MHR – mahara sparviero

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マハラのスパルビエロの修理と外装研磨サービスのご依頼です。風防やリュウズの交換が必要でしたが、現在は時計を作っていないブランドのため交換用パーツはなく、汎用のパーツを使って行いました。なお、こちらは『すべておまかせコース』の修理例となります。※『すべておまかせコース』は2023年6月をもちまして終了しました。現在はご提供しておりません。こちらは過去の参考事例となります。


マハラ・スパルビエロ

不動品の状態であり、分解前の歩度測定はできない状況です。こういう時計の場合は、見積もりするまでいくらになるか見当がつきません。交換パーツの種類や個数によっては、オーバーホール料金よりも大きく上回る金額になることもめずらしくありません。その点につきご了承いただき、お引き受けいたしました。


内部はいったいどうなっているのか。恐る恐る裏蓋を、、。と思って、裏蓋がすんなり開かないこともあります。今回はかなりサビが生じて固着しておりました。ごくまれですが、どうしても裏蓋が開かずに修理中止となる場合もございます。長年に渡って未整備の時計にはそういうリスクもあります。


リュウズを取り外したところ。根元が壊れており、頭がフラフラと空回りする状態でした。このため、手ではゼンマイを巻き上げることができず、時計の動作もさせることができませんでした。


修理前の外装の状態で、上面を拡大したところ。ケースには大小無数に傷があり、風防も打ち傷による欠けがみられます。


ケース側面のリュウズが差さるパイプの状態。ケースはステンレス製ですが、パイプは真鍮のようです。内ネジでロックするタイプですが、ミゾが擦り切れており、汎用品にはない特殊な構造であるため、リュウズと共に交換することにしました。


ベゼルを外したところ。こちらもかなりサビがみられます。研磨サービス料のほかにサビ取り&パーツ補修料もいただくことに。サビをきれいに落とすのは大変な手間と時間がかかります。


風防はオリジナルはミネラルガラスですが、より強度の高いサファイア・クリスタルに交換します。ガスケットも新しいものにします。


ケースの研磨を行い、外装パーツを組み込んだところ。元々が丸みのあるデザインであり、形状もシンプルでバフ研磨に向いたものであったので、こういうものは研磨をするのも新しくピカピカになって良いと思います。ユニ・セックス的なサイズでもあり、女性が身につけてもおかしくありません。


内部ムーブメントも分解してパーツを洗浄したところ。リュウズだけが壊れて巻けなかったようで、内部のムーブメントは継続利用が可能でした。たまたま幸運だった事例ですが、中までサビや破損でどうにもならない状態ですと高額見積もりになってキャンセルが多く、なかなか修理事例としてブログに上がってくることがないだけです。実際はそういうダメな時計も少なくないです。


香箱とゼンマイも洗浄して注油しなおします。


ムーブメントの組み立てです。地板に輪列のパーツを並べていくところ。ETAのcal.2824 が採用されており、時計専門メーカーの作ったものではなく、時計以外にも服飾・雑貨などを手がけるデザイン・ブランドなどにはよく使われている機械です。高級時計ブランドのように細部まで丁寧に仕上げされたりはしていない汎用型ですが、性能がよく評価の高いムーブメントです。


ベースムーブメントが完成したところ。


ベースムーブメントの測定。半巻きでも250°以上振っています。歩度は少しばらつきもありますが、じゅうぶん実用的な範囲内です。波形も直線性がよく、動作も安定していることが見受けられます。


汎用機であるため、カレンダー機能もついています。デザイン・ブランドらしく、機能など無視して文字盤のデザイン性を優先したようです。こういう場合ももちろんカレンダーは正常に機能することをチェックします。目では見えないものの、カレンダー切り替わりのタイミングに合わせて長短針を組み付けるのは時計師の性でしょう。


針を真横からみたところ。等間隔にまっすぐ取り付けできています。針はペラペラの汎用品ではなく、鉄製の塗装されたものです。このため、針のシルエットが安っぽくなくカッチリ感があって、オリジナル性もアピールできています。こういう部分のセンスの良さはさすがデザイン・ブランドと思います。


ケーシングをして修理完成です。ローターにはブランドのロゴが入っています。


最終特性

左上)文字盤上 振り角 260° 歩度 +002 sec/day

右上)文字盤下 振り角 264° 歩度 +004 sec/day

左下1) 3時下 振り角 236° 歩度 +009 sec/day

左下2)12時下 振り角 232° 歩度 +005 sec/day

右下3) 3時上 振り角 231° 歩度 +003 sec/day

右下4)12時上 振り角 233° 歩度 +007 sec/day

測定値のLiftangle設定を45°と間違えたため、振り角が実際よりも小さく表示されています。全姿勢ともこの数値に+30°足した位が正しい値により近いと思われます。歩度はこの設定の影響を受けないため、正しい計測値が表示されております。


完成

今回の該当コース:【 すべておまかせコース 】