ROLEX – Explorer I

ROLEX | Explorer I ref.114270

ロレックス・エクスプローラー1のオーバーホールと外装研磨サービスのご依頼です。ブレスレットや本体上面にはあまりご使用感もないため、小傷が目立つ側面の鏡面部分のみ軽くツヤ出し研磨を行いました。(追記:2022年5月に外装研磨サービスは廃止されすべておまかせコースに統合させていただきました)


ロレックス・エクスプローラー I

分解前の測定をしてみます。ビートエラーが少しあるものの、振りは280°あり、歩度も各姿勢で揃っております。今回とくに調子が悪いわけではなく、定期的にメンテナンスを行なっているとのことでした。


ムーブメントを分解して洗浄します。まめに定期メンテナンスを行えば、油切れによるパーツの摩耗や劣化などを最小限に抑えることができます。サビ発生などがあった場合でも初期段階で見つけることができ、不測の事態を未然に防止することができます。結果としてパーツを交換する必要がなく、長い期間に渡ってお使いになれます。


香箱のゼンマイも洗浄して再注油します。分解前(左)は油が乾ききって、黒い油カスになっているのが分かります。このような状態でも時計は動いてしまいますが、パーツは確実に摩耗が早まって痛んでしまいます。目一杯巻き上げた状態で劣化したゼンマイが切れてしまうと、エネルギーが一気に解放されて、香箱につながる歯車のホゾが折れたりすることもあります。そうなればゼンマイのみならず、歯車まで交換が必要になります。


バランスを地板に組んで、ひげぜんまいの調整をします。ここは時計の性能に大きく影響する極めて重要な調速機構です。バランスの良し悪しが振り角や歩度など時計の性能を決めると言っても過言ではありません。非常に繊細な機構でもあり、とくに慎重な作業が求められます。


ひげぜんまいは天真から外端に向かって、等間隔に渦を巻いている状態が理想です。ひげの中心が天真と一致しないと、間隔の広い部分と狭い部分ができてしまい、動作に悪影響します。理想的なアルキメデス・スパイラルに調整できたところ。(上)かつ、ひげを真横から見て天真軸に対して90°直角に水平に取り付けされている必要があります。これも曲がって傘型や盃型にズレがあると、歩度の姿勢差に影響がでます。こちらも、まっすぐ水平に取り付けできています。(下)


すべてのパーツの洗浄がおわって、ならべたところ。これからムーブメントを組み立てます。


リュウズなど巻き上げ・針回しの機構から組んでいきます。こちらはカレンダーや文字盤がつくほうの面です。


つづいて、輪列の歯車を組んでいきます。香箱、2番車〜4番車、ガンギ車までのせたところ。


輪列受けを組んで、角穴車・丸穴車、アンクルまで組み上がりました。各機構の動作の具合をチェックし、必要に応じて調整を行います。


さいごにバランスを組んで、ベースムーブメントの完成です。


ベースムーブメントの動作をチェックします。分解前の測定ではビートエラーが出ていましたが、組み直し・再調整により正常な値へと解消されております。振り角・歩度ともに理想的な動作の範囲に入っており、順調に組みあがっているようすが見てとれます。


カレンダー機構の組み付けを行い、文字盤と針の取り付けを進めていきます。cal.3130はカレンダー機構が省略されているため、受けを取り付けて文字盤を組めば完成です。針は真横から見て、まっすぐで等間隔に取り付けできているかチェックします。


最終特性

左上)文字盤上 振り角 278° 歩度 +004 sec/day

右上)文字盤下 振り角 280° 歩度 +005 sec/day

左下1) 3時下 振り角 252° 歩度 +002 sec/day

左下2)12時下 振り角 243° 歩度 +004 sec/day

右下3) 3時上 振り角 250° 歩度 +003 sec/day

右下4)12時上 振り角 239° 歩度 +000 sec/day

たいへん良好な特性です。全姿勢が日差0〜5秒におさまっており、ロレックスの性能が正しく発揮されております。


研磨前(左)研磨後(右)

今回の該当コース:【 オーバーホールコース 】