Seiko: GS Hi-beat 36000 (6146-8000)

セイコー・GS ハイビート36000 (6146-8000)

セイコーGSハイビートの修理ご依頼です。祖父の形見で現在は祖母が使用しているとのこと。動くことは動くものの、1日に30分も遅れる状態。風防はくもったりして、水入りの疑いもあり。タイムグラファー(測定器)では刻音が読み取れず。さてさて。

 

内部のムーブメントを分解していったところ、ガンギ車に細長い糸くずが絡みついて、ご覧の通りホゾでとぐろを巻いている状態。毛細管現象により、ホゾ部分の油はきれいに流れ出てしまって残っておらず。摩擦抵抗が極端に増大してしまい、とても正常には動作しない状態でした。こういうことがあるので、クリーンリネスには非常に気を使います。ちょっとした繊維くず一本が原因で、時計は簡単に動作不良になってしまうのです。

 

こちらは文字盤のようす。フチのところが表面の塗装コーティング膜の劣化ではがれてきています。当工房では原則として文字盤や針は現状のままで修理対象外ですが、これは放置すると破れて内部に入り込み、動作不良の原因となる得るため、今回限り特別な接着剤により補修しました。

 

補修前(左)と補修後(右)

光の加減ですこし凸凹が目立ってしまいますが、ケースで隠れる部分のため、取り付けしてしまえばそれほど気にならなくなります。この手の文字盤はオークションで新古品を見つけると、目が飛び出るほど高い(3万円以上)です、、。

 

当工房ではebayなどの海外オークションも利用して、可能なかぎり交換パーツの入手に努めております。今回はリュウズと巻き真をそれぞれ別のルートから買い付けて輸入しました。セイコーGSの人気は国内では根強くヤフオク等ではなかなか見つからないパーツが、海外では良心的な価格で売られていたりします。しかし、レア品はすぐ出てしまい、タイミングよく探しているパーツがみつかることは稀です。今回は非常に運が良かった例となります。

 

古いリュウズと新しい交換パーツ。ここまで擦り切っていると別物に見えますね。相当この時計を愛用されてきたのでしょう。

 

巻き真は再利用できないこともなかったですが、一部サビや劣化が気になったため、万全を期して交換することに。交換中にリュウズからきれいに抜き取れず折れてしまうこともあります。端の加工が甘いようすがみてとれます。(右)新しいパーツは適度な長さに調節し端を再加工します。(左)

 

古いリュウズ内部にはガスケットが溶けて残っておらず、当然これでは防水が効きません。風防くもりの原因もここだと思います。(左)新しいリュウズにはしっかりガスケットが入っているのがわかります。(右)

 

こちらは香箱内部のようす。油が乾ききってカスとなり、黒く汚れが目立ちます。(左)この写真のようになるまでには少なくとも10年以上は手入れせず使い続けないといけません。1年前のオーバーホールでは明らかにこの部分は何も手入れされていないでしょう。こういう手抜き修理は本当に多いです。今回のオーバーホールにてゼンマイを取り出して洗浄・巻き直し、新しい油を注油しました。(右)

 

すべてのパーツの分解と洗浄が完了したところ。

 

バランス(テンプ)を地板に組み付けて、ひげぜんまいの調整をします。所々ぐにゃぐにゃでしたが、カーブを整えました。ひげの曲がり方がおかしいと性能に影響を与えます。

 

ムーブメント本体の組み立てです。6146Aは機械式全盛の60〜70年代の中でも比較的後期に作られたもので、設計は合理的で無駄がなく、組み立てもやさしい機械です。この頃のセイコーはモデル毎に製造ポリシーがころころ変わり、中には非常に組み立てにくいものもあります。

 

ベースムーブメントの完成。

 

ベースムーブメントの測定

左上)文字盤上 振り角 245° ビートエラー0.0ms +008 sec/day

右上)文字盤下 振り角 260° ビートエラー0.0ms +011 sec/day

左下) 3時下  振り角 227° ビートエラー0.1ms +010 sec/day

右下)12時下  振り角 227° ビートエラー0.0ms +009 sec/day

年式相応ですが、良好な仕上がりなほうだと思います。

 

続いてカレンダーまわりの組み立てです。

 

文字盤と剣付けのようす。

 

ケース本体は洗浄のみです。防水風防の形状がオリジナルと異なり、ベゼル内径との間に少し隙間がありますが、実用上問題なくご依頼主はそのままを希望したため交換せず。ガンギの糸くずの件と合わせて考えるに、前回業者はかなりいい加減な修理をしている疑いがあります。

 

ケーシングまできました。内部の問題も解決し、リュウズも新しく巻きやすく使いやすい時計に戻りました。お祖母様に喜んでいただけるとよいのですが。

 

最終特性

左上)文字盤上 振り角 253° ビートエラー0.0ms +009 sec/day

右上)文字盤下 振り角 254° ビートエラー0.0ms +009 sec/day

左下1) 3時下 振り角 232° ビートエラー0.0ms +007 sec/day

左下2)12時下 振り角 231° ビートエラー0.0ms +008 sec/day

右下3) 3時上 振り角 228° ビートエラー0.0ms +008 sec/day

右下4)12時上 振り角 224° ビートエラー0.1ms +012 sec/day

実測は日差平均約+10秒。実用的で年式からすると理想的な仕上がりです。

 

 

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seiko 6146-8000
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□オーバーホール料金 自動巻 ¥ 20,000
□追加パーツ費用
 ・純正リュウズ ¥ 10,000
 ・純正巻真   ¥ 5,000
□その他
 ・研磨サービス 洗浄のみ ¥ 無料
 ・文字盤補修   ¥ 5,000 備考:コーティングハガレ修正
 ・ブログ掲載オプション ¥ 5,000
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合計金額      ¥ 45,000

 

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