Gérald Genta – chrono sport

Gérald Genta | chrono sport

ジェラルド・ジェンタのクロノ・スポーツのオーバーホールご依頼です。時計外装で有名なデザイナーでもありますが、自らの名を冠した時計ブランドからも、数多くのユニークなデザインの時計を発表しています。これはそのうちのひとつです。


ジェラルド・ジェンタ クロノ・スポーツ

分解前の歩度測定から。振りは平姿勢で280°前後あり、じゅうぶんです。歩度が全姿勢ともやや遅れ気味です。お使いになっていて、数年たって少し遅れ始めてきた場合は内部の油切れであることが多く、オーバーホールのちょうどよいタイミングです。


今回のムーブメントはETA2892A2に、Dubois-Deprazのクロノグラフ・モジュールを組み合わせたタイプのものです。全てを分解すると、とてもパーツ量が多く一度に作業もできないため、ベースムーブメントと分けて個別に組み立てを行います。


ベースムーブメントのパーツの分解と洗浄が完了したところ。


香箱のゼンマイも洗浄して巻き直し、新しい油を注します。


地板にバランスを組んで、ひげぜんまいの調整を行います。ETAのムーブメントにはエタクロンによるヒゲ持ちと緩急針アオリがついており、容易に細かく微妙な調整ができるため、性能が出しやすい仕組みです。


ベースムーブメントを組み立てていくようす。受け上面などには模様が施されたグレードの高いバージョンです。


ベースムーブメントの測定。主要4姿勢ですが、平2姿勢では300°を超える振りが出ており元気です。縦2姿勢いずれも280°まで出ており、歩度も全体でよく揃っていて2892A2の理想的なスペック通りの性能です。


さらに自動巻ブロックも組み込んで動作チェックをします。問題なくローターのスムーズな動きと巻き上げを確認できました。


代わって、クロノグラフ・モジュール部分の組み立てに進みます。歯車群を乗せていくようす。


組み立てが進んでいきます。デュボア・デプラーのモジュールは構造が込み入っており、正しい手順で組み立てていかないと、全てのパーツが収まりきらないような構造になっています。


クロノグラフ受けまで組み上がり、さらに上部にカレンダー機構を組んでいくようす。歯車には一種のメモリの役目をするパーツがついており、よく役割や仕組みを理解して組まないと、カレンダーがおかしな動きになってしまいます。


ビッグカレンダーのディスクは2つあり、それぞれ10の位と1の位を割り当てています。これを歯車のメモリにより決められたタイミングでそれぞれ回転させることで、日付を表現する仕組みです。かみ合いを1つ間違えて組むと、『15』の次に『25』が出たり、『32』が出現したりといった具合になります。パズルのようで、かなり頭の体操になります。


文字盤と針付けをしたところ。クロノグラフだけでも結構たいへんな仕組みのムーブメントですが、ビッグカレンダーも合わせると動作チェックも含めて膨大な作業時間が必要になります。組み上げた後に何か問題がみつかるとショックが大きいです。これまで見てきた逆の流れで再度分解して、もう一度やり直しになります。そういう難しさのある時計です。


外装は洗浄のみですが、クロノグラフ・プッシャーなどは分解して内部の洗浄と再注油などが必要になる場合があります。ガスケットなど防水パーツの経年による劣化をしたものは交換も行います。


ケーシングまで来ました。長い行程を経て、やれやれとため息が出る瞬間です。


全巻き クロノグラフON

左上)文字盤上 振り角 305° 歩度 +005 sec/day

右上)文字盤下 振り角 308° 歩度 +005 sec/day

左下1) 3時下 振り角 278° 歩度 +006 sec/day

左下2)12時下 振り角 280° 歩度 +000 sec/day

右下3) 3時上 振り角 272° 歩度 +006 sec/day

右下4)12時上 振り角 275° 歩度 +008 sec/day


全巻き クロノグラフOFF

左上)文字盤上 振り角 311° 歩度 +006 sec/day

右上)文字盤下 振り角 310° 歩度 +005 sec/day

左下1) 3時下 振り角 278° 歩度 +008 sec/day

左下2)12時下 振り角 278° 歩度 +000 sec/day

右下3) 3時上 振り角 280° 歩度 +005 sec/day

右下4)12時上 振り角 287° 歩度 +010 sec/day