モンブラン・ニコラリューセック

Montblanc | Nicolas Rieussec

モンブラン・ニコラリューセックのオーバーホールご依頼です。めずらしい時計がきたので、ピックアップ投稿とさせていただきました。


モンブラン・ニコラリューセック

分解前の測定から。特に問題のあるところはなく、振りも出ており歩度もしっかりしています。


さっそく分解していきます。文字盤がかなり変わった構造で、このようにクロノグラフ秒針と分積算の窓の針が、細かく分解できるようになっています。あまり他では採用されておらず、めずらしいです。


自動巻ブロックを分解したところ。おや?

これは、、セイコーのマジックレバーではありませんか。笑

部品点数が少ない割に巻き上げ高効率でコスパいいです。わざわざライセンス料払うとは思えませんので、おそらく特許が切れたのかと。(そういえばセイコーのほうでもオメガのコーアクシャル脱進器を作りはじめたようです。特許切れ)

常に業界リードするのは大変ですね。特許期限が切れると、こうして堂々と同じ技術を使って製品づくりをしてくるメーカーが出てきます。


ムーブメント本体も分解して洗浄しました。


バランスを組んで、ひげぜんまいの調整です。


まだ新しい個体のため、ほとんど調整らしい調整はありません。組み付け状態の確認となります。水平もしっかり。


こちらはバランス受けを外したところ。アミダが個性的です。緩急針はなく、いわゆるフリースプラング。テンワ4箇所のバランス・スクリューを回して歩度を調整するタイプです。


こちらはムーブメント本体を組み立てていくところ。ツインバレルですね。吹雪をしのぐため、山小屋に籠っていてうっかり巻き忘れたとしても、ロングライフです。(そこまで考えたかどうかは分かりませんが。勝手に想像)


視覚的な面白さを優先させたためか、輪列にはどうしても無理が出ます。中央にクロノグラフ・ランナー兼4番車が入るため、ベースムーブメントのみの組み上げで動作チェックする際には、このように他の車は抜いたままでとりあえず受けを組んでしまう必要があります。

アンクルを組んで、先にこちらの調整と動作の確認を済ませた上で、もう一度受けを外して他の歯車およびクロノグラフ機構の組み付けに進みます。要領が悪いとうまく組み上げできません。


クロノグラフ機構の組み付けにすすんだようす。この部分はピゲの技術などが採用されています。あちこちのメーカーの製品のいいとこ取りです。それらを上手にアッセンブリーしています。


ムーブメントの組み上がったところ。後発になるほど、斬新なものを作るのは難しくなります。特に機械式時計のような、ある程度は枠が決められている世界ではなおさらだと思います。その中でも頑張っているブランドのひとつだと思います。


クロノグラフ秒針はホイヤーを思わせるディスク型。

地盤にマーカーが打ってあり、目盛りをこの線に合わせます。


同じく、積算計もマーカーに合わせて取り付けました。

初期仕様ではそれぞれの針の『60』および『30』が、このように12時位置にくるように取り付けされていますが、仕様を無視して任意の位置に変更できるようにするため(?)の目印がディスクのほかの箇所にもついています。


例えば、文字盤につく指示針の位置を左右の任意の位置に変えれば、『60』の位置は9時にして、『30』の位置を3時にする、といったような設定も可能です。(が、もちろんそんなことはやりません笑)

それはそうと、、、。

ここまで組んでから気がついたのですが、カレンダーの日付が2つ見えてしまっております。あれれ?これでは10日なのか9日なのかわからない。はて?


再び分解してよくよく調べれば、カレンダー送り車にちょっとした仕掛けがあり、ここのミゾとカレンダーディスクの歯のかみ合いが1個分ずれていただけ。

あーあ。

このため、クロノグラフディスクも積算ディスクも全部取り外してやり直し。

なかなか初めてやる機械だとコツがつかめないうちは苦労します。


念のため、文字盤だけ仮組みして、見え具合を確認。

今度はちゃんと「今日は20日」だと分かる。

これを確認してからディスクを取り付ければよかったわけです。新しくやる時計は難しい。(といっても、このごろ手をつけた古い懐中時計なんかに比べると、仏様のような組みやすさ)


あっという間にケーシング。私の作業量にして、1日もかからず。

今回のお代は3万円です。(クロノグラフ)

パーツ交換した場合は別途に加算です。料金のページにも書いてあるんですが、いまだに「本当にどのブランドでも2万円ですか?」とか、お問い合わせをいただくことがあります。

定期メンテのオーバーホールのみで済むような時計なら、どんなブランドでも同一料金です。

ここがよく分からないのか、オークションで買ったようなボロの時計を、定期メンテ相当の時計と区別がつかず、同様の料金で直せると勘違いしている人。(これは当ブログで過去に何度も触れておりますが、問い合わせしてくる人はウチの過去ブログなんか読んでいない笑)

世の中なんでもパッケージ化がひどくて、日本はとくに定価商売の傾向が強い。横並び体質ともいう。みんな同じじゃなきゃ気が済まない。自分がワクチン打って、他人が打たないのが許せない。いつからそんな偏狭な思考になったのか、国民病ともいえるほどその傾向は強く、同調圧力は半端ではない。

結局、牛丼並盛り二百八十円也の感覚で、支払う金額と受けられるサービスのわかりきったものは安心感があるのだろう。そういうモノばかりはびこる。

時計修理のようなどこか得体の知れない料金カラクリは敷居が高い。


最終特性。分解前と歩度の傾向は変わらず。振りは落ちてしまった。

どうにも手馴れていない機械だったため、注油のやり方とかどこか最適ではなかったのかも知れない。

こういうことも含めて、なんでも自動巻なら一律2万円、クロノ3万円という訳です。

完璧なサービスお望みなら、メーカーのコンプリートサービス受けたらいいんです。

値段はウチの3倍も10倍もするでしょう。それでもアチラにはその機械を組ませたら、研磨させたら、○○させたら業界一、の職人たちが揃っています。パーツもいくらでも取り寄せできます。だからそのお値段なんです。

ウチは私がひとりでなんでも全部こなします。ですからメーカー直営サービスセンターのようにはいかない部分が多々あります。メリット・デメリットよくよくお考えになり、ご納得の常連様がウチをリピートしてくださります。

どこに出したらいいか迷うようなら、販売店に聞いたらいいです。

結局ウチをご利用になるお客様は、情報処理能力にたいへん長けた、頭の良い方々ばかりなのだと思います。その点で当工房のマーケティング戦略は間違っていなかったと確信しており、ご贔屓にしていただき非常に有難く存じております。

しかしながら、まったく残念なことに世の中の情勢はどうも良い方向には進んでおらず、このところ雲行きはますます怪しくなる一方ですが。

このままいくと、どこかで限界がきそうです。まず既存のものの崩壊でしょう。それはひとたび起これば、全てを巻き込んで壊滅的なまでに波及するでしょう。

大混乱と混沌に備えるべきです。目下は1年分位の食料かしらん。余裕ある方は3年くらい。さらに水源と地下倉庫兼核シェルターでもあれば憂いなし♪

(電気が人類の全く役に立たなくなったとき、役立つ機械式時計は今のうちにお手入れしておきましょう笑)


完成。

本日もご利用ありがとうございました♪

今回の該当コース:【 オーバーホールコース 】