ROLEX: DateJust Ref.16234 (cal.3135)

オーバーホール事例:ロレックス・デイトジャスト (茨城県H.A.様ご依頼品)

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ロレックスのデイトジャストが最近遅れるようになったとのこと。分解前の測定ではリュウズ下と12時下の縦姿勢で、−4秒程度の遅れが見られる状態。振り角は平姿勢で300°出ており、まだ新しい機体のようです。普段お使いになっていて、いつもより遅れが見られるようになった頃が、ちょうどオーバーホール時期のサインです。

 

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全てのパーツを分解して、洗浄が完了したところ。定期的にオーバーホールのメンテナンスをされている様子で、パーツはほとんど摩耗が見られず、とても良い状態でした。少しの出費をケチって使い続けたがために、パーツを擦り減らして本来の性能が出なくなってしまう時計はとても多いです。手入れの文化から、使い捨ての時代になった影響でしょうか。大事な時計ほど定期メンテナンスをして欲しいものです。

 

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本体の組み立てに先立ち、まっさらの地板にテンプだけを組んで調整します。あらゆる角度からひげぜんまいやバランスの具合を確認できるので、最初にテンプの調整を済ませてしまいます。ロレックスのパーツは1本100万円超の富裕層向けハイエンド腕時計と同じレベルの仕上げがされており、たいへん美しくて品質の高いものです。テンプからも気品が感じられます。

 

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ひげぜんまいは、1.天真に対して90°直行する水平ラインを保つこと(写真上)2.内端中心から外端に至るまでどの部分も同じ幅であること(写真下)の2点を同時に満たすことが重要です。それぞれをフラット、中心、と略して呼んでいます。時計を長く使ううちに、ひげぜんまいの中心がズレてきたり、フラットでなくブレが出てきたりします。写真のようにフラットと中心を理想的な状態に修正します。

 

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香箱のゼンマイも取り出して洗浄し、巻き直した上で注油を行ないます。写真は五点差しでグリスオイルを使用しています。アトリエ・ドゥではメーカーで指定の油が公開されているものは同じ油を使用し、非公開または不明のアンティーク品などは時計師の経験により最適と思われる油を使用します。(ロレックスはなんでも非公開のヒミツ主義ですが、工房主は注油の情報を知っております)

 

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ムーブメント本体を組み立てます。最初にセンターのカナと巻き上げ機構から始め(左上)、輪列の歯車をのせて(右上)輪列受けを組み(左下)、香箱受けや丸穴車と受けまで組んだところです。(右下)

 

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脱進器(アンクル)調速機(テンプ)まで組んで、ベースムーブメントの完成です。歯車のホゾや各パーツには最適な種類と量の注油も済んでいます。油の寿命はせいぜい長くて5年です。その期間を超えて使い続けると、パーツは摩耗によるダメージが進みます。

 

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ベースムーブメントの測定です。

左上)文字盤上 振り角 302° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

右上)文字盤下 振り角 299° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

左下) 3時下  振り角 272° ビートエラー0.1ms +002 sec/day

右下)12時下  振り角 261° ビートエラー0.0ms +003 sec/day

分解前にわずかに遅れていた縦2姿勢は、+2〜3秒程度に回復しました。毎度同じセリフですが、ロレックスの3135というキャリバーは、まるで金太郎飴のように同じ顔(特性)を見せてくれます。Δ5秒以内に収めるのが困難なムーブはいくらでもありますが、Δ5秒を外れることが希有な時計など滅多にありません。

 

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ベースムーブメントが良好のため、カレンダー(瞬間送り)機構と、文字盤/剣付けまで進みます。剣付けは、秒針/分針/時針の高さと間隔が等しくなるように付けます。どの時刻で重なっても同じ幅を保っているか、入念にチェックします。

 

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ケーシングまで進み、自動巻ブロックと裏蓋まで取り付けました。この裏蓋はいわゆるアフターマーケット品(社外品)ですので、現行品であっても防水保証の対象外となります。厳密には改造品となるため、本来は修理をお断りしておりますが、この部分が原因の防水不良などのリスクは自己責任で、当工房は責を負わないという条件付きに限り、時計の修理をお引き受けしております。研磨サービスも対象外となり、「洗浄のみ」となります。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 294° ビートエラー0.1ms +005 sec/day

右上)文字盤下 振り角 291° ビートエラー0.1ms +005 sec/day

左下1) 3時下 振り角 272° ビートエラー0.0ms +002 sec/day

左下2)12時下 振り角 265° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

右下3) 3時上 振り角 261° ビートエラー0.2ms +005 sec/day

右下4)12時上 振り角 269° ビートエラー0.1ms +004 sec/day

歩度は+002から+005まで、全姿勢差Δ3秒という素晴らしい特性です。現行品においてcal.3135 は最も優れたムーブメントの筆頭にあげても、異論はないものと思われます。本機はA製番(1999年製)であり、17年前のものになりますが、経年の使用に耐えて高い性能を保ち続ける点で、これに匹敵する機械はほとんど無いと言ってよいでしょう。

 

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完成

今回のサービス料金:オーバーホール(自動巻き) ¥20,000

外装研磨サービス:洗浄のみ

 

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