OMEGA – Seamaster Cosmic

OMEGA | Seamaster cosmic

オークションで入手のオメガ・シーマスターの修理と外装研磨のご依頼です。こういうものを修理したり研磨する場合は、オーバーホールのみでは直りません。交換用のパーツが必要ですが、ひとつのパーツでも何万円もいたします。場合によっては【すべておまかせコース】での対応となることがありますので、あらかじめご了承のうえお申し込みください。


オメガ・シーマスター コズミック

当工房に到着したお見積もり前の状態です。ケースには大小無数の傷があり、風防にもスクラッチがみられます。バネ棒に至ってはサビが酷くて固着してしまっているような有様。ベルトも付属しておらず、ケース本体のみです。


分解前の測定です。振りも出ておらず、歩度は+100秒以上もの極端な進みです。内部がろくに整備されていないだろうことは容易に想像がつきます。こういうものを「可動品」とか、海外ですと“keeping good time”などと称して平気で売る場所がオークションです。出どころはゴミ箱かその辺から拾ったものなのかさえ怪しいものです。お決まりのセリフは、ノークレーム・ノーリターンです。


リュウズを取り外したところ。中のガスケットはゴムですが、経年による劣化でベトベトに溶けており、はみ出してリュウズの外やケースのパイプにべっとりと絡みついております。当然ながら、これでは防水性は全く期待できません。


リュウズは補修して再利用するのは無理と判断し、オメガ純正のパッケージ入り新品パーツと交換します。古い真鍮製のパイプもステンレス製の純正パーツに取り替えます。


ケースの研磨を行い、パイプも新しく交換したところ。


こちらは研磨前の分解し終わったケース内部のようす。内部に湿気が入り込んで、長期間放置されたことによると思われる緑青がみられます。


研磨と洗浄により、ピカピカになりました。


これは研磨前のケース上面を拡大したところ。バネ棒は破壊して取り外します。かなり深い打ち傷がカンの周囲や側面との際の部分などに見られます。


形状がシンプルでバフ研磨に向いていたため、がっつり削り落としてツルツルになりました。表面の仕上げはオリジナルは中心から放射状にヘアラインがまっすぐ伸びる『極光仕上げ』と呼ばれるものですが、当工房には設備がないためできません。代わりにサテン仕上げで極光風に目付けをしてあります。


カンの内側は入り組んだ部分の小傷は取りきれず少し残りましたが、ベルトをつけてしまえば目立たない程度にはなったと思います。バネ棒の頭が取り付け穴の内部に残ってしまって、取り除くのに苦労しました。


裏面の作業前と研磨後のようす。オメガマークは表面に薄く打刻されており、もともと消えかかっていました。研磨によりさらにほとんど見えなくなりました。これもマークを入れる設備がなければどうしようもありません。研磨を諦めてマークを残すのか、マークは消えてもよいからキズを消したいのかどちらかです。マークを残して傷だけ消すとかいう都合のよいことはできません。


内部ムーブメントも分解してパーツを洗浄します。


奇跡的にムーブメントのパーツは交換せずに済みそうな状態でしたが、あくまで運が良かっただけの話だと思ってください。だいたいこの手のものは中のパーツもサビだらけで、見積もり金額が十万円以上にも跳ね上がってキャンセルされる方がほとんどです。たまたま交換なしで済む案件だけが進行となり、さらにブログ掲載をご希望された場合のみこうしてご紹介できております。


地板の周辺が黄色く変色しています。これもケース内部に湿気が混入したまま、長期間に渡って放置されることによって表面が劣化した結果です。


文字盤の真下に隠れていた部分は、比較的よく状態が保たれています。


代わって輪列側の組み立てに移ります。ここでもギリギリのラインで内部パーツが腐食の魔の手から辛うじて逃れていたことがわかります。しかし、歯車のホゾなどはそこそこに摩耗しており、一度もメンテナンスされないまま使い潰されたような個体だと思われます。


ベースムーブメントの組みあがった状態。過去に整備がされていないものは、整備痕などがなく一見するとキレイで素人目には大丈夫そうに思われるかも知れません。しかし、内部パーツは摩耗だらけで寿命が近い状態のものも少なくありません。


自動巻ブロックとローターを仮組みして、動作をチェックします。分解前(上)はローターの表面も一部が変色していたことが分かります。地板の周辺のフチにも緑青が出ていました。整備後(下)ではかなり改善されています。今回は外装ケースおよびムーブメントの補修に、相当な手間と時間が必要だったため、別途にパーツ補修&修正費用をいただきました。


キャリバーはオメガの往年の人気モデルに数多く搭載された、cal.565です。56X系の機械は現在でも入手可能ですが非常に高価です。歯車ひとつが数万円です。今回は内部ムーブメントパーツは全く交換していないにもかかわらず、リュウズやパイプといった外装費用と、サビ取り&パーツ補修代などすべて合わせて上代は5万円以上かかっております。これは安いほうです。オークションで入手された中古のアンティーク時計を修理される場合は最低でもこのくらい費用が必要です。上は天井知らずです。サビついたパーツなどは、分解して見積もりするだけで壊れるリスクもあります。そういうものを全部分解して細かい部分までチェックしないとこの手の時計は正確な見積もりが出せません。そのため、当工房では見積もりをキャンセルする場合は手数料として¥10,000を申し受けております。


ベースムーブメントの測定。振りも上がって、各姿勢の歩度も揃っております。交換は免れたものの、内部パーツの状態も決して良くはなかったので、だいぶゆったりな調整で様子をみます。cal.565本来の性能に追い込むなどというのは、この時計が5年後も10年後にも定期メンテナンスを受けに当工房へまたやって来てからの話です。オークションあがりの時計は一度だけ利用しておしまいにされる方も多いので、まずは実用できる水準への回復が先決になります。元の状態がひどいものは一足飛びにはまいりません。さらなる性能回復のために交換したいパーツは山ほどあります。

オークションに出てくる過去の使用・整備歴がわからない時計というものは、そうしたものです。


研磨前と後の比較。ケース上面の仕上げ。風防はプラスティック製のため、浅めのスクラッチならば研磨により落とすことが可能です。


研磨前(上)研磨後(下)