SEIKO: Advan 7019A

オーバーホール事例:セイコー・アドバン(神奈川県H.I.様ご依頼品)

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セイコー・アドバンのオーバーホールとライトポリッシュのご依頼です。少し時を早く刻むとのことでしたが、おそらく平姿勢で机の上などに置いておくと日差+4秒程度であることが、測定器の結果と一致します。しかし、縦姿勢では−50秒程度遅れていることから、身につけている時間が長い程に遅れる状態と思われます。

 

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ブレスレットのクラスプ中留め用のバネ棒が、正しくない種類ではみ出しているうえ、老朽化して一部が壊れています。良く見ると同じセイコーのアクタスのものですが、ご遺品とのことなのでオリジナル純正品とみなして修理対象に。中留め用ヘッドのバネ棒で、より丈夫な太い径のものに交換しました。

 

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バネ棒と一口に言っても、長さや太さはもちろん、使われる場所によってヘッドの形状の異なるものが色々ありますので、どんな時計にも対応できるようにバネ棒はスペアパーツも豊富に取り揃えています。写真に映っているものはこれでもまだ一部です。

 

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パーツの分解と洗浄がおわって、ならべたところです。

 

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香箱のゼンマイも洗浄と再注油を行います。

 

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組み立ての様子です。7019Aは70年代のムーブメントで、セイコーの機械式時計のなかではクォーツ式時計に取って代わる最晩年にあたる頃の製品です。セイコーイズムといいますか、独自の設計思想のひとつの結論とみてとれます。賛否はあると思いますが、一時計師としての率直な感想は「組みづらい時計」です。クォーツ式時計が爆発的にのび始めた頃の70年代にあっては、合理化と低コスト化はやむを得ない時代の流れだったのでしょう。クォーツショック前のマーベルに見られるような質実剛健ぶりは影をひそめ、高価なクォーツ式時計(!)に比べて、いかに安く大量に作れるかが機械式時計に残された悲しい末路だったことをこの機械そのものが物語っています。理想的な機械式時計とは?などと言っていられなくなって、なり振り構わず作ったような設計ですから、ライン生産できても分解掃除しにくい構造です。今日の機械式時計の復権ぶりはさすがに予見できなかったものと思います。

 

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ベースムーブメントの測定です。

左上)文字盤上 振り角 223° ビートエラー0.1ms +015 sec/day

右上)文字盤下 振り角 224° ビートエラー0.0ms +015 sec/day

左下) 3時下  振り角 197° ビートエラー0.1ms +013 sec/day

右下)12時下  振り角 196° ビートエラー0.2ms +020 sec/day

振りが200°ちょっとまでしか出ないのは、60年代〜70年代ごろの国産時計では珍しくなく、今回もよくあるパターンです。歩度もだいたい10秒〜20秒程度に収まっています。すこぶる精確とまではいかないけど、実用性がないほど悪いわけでもありません。なんとなく国民性が感じられるとまでは言い過ぎでしょうか。なんだか安心いたします。

 

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カレンダー機構の組み立てと、文字盤/剣付けへ進みます。この文字盤は光の反射する角度によって表情を変える仕様です。ケースのシルエットや風防カットガラスと相まって、70年代を象徴するようなサイケデリックな雰囲気を醸し出しています。ちょうどスターウォーズが大ヒットした時代ですから、世の中全体が何やら近未来的でSFチックな世界観がもてはやされていた中での登場だったろうと思います。ピコピコしたコンピューターサウンドが聞こえてきそうです。とにかくブームに乗ってみる(が、飽きるのも早い)のも、どこかの国では今に始まったことではありません。

 

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ケーシングまで進んだところです。80年代には製造が途絶え、その後90年代以降に復活した現行のセイコー機械式時計と見比べてみると、ムーブメントの雰囲気はすごく良く似ています。かつての製品同様に、半世紀を経てなお使える製品作りをして欲しいものですね。目先の利益ばかり追求すると、50年後の人々に笑われます。それではいつまでたっても海外ブランドを超えることはできないでしょう。流動的に移り行く時代の中で、新しいトレンドを巧みに取り入れつつ、一方でコンサバティブに頑固に守るスタイルとの共存。そのさじ加減の絶妙さ。ブランドをブランドたらしめている秘密は、その辺りに見え隠れする気がいたします。哲学なくば後追いに過ぎず。

 

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最終特性

左上)文字盤上 振り角 242° ビートエラー0.1ms +006 sec/day

右上)文字盤下 振り角 241° ビートエラー0.0ms +007 sec/day

左下1) 3時下 振り角 220° ビートエラー0.2ms +011 sec/day

左下2)12時下 振り角 209° ビートエラー0.1ms +019 sec/day

右下3) 3時上 振り角 212° ビートエラー0.1ms +012 sec/day

右下4)12時上 振り角 219° ビートエラー0.0ms +004 sec/day

全姿勢差(Δ)約16秒で、実測値も日差20秒程度なので、まずまずの仕上がりだと思います。60〜70年代のアンティーク品はパーツを替えたくても手に入りません。経年の摩耗や劣化が進めば、オーバーホールで再調整したとしても日差20秒以内の精度に入れることは簡単ではありません。

 

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完成

今回のサービス料金:オーバーホール(自動巻き) ¥20,000

交換パーツ費用:バネ棒 ¥500

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