フランクミュラー・カサブランカ

 Franck Muller | Casablanca

フランクミュラーのカサブランカのオーバーホールとブログ掲載オプションのご依頼です。手持ちの文字盤に交換希望とのことで同梱です。


フランクミュラー・カサブランカ

分解前の測定から。見事に姿勢がバラバラです。某海外マーケットプレイスでのお買い物だそう。ジツはご依頼主は過去にもフランクミュラーばかり当工房にご依頼のリピーターの方。これで3本目。2本目はトリプルカレンダーのやつで、弊ブログに掲載済み。

さて、今回のご依頼ですが

  • 上海時代の話は聞きたい
  • 愛する時計の中は見てみたい
  • えいや~で大金をはたいた私を叱ってほしい(笑)

という、リクエスト?と思われるメッセージを頂戴しております。

叱って欲しいと言われましても。。。苦笑

そのうち「もっと激しくぶって欲しい」とか言いだすんじゃないかしら、この人

ウチはそういうお店ではございません。念の為。


ガワ(ケースのこと。業界用語)はホワイト・ゴールド。

ははん。さてはこの方、Mであるほか、貴金属フェチと見ました。

カサブランカはSSモデル (SMモデルではない) がメジャー・モデルでして、確かにホワイトゴールドやプラチナのバージョンは希少です。

それで勢い余ってつい財布のヒモが緩んでしまったようです。「風防も交換して安くするから」とか言葉巧みに乗せられてしまったそうです。

、、、風防換えたんですかねコレ?表面に打ち傷が数カ所あるうえに、内部は毛ゴミだらけなんですが。笑

おまけに接着のやり方悪すぎで、気泡だらけ。しかも一部は接着剤が足りてない、、、。

うーん。


風防とガワは隙間だらけのくせに、外側にまで接着剤のはみ出した箇所のオマケつき。

ハウ・マッチ???


裏蓋をあけたところ。ここにも思いっきり毛ゴミたちが、、、。

もう怒りも通り越して、笑うしかありません。笑

これ、ネタでしょう!?!?

わが工房のために、面白いネタをご提供していただき、本当にありがとうございます!


そしてこちらは、交換ご希望の手持ち文字盤。

これも変なところから買ったんじゃないでしょうねえ??

プラケースに入っているまでは良かったんですが、あろうことか大量のクッション材の上面に、わざわざ傷をつけてくれ、と言わんばかりに乗せて蓋閉じちゃってます。(痛すぎる、、、笑)

案の定、新品にもかかわらず文字盤は細かい擦り傷がすでに数カ所ついてしまっておりました。

うーん。。。。


蓋を外した状態。このうえにせめてビニール1枚くるむだけで全然違うんですがねえ。

幸い、目視ではっきりわかるほどの大きなキズはなく。(キズ見で拡大すると小キズだらけですが)

これもネットで買ったそう。いくらしたんでしょうねえ?

取り付けできなかったら大損ですよ〜。笑


11時の下にアヤシイ泡が。

ベンジンをつけたマイクロファイバー棒でやさしく拭ってあげたところ、除去に成功しました。

泡の正体はなんでしょうねえ?笑

水溶性かつ、乾燥するとカルキ様の白っぽい粉を吹く身近な液体といえば、例えば人間の唾液などがございます。

(知識を提供しているだけですよ)


変な方向に話が進む前に、ムーブメントも分解していきましょうか。

これは秒針がつく4番車なんですが、なにやらベットリとした粘性のある液体のようなものが絡みついており、、、、。

(一体今回の時計はどうなってるんだ、、、、)


さっさと分解して、バランス調整。

こちらは特に問題なし。

そういえば、フランクミュラーって私が上海修行していたときの担当ブランドだった話は以前にもしましたが、その話、その話、、、ねえ。

(もう10年前のことだから、記憶がおぼろ)

今、上海はたいへんなことになっているようですな。

ロックダウンとか。少なくともコロナ対策としては全く無意味どころか逆効果であることは衆目にも明らかなはずですが。やめない。

世の中完全に狂ってきてますねー。何のプレイなんですかね??


人口削減が目的と聞いて陰謀論呼ばわりしていた人たちにも、ようやく気がつきだしたんじゃないでしょうか。

このままだと、本気で人類はヤバイ。

おひげはだいじょうぶだなっと。


上海の人たちも、いたって普通の人間でしたよ。ただ、日本人みたいに市民同士が同調圧力かけてくることはない。(むしろ共産党が圧力)

人と違うことは大陸では当たり前ですから。倭人かも知れないし朝鮮人かも知れないし、モンゴルの遊牧民かも知れないし、西はアラボ人(=イスラム)やら、チベタン(=チベット)やら、宿敵インドやら笑 北にはマンモス ろしあ、という巨人族までおる。

そういう国なので、自分と違う考え方とか意見にたいしては、ものすごく寛容であり、おおらか。せせこましく「空気読め」とか「忖度しろ」みたいな日本は、ほんとにせまっ苦しい窮屈な社会だと感じます。

上海にいてアチラの気風に染まっていた頃は、たまに国慶節とかで日本に帰国したときに、とてつもないギャップ感じましたね。ふつーにスーパーのレジのおばさん(失礼!)が、その時は全員が時代劇に出てくるお武家様の奥方に見えたほど!爆

日本人、真面目すぎっていうか、固すぎ。


はい、プラチナパンツで〜す。笑(いい加減にしろ)

まあほとんどの時間は机にかじりついて、文字通り時計修理の修行の身でしたので、あんまりアチラの世界にはどっぷりとは浸れませんでしたが。言葉もカタコトしか覚えられなかったし。(さらに具合が悪いことに、あっちでもエライ奴らはほぼ全員英語ペラペラなんだよ。だから私も幼稚園児並みのカタコト中国語よりも、小学生並みには話せる日常会話レベルの英語を使って意思疎通してしまうことが多く、ますます中国語オボエラレナイ!)

