TAG-Heuer S/el Chronograph

TAG-Heuer | S/el Chronograph

タグホイヤーのセルのオーバーホールご依頼です。亡きお母様との思い出の時計とのことで、オリジナル部品のままで整備をご希望とのことです。定期的にメンテナンスを行われており、今回は一度内部の状態を見てみたいとのご希望で当工房へのご依頼となりました。


タグホイヤー・セル

分解前の歩度測定から。平姿勢で280°まで振っており、歩度も一部姿勢で若干の遅れはありますが、おおむねよく揃っています。定期的メンテナンスを受けている時計は、特性がしっかりしています。


内部ムーブメントを分解して洗浄していきます。タグホイヤーのセル・シリーズはカレラ・シリーズよりも歴史が古く、発売から20年以上も経過しております。大切にされてきた時計であることを裏付けるように、内部パーツで交換が必要となるような部分は見当たりませんでした。


洗浄したパーツをケースに収めるようす。


ベースムーブメントの組み立てを行います。まず地板にバランスを組んで、ヒゲ具合の調整を行います。


水平・中心ともにわずかな修正のみで済みました。従前のメンテナンスはメーカー系列のサービスとのことで、さすがにおかしないじられ方はされておらず、やりやすいものでした。


つづいて輪列を組んでいきます。香箱からガンギ車までのせたところ。


ベースムーブメントまで組みあがったところ。キャリバーはETA7750です。


ベースムーブメントの測定。全巻きで280°振っており、これは分解前と変わりはありません。正しくメンテナンスが更新された証です。平姿勢の歩度をぴったりゼロ付近に合わせると、縦姿勢はわずかに進みとなっており、順調な仕上がりです。


引き続き、クロノグラフ機構の組み込みを行なっていきます。こちらもベースムーブメント同様に、経年の割にはほとんど整備痕や劣化もなく、状態は良好です。


クロノグラフ機構を拡大したところ。細部までキレイな状態で、サビなども全くみられません。とてもよくメンテナンスされてきている個体だと思います。


クロノグラフ受けを組んで、ローターを取り付けたところ。cal.7750はクロノグラフ機構と自動巻機構が同居した構造のため、同時に組み立て・調整がすすみます。


こちらは文字盤側のカレンダー機構などを組んでいくところです。クロノグラフ機構のうち、リセットボタンにつながる部分は、このようにカレンダー機構とも同居しています。


カレンダー受けを組んで、さらに文字盤と針を取り付けしていきます。cal.7750用の組み台を使って、取り付けした針の動作やクロノグラフ機構の動作チェックも行います。


機能には問題は見られなかったものの、針の夜光塗料などは経年の劣化によりヒビ割れを生じています。針の表面にも一部には変質がみられます。やがて夜光が崩れ落ちると文字盤内に飛散しますので、針を交換するか、もしくは夜光入れ替え・夜光落としなどを検討せざる得なくなりそうです。オリジナルのままというご希望の場合、むずかしい問題です。


ケーシングまで来ました。これでまた3年〜5年後まで引き続きご愛用いただけることと思われます。


最終特性 クロノグラフ・ON

左上)文字盤上 振り角 282° 歩度 +004 sec/day

右上)文字盤下 振り角 289° 歩度 +003 sec/day

左下1) 3時下 振り角 233° 歩度 +009 sec/day

左下2)12時下 振り角 240° 歩度 +008 sec/day

右下3) 3時上 振り角 240° 歩度 +011 sec/day

右下4)12時上 振り角 238° 歩度 +012 sec/day


最終特性 クロノグラフ・OFF

左上)文字盤上 振り角 278° 歩度 +002 sec/day

右上)文字盤下 振り角 280° 歩度 +003 sec/day

左下1) 3時下 振り角 261° 歩度 +008 sec/day

左下2)12時下 振り角 251° 歩度 +008 sec/day

右下3) 3時上 振り角 250° 歩度 +011 sec/day

右下4)12時上 振り角 245° 歩度 +011 sec/day