CARTIER – Pasha Seatimer

Cartier | Pasha Seatimer ref.2790

カルティエのパシャ・シータイマーのオーバーホールご依頼です。時計を腕から外すと、パワーリザーブが数時間しかもたず、精度も安定しなくなったとのこと。原因を突き止めるべく、内部を分解して調べていきます。


カルティエ パシャ・シータイマー

パワーリザーブが正常に動作しないときは、自動巻ブロックのパーツに問題がないかをまずチェックします。すると、切替車のホゾの部分が赤くサビを生じており、摩耗して変形してしまった状態でした。これでは当然ながらパーツの役目として機能しませんので、ゼンマイを正しく自動巻きできず、持続時間が極端に短いものになってしまいます。


新しい切替車のパーツに交換を行います。ムーブメントはETA2892A2で、純正パーツを選びました。安価なジェネリック品も市場には出回っておりますが、長期的な信頼性の面で不安があるため、当工房では採用していません。


新しいパーツとの比較。切替車は高速で回転するパーツであり、ホゾの状態は性能に直結します。また、自動巻の機械はなるべく手巻きせず、初動のために数回リュウズを巻いたら時刻を合わせて、あとは腕に巻いてお使いいただくことによる自動での巻き上げをしたほうが良いです。そうすることで、このパーツは摩耗しにくくなり長持ちします。


自動巻ブロックを外して、ベースムーブメントのみの状態で分解前の測定を行います。若干ビートエラーなどは見られるものの、ほぼ理想的な性能に近い動作をしているようです。


ムーブメントをすべて分解して洗浄し、パーツをならべたところ。切替車のほかには特に痛んだパーツは見つからず、オーバーホールを進めていきます。


香箱のゼンマイも洗浄して再注油します。古い油は乾いてしまって、黒ずんだ汚れとなっているのが分かります。


地板にバランスを組んで、ひげぜんまいの調整を行います。


ベースムーブメントを組み立てていきます。輪列に歯車をのせていくようす。


ベースムーブメントまで組みあがったところ。過去に整備されたような痕がいっさいなく、状態は良好です。


ベースムーブメントの測定。再調整によりビートエラーも解消し、振り角も少し上がりました。歩度も各姿勢でよく揃っており、2892A2の理想的な動作特性となっています。


カレンダー機構の組み付けへと進んでいきます。こちらも特に問題となるところは見つかりませんでした。


文字盤と針の取り付けを行います。針は真横から見て水平にまっすぐになるように取り付けします。


ケーシングまで来ました。分解前は回転がしぶかった自動巻ローターも、スムーズに回転するようになりました。


最終特性

左上)文字盤上 振り角 319° 歩度 +005 sec/day

右上)文字盤下 振り角 311° 歩度 +005 sec/day

左下1) 3時下 振り角 291° 歩度 +007 sec/day

左下2)12時下 振り角 290° 歩度 +005 sec/day

右下3) 3時上 振り角 277° 歩度 -001 sec/day

右下4)12時上 振り角 288° 歩度 +000 sec/day