ROLEX – Oyster Date

ROLEX | Oyster Date ref.15000

ロレックスのオイスター・デイトのオーバーホールご依頼です。ref.15000は cal.3130が搭載されており、80年代頃に製造されました。外装に使用感がなく整備済み中古品と思われます。こういうものは過去の修理内容がピンキリだったりします。


ロレックス・オイスターデイト

分解前の測定から。振りは260°前後まで出ており、歩度も各姿勢でまずまず揃っております。ムーブメントは測定結果だけを見ると、それなりに手入れされているようにも見えます。


裏蓋をあけたところ。一見問題はなさそうですが、よく見ると自動巻ブロックの受けのフチが削られたような痕がついております。削り粉はどこにも見当たらず、過去の整備で修理したものと思われます。


自動巻ブロックを分解して、回転ローターを取り外したところ。ローターの軸の周囲に影のようなものがみられます。これは平らではないことを示しています。おそらく軸が曲がったか何かでローターが水平に回転しなくなり、受けと接触して傷だらけになったものを修正したのでしょう。


機能には問題ないようでしたが、ご依頼主に伝えたところ交換を希望されたため、ローターなどのパーツを取り寄せることにしました。ロレックスではパーツは売ってくれません。e-bay などオークションを駆使して世界中から集めます。


パーツはパッケージ入り新古品が入手できるものは、優先して採用します。開封されたものは新品と称して中古品を加工したものだったり、そもそもニセモノだったり、妙に安いものほど危険です。必要なパーツだけを適正な価格で入手するには、たいへんな経験とノウハウが必要です。簡単に真似しようと思ってもできませんから、おやめください。


古いほうは何か適当な工具でカシメ直した痕がみてとれます。新しいローターと見比べれば差は一目瞭然です。きちんとした専用工具で正しく軸を取り付けないと、結局またそこが壊れたりして、被害が別のパーツにも及んだりします。


自動巻ブロックの受けも交換することになりました。こちらは新品ではあいにく入手できず、中古から状態のよいものを探します。もともとパーツが入手しにくいブランドのうえ、古いモデルですので、思うように理想のパーツが調達できないこともあります。その点はどうかご了承ねがいます。モノがないです。


これはローターを飾り受に取り付けているところです。軸を止める馬の蹄のような形のクリップですが、ローターに合わせてこれも新しく交換しました。微妙に厚みの違うものが3タイプあります。どれも純正品です。知らないで適当なものを組むと、また別のところが壊れます。こういう情報はどこにも公開されず、誰も教えてくれません。「パーツは自分で買うから修理だけしてくれ」のような方のご利用はいっさいお断りしております。間違ったパーツを送りつけてくることが目に見えているからです。どうぞそのままご自分で修理なさってください。


新しいパーツを組んで動きをチェックします。ほんの少し厚みが違うだけで水平に回転しなくなり、余計な部分に負荷がかかって、壊れます。時計のパーツは非常に精密であり、1/100mm の違いでも場所によってはまったく性能が異なるものです。


新しいローターをムーブメントに組み込んで、動作をチェックします。交換前と比べてよりスムーズな回転で、動きも軽やかになりました。


ムーブメント本体を分解していきます。3番車に問題があり、こちらも新品パッケージと交換します。


ホゾの部分にわずかな轍がみられます。まだ摩耗の初期段階ですが、性能に直結する重要なパーツですから交換します。


地板にバランスを組んで、ひげぜんまいの調整です。歪みが見られたため、修正しました。


修正前(左)と修正後(右)さて、どこを修正したでしょう?

こうして並べて見比べれば時計師じゃなくても分かると思いますが、修正前(左)はヒゲの中心が右方向によっております。修正後(右)は全体に同じ幅で等間隔に渦を巻いているのが分かります。こういう部分を現物をパッとみてすぐ気がつく目と、修正できる手がなくては、よい時計師にはなれません。


香箱のゼンマイも取り出して洗浄します。洗浄前(上)は香箱の中も油がかわききって、ゼンマイも汚れが黒くこびりついています。こんな状態でも冒頭で見たようにある程度の性能が出てしまうため、だいじょうぶだと勘違いして定期メンテナンスに出さずに使い続ける人が本当に多いです。それで、いよいよ不具合が出たような時には手遅れとなるのです。


洗浄したパーツに油を一滴も差さずに組み上げても、実は時計は動きます。性能もでます。ところが、油がなければその後のパーツの摩耗度合いに大きな差が出ます。油の力を借りなければ、一生モノと呼ばれる時計であっても、数年ともたずにガラクタと化すでしょう。


すべてのパーツを分解して洗浄したところ。


地板に輪列を組んでいきます。cal.3035 は後継のcal.3135 と人気を二分するムーブメントです。時計師の間でもよく酒席などで熱い贔屓合戦が繰り広げられます。やれ、使われている鉄の硬さがどうの、パーツの仕上げがどうの、賑やかに話題が尽きることがありません。それだけ時計師をも夢中にさせる名機のひとつと言って良いでしょう。


自動巻ブロックの状態とは対照的に、ムーブメント本体はあまり整備痕などもなく、パーツの状態も年式の割には良好です。


ベースムーブメントの完成したところ。


半巻きの特性ですが、すでに分解前の全巻きと同等の性能まで出ています。


順調にカレンダーと文字盤・針の取り付けへと進みます。


ケーシングまで来ました。新しいローターの輝きがひときわ映えます。受けも交換したことでグッと印象が良くなりました。


最終特性

左上)文字盤上 振り角 280° 歩度 +006 sec/day

右上)文字盤下 振り角 280° 歩度 +005 sec/day

左下1) 3時下 振り角 255° 歩度 +002 sec/day

左下2)12時下 振り角 250° 歩度 +003 sec/day

右下3) 3時上 振り角 250° 歩度 +000 sec/day

右下4)12時上 振り角 253° 歩度 -001 sec/day