普通の厚みです。特にcal.2824は手でゼンマイを巻き上げると重く感じることが多いです。本機は28系とギア比などは同じでも、ゼンマイが薄いので、軽やかとまではいきませんが普通に巻き上げることができます。

 

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ベースムーブメントの組み立てです。巻き上げ機構と表輪列から組んで行き、脱進器・調速機へと進みます。

 

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ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 285° ビートエラー0.0ms +006 sec/day

右上)文字盤下 振り角 301° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

左下) 3時下  振り角 239° ビートエラー0.2ms +011 sec/day

右下)12時下  振り角 233° ビートエラー0.1ms +008 sec/day

分解前の姿勢差Δ14秒から、Δ7秒へと半減しました。予想通りの好結果です。テンプのひげぜんまい調整をめんどくさがらずにちゃんとやった結果が出ています。ただ洗って油を差しただけでは、こうはいかないです。

 

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カレンダー機構の組み立てと、文字盤/剣付けを行ったところです。

 

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ケーシングしたところ。回転錐にはベアリングが入っておらず、2枚の金属版でサンドイッチしているシンプルな構造です。6振動により香箱のゼンマイを巻き上げるための力が少なくて済むため通用する仕様と思います。ベアリングは優れた機械特性を持ちますが、強い負荷で長期利用すれば経年劣化します。その点こちらは簡単な構造でも、負荷が弱く劣化しにくいのが利点と思われます。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 301° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

右上)文字盤下 振り角 305° ビートエラー0.0ms +003 sec/day

左下1) 3時下 振り角 260° ビートエラー0.1ms +010 sec/day

左下2)12時下 振り角 260° ビートエラー0.2ms +001 sec/day

右下3) 3時上 振り角 262° ビートエラー0.2ms +006 sec/day

右下4)12時上 振り角 266° ビートエラー0.2ms +010 sec/day

最大振り角305°で最大姿勢差Δ9秒ビートエラーも0.2ms以下と優秀です。半世紀前(60〜70年代頃)の製品ですが、現行品のETA搭載ムーブメントと比べて全く遜色がありません。時計のケースを見ればわかりますが、相当使い込まれてきて、腕のアヤシゲなショーワの修理(?)も経てなお、これだけの性能が回復できるのですからスゴイと思います。やはり、スイス製の舶来品には一日の長があると認めざる得ません。

 

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完成

今回のサービス料金:オーバーホール(自動巻き) ¥20,000

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