JAQUET DROZ – Grande Seconde

Jaquet Droz|Grande Seconde Ltd.

ジャケ・ドローのグランデ・セコンドのオーバーホールご依頼です。ミュージアムで有名なブランドですが、今回はその限定バーションになります。


ジャケドロー・グランデセコンド

まず分解前の測定から。だいぶ姿勢差があり、最大 -50秒ほど遅れがみられます。振り角も全巻きで230°と少し元気がありません。


ムーブメントを分解していきます。スウォッチ・グループのハイエンド・クラスに位置するブランドのためか、パーツの作りなどはオメガによく似ています。


これはバランスの受けを裏返したところ。矢印の部分はヒゲ棒です。すぐ右どなりのドテは回転するしくみで、ひげぜんまいをセットしてドテを閉じると、ひげぜんまいの脱落をふせぐ傘になります。ヒゲ棒は1本だけで、ドテが2本目のヒゲ棒の役割もかねるタイプです。


ヒゲ棒の状態を確認・修正したのち、バランスとひげぜんまいをセットしたところ。ピンセットをじょうずに使って作業を行いますが、、。


私の手の大きさと見比べてください。パーツはとても小さなつくりで、ヒゲ棒の実際の大きさは指にささるトゲほどもありません。壊さないように取り扱うだけでも神経を使います。


地板にバランス受けを組んで、さらにひげぜんまいの調整などを行っていきます。ピンセットなどを使って、ひげぜんまいを曲げたり伸ばしたりします。極めて繊細な力加減と、精確な修正ポイントを見極める目が必要で、難易度のもっとも高い作業のひとつです。


さきほど見たヒゲ棒とドテの間のわずかな隙間にひげぜんまいが通ります。緩急針の位置を動かして、時計を進ませたり遅らせたりします。ひげぜんまいはバランスが静止した時はヒゲ棒にもドテにも触れることなく、常にその間の中央にあるようなカーブであることが理想です。経年のご使用により歪んでくることが多く、カーブを修正します。


すべてのパーツの分解と洗浄をして、パーツケースにおさめたところ。


ベースムーブメントを組んでいきます。輪列の歯車をのせた状態です。ミュージアム独自のデザインである文字盤と針の位置を実現するために、いくつか余分な中間車などが必要となり、少しパーツ同士が立て込んだ配置となっています。


右上の香箱から、2番車〜4番車ときて、ガンギ車までがベースのムーブメントです。ガンギの左下には4番車と同じ歯数をもつ別の歯車が続いて、この歯車に秒針がつくようになっています。


輪列の受けまで組んだところ。高級機らしく丁寧な仕上げが施されています。


アンクルを取り付けたところ。秒針取り付け用の歯車が邪魔をして、ツメ石と歯車の噛み合いが見えません。このため、調整するためにはいったん受けを外して秒針の歯車だけを外し、調整後に再び取り付け直すという手間がかかります。


バランスと自動巻ローターまで組んだところ。込み入った輪列でありながら、すっきりと美しい佇まいにまとめあげるセンスはさすがだと感心させられます。


ベースムーブメントの測定。振りは260°前後まで回復して、各姿勢とも歩度も揃っており、順調です。ひげぜんまいのカーブを修正した効果が表れています。針・文字盤の取り付けに進みます。


こちらは文字盤のつく表側。通常は中央に時分針をつけるための日車、筒車などがきますが、ここでも時分針の位置をオフセットさせるために中間車とモジュールを一段増やす構造です。


モジュールを追加して外枠を組んだようす。(上)日車や筒車の位置が変化しているのがわかります。さらに文字盤と針を取り付けたところ。(下)文字盤はエナメル/ポーセリン(陶磁器)で懐中時計時代の意匠です。外枠には溝が設けてあり、文字盤が中へすっぽり収まってケースに接触しないよう保護します。これによりケースに強い衝撃が加わった場合も、力が逃げる工夫がなされています。かつての懐中時計では衝撃により文字盤にヒビなどの割れが生じることが多かったことの改良と思われます。


ケーシングまで来ました。ケースは18金ホワイトゴールド製でズシリとした重みがあります。


最終特性

左上)文字盤上 振り角 260° 歩度 +009 sec/day

右上)文字盤下 振り角 257° 歩度 +014 sec/day

左下1) 3時下 振り角 226° 歩度 +016 sec/day

左下2)12時下 振り角 219° 歩度 +009 sec/day

右下3) 3時上 振り角 221° 歩度 +012 sec/day

右下4)12時上 振り角 234° 歩度 +010 sec/day