ヤオ・チンゾンルン (ガンギ車ください)

チャガー・ブー・ファンスウェイ (こいつは防水試験が通らない)

ウォー・アイ・ニン (私はあなたを愛しています)

これだけ知っていれば、中国語はパーペキ♪


さて、組み上がりました。

休みの日は、よくお茶城に通っていましたねえ。

上海人というのは、蘇州人なわけですが、団子鼻でずんぐり丸顔っていうタイプが多く、あんまり見栄えはしない。(習近平が典型例)

お茶城ってのは、日本でいう百貨店みたいなビルに、お茶を売るテナントだけが100軒とか200軒とか(上海最大のとこは600軒!!)入っている、摩訶不思議スペース。

そこは、福建とか四川あたりから現地のスタッフが販売のために出稼ぎに来てて、窓口であるお店に置くのは美人と相場が決まっておりまして。笑

四川省あたりは同じ漢民族でも、スラッと長身で手足が長く、美男美女揃いだったりします。(サントリーの烏龍茶のCMに出てくるようなイメージはほぼこの地域の出身だろうな)地域によって言葉もジツは違う。中国語=普通話(プートンワ)は、もともと北京語。南方系はぜんぜん発音やら声調やら違う。文字だけは我が国同様、漢字が書ければ筆談は通じる。笑

上海ではタクシーとか乗っても、運転手がだいたい生粋の上海っ子なわけ。すると、客が上海人かどうかで対応(態度)が違ったりする。

シェーシェー(ありがとう)なんて言ったら、一発でよそ者だとバレる。

上海ではどういうか?

シャージャーノン!(ありがとう)


はい、全姿勢日差10秒以内で、振りも出て言うことなしアルね。

イカサマ・ネット販売の海外マーケットプレイス商品でしたが、どうやら商品だけはホンモノだったようですナ。

上海には、ロレックスやパテックや、その他有名ブランドは何でもほぼ全て、「堂々と」レプリカの偽物を売っている店というのもありまして。笑

色々なことがカオスであり、楽しかったこと、今にして思えば怖かったこと、いろいろありましたねえ。

やはり、全てを語るにはこの場のスペースは不十分すぎるので、またの機会に別のお話でもいたしましょう。笑


くだんの文字盤でしたが、あっさり取り付け可能のホンモノでした。(つまんねーの)

針が青焼きだったので、青の文字盤でどうかな?と思われましたが、夜光が入っている部分が対照色に近く目立つため、視認性は思ったほど悪くありません。


光の当たる角度により、色味が変化する深い青です。

ご依頼主様はよほどこのフランクミュラーに魅せられたようです。

ここまで一つのブランドを好きになれるのもいいですねえ。


せっかくの文字盤が、あの風防のザマでは台無し!

キズもあって、この際新品に交換することをご提案し、ケース研磨もオススメしたのですが、そちらは「新しくなりすぎて、もったいなくて使えなくなるのが怖い」という、じつに奥ゆかしい理由でやんわり却下されました。

風防もどういう因果か。発注後にめずらしく取り寄せ不可となってしまい、仕方なくもともとの風防を取り外して再接着だけ請け負うことに。

これは古い接着剤を落としているところ。やはりというか、よく見ると接着剤のついている部分が波打っていてムラだらけ。

ここはキチンと仕事させていただきました。

そういえば、これは上海で覚えた仕事のひとつです。笑


左(施術前)右(再接着後)

内側にもハミ出していた接着剤を、貼り直してキチンと処理しなおしました。

こういう細かい芸当は、意識高い国のサービスでしかなぜか受けられません。

外国って、おおらかなのは結構ですが、こういうところは無神経なコトも。

そういや、上海でも一度だけ歯医者にかかったことあるんですが。さすがに現地の医者はいろんな意味で怖すぎたので、(歯科診療は日本のほうがはるかに技術が進んでいます)日本人街に1件だけある日本の医者さまがいるところへ。

ところが、歯科助手の女性はみんなあっちのネーチャンで、、、。

こいつらが、まあ人の歯をなんだと思ってやがるんだ!!(怒)というほど、ざつ〜な技と、まな板で魚でも捌くような目つきで、ゲンナリ。

お顔は日本人の医者がスケベエと見えて美人揃いだったが、断然、日本の歯科助手のヤマトナデシコたちのほうが、やさし〜く♪丁寧に♪やってくれます。

決定的な日本人と中国人の差を感じたのは、この口をポカーンと開けて、診療台の上で身動きのとれない状況下で、突如として私に起きた瞬間だったのでした。

やっぱり日本がイチバンいいや♪


上海談義もそこそこに。ケーシング。

その歯科治療後。気分を直すべく、癒しのお茶城へと向かったことは、いうまでもない。

美味しいお茶飲みながら、今度は別のネーチャンたちと。。

(まあ、お茶城だけでもホント書ききれないドラマがイロイロあったのですが)


18禁 18金

ホンモノ。


風防は再接着しただけなんですが、がぜん見違える出来映えに。

分解前は「これニセモノなんじゃないの?」オーラが出ていましたが。

さすがにホンモノだけあって、ちゃんと作業すればそれに風格が応えてくれます。


完成。

今回の該当コース:【 すべておまかせコース 】