ROLEX: Date Just Ref.1601 (cal.1570)

オーバーホール事例;Rolex “Date Just” (三重県Y.M.様ご依頼品)

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今回のお品は、ロレックスのデイトジャストです。Cal.1570を搭載した毎時19,800振動のロービート・ムーブメントになります。なお、ご依頼のサービス内容は、オーバーホール&フル・ポリッシングです。

 

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分解前の測定です。

左上)文字盤上 振り角 239° ビートエラー 0.6ms -009 sec/day

右上)文字盤下 振り角 242° ビートエラー 0.7ms -002 sec/day

左下)12時下 振り角 212° ビートエラー 1.0ms -005 sec/day

右下)3時下 振り角 201° ビートエラー 1.1ms -020 sec/day

最大姿勢差Δ18秒あり、とくにリューズが下向き(3時下)で遅れます。この姿勢は人間が自然に立った状態のときの腕時計の姿勢を表しており、普段身につけているときに最も影響する姿勢ですが、よりによってここが一番遅れています。実使用の感じでは一日に15秒以上遅れている状態と思われます。

 

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分解していきます。テンプの耐震装置には、油が一滴も残っておらず、乾ききっています。このような状態で動かすと、当然機械にとって良くありませんし、先ほどみた測定結果のようにバラツキを伴った動きがデータからも読み取れます。

 

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なぜか香箱の蓋が外れている状態でした。そして、ここだけ異様に油がはみ出して残っておりました。他のパーツはどれも油が乾ききっていましたが、ずいぶん妙な状況で、通常あまり見られない状態です。前回の修理内容が気になります。かなり自己流でバランスの良くない注油(?)作業をしたのではないかと思われます。いずれにしても香箱の蓋が外れるようなことがあってはいけません。他人の失敗から学ぶべき事も多い世界です。

 

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分解して洗浄が完了したところです。幸いパーツそのものは大きなダメージもなく、輪列→裏回り→再び輪列と、順調に組んでいくことができました。

 

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組み上げ後、ムーブメント単体での測定です。

左上)文字盤上 振り角 289° ビートエラー 0.0ms +008 sec/day

右上)文字盤下 振り角 281° ビートエラー 0.0ms +004 sec/day

左下)12時下 振り角 238° ビートエラー 0.0ms +011 sec/day

右下)3時下 振り角 242° ビートエラー 0.1ms +002 sec/day

文字盤上と文字盤下(裏平差)の歩度が4秒あるのが気になりますが、注油直後は分解前の特性を引きずることがあり、とりあえずこのまま進みます。縦の姿勢差のほうが10秒程度あり、こちらのほうが深刻と言えます。年式を考えれば、この程度は十分に合格圏内で、同世代の他のブランドから見ればむしろ良いほうですが、cal.1570 のポテンシャルからすると、もう少し改善できる余地はありそうです。

 

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歩度の調整は年代や状態によっては一発で決めようとせず、エージング後により細かく追い込むこととして、本体をさらに組んでいきます。写真は剣付け(針をつける)をしている様子です。デイトジャストといえば、ロレックスが発明したカレンダーの瞬間送り機構が有名です。日付けが0時ちょうどで変わるように合わせますが、使用に伴ってずれて来たりするので、最終的に0時ちょうど〜0時1分のどこかで落ち着くように狙って付けます。ちなみにロレックスでは0時ちょうどの前後30秒が合格の調整という話を聞いたことがあります。(実際にどう調整しているかは何でもヒミツにしたがるブランドのため不明です。。)

 

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数日のエージング後に、再び歩度を再調整しました。

左上)文字盤上 振り角 280° ビートエラー 0.1ms +004 sec/day

右上)文字盤下 振り角 279° ビートエラー 0.0ms +003 sec/day

左下)12時下 振り角 237° ビートエラー 0.0ms +005 sec/day

右下)3時下 振り角 239° ビートエラー 0.1ms +001 sec/day

気になっていた裏平差はほぼ解消しました。エージングが進んで本調子がでてきた所です。縦の姿勢差は、テンワの片重りをチラネジ調整などを行なって、実使用で一番長くとどまる可能性の高い振り角のとき、もっとも秒差が小さくなるように設定します。(一般の方にはなんのこっちゃ??かも知れません。テンプの理論は奥が深く難解です、、、ともかく頭も手先もフル稼働です)この測定値はあくまで『ある時点』での状態であり、香箱のゼンマイをいっぱいに巻いた状態から次第にほどけていくに従って、振り角や歩度も変化していきます。現行品はその変化の値が少ない(等時性が良いという)ように作ることに昔より成功していますが、アンティークの時計ではどうしても変化の差が大きい傾向にあります。ですから、あまり測定値を鵜呑みにせず参考までとして見る必要があります。未来永劫この数値で動作するわけではなく、実際に着用したときの値がこれらの数値と同じ動作をするわけでもありません。念のため。

 

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ケースのポリッシュ前(左)とポリッシュ後(右)です。

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細かい擦れキズ程度はご覧の通りピカピカに戻ります。深く大きなキズや打ち凹みなどは取りきらずに残しています。完全に全てのキズなどを取ろうとすると、より多く表面を削り取る必要があり、1回だけならほとんど分かりませんが、メンテナンスのたびに新品同様に研磨した場合、どんどんケースやブレスレットは小さくなって、5回くらいでフォルムや強度を保つのが限界に達します。(その頃には明らかに小さくて形もだれてしまいます)アトリエ・ドゥのフルポリッシュは10回やってもオリジナルの形状から大きく形が崩れない程度の浅いポリッシュで、かつ見た目には新品に近くなるようバランスを考えております。

 

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金の色も、写真では磨く前のほうがいわゆる金色に近いように見えますが、金は磨くと実際には黄色というよりシルバーのように白っぽい輝きをします。(写真ではどす黒くなったように見えますが、光を反射していない部分は黒く見えます。研磨前のほうがゴールドっぽく見えるのは表面が小傷によって乱反射しているためです)

 

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完成。

今回のサービス料金:オーバーホール(自動巻き)¥20,000

研磨サービスのコース:フルポリッシング ¥5,000

追加パーツ費用:裏蓋ケースパッキン ¥500

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