IWC – Ladies Handwind Watch

IWC | Ladies Hand-wind Watch cal.41

IWCのレディース手巻き時計の修理ご依頼です。ひとつ前のご依頼品と一緒にお申し込みのもので、こちらは奥様のものと思われます。


IWC・レディース手巻き時計

分解前の測定です。振りも歩度も姿勢差がかなり激しい様子がみてとれます。一筋縄ではいかなそうな予感がいたします。


内部ムーブメントを分解していきます。耐震装置をはじめ、内部の油はすっかり乾ききっておりました。バランスのひげぜんまいは、中心から大きく偏心しており異常な状態です。


バランスを受けから外して、ひげぜんまいの歪みを修正しているところ。修正前(左)ではひげ持ちの部分が内側に大きく曲がってしまっており、これを外側に向けてカーブを理想曲線へ戻します。(右)


すべてのパーツの分解と洗浄が済んだところ。一部パーツにサビなどが見られましたが、幸いすべて補修により再利用できる状態でした。


香箱のゼンマイも油が乾いて、黒い汚れカスとなってしまいます。香箱内部も一部が表面を削られてしまって地金が露出しています。(左)洗浄して汚れを落とし、新しい油を入れます。(右)


地板にバランスを組んで、ひげぜんまいなどの調整をします。アンクル中心に振り石が来るようにしますが、ひげ持ちはバランス受けに固定する旧タイプであるため、これがなかなか骨の折れる作業です。


ごく簡単に説明した図です。時計師の目線では、このようにバランスが見えています。天真を通って、アンクルとガンギ車のホゾ穴をまっすぐ結ぶ線がアンクル中心です。ここを中心軸として、アンクルは左右に往復運動をします。アンクルから伝わる輪列のエネルギーを、振り石にぶつけることでバランスを動作させます。静止した状態で振り石はこの中心になければならず、位置が左右どちらかにずれていくほど、ビートエラーとなって表れます。わずか1/10000秒でも誤差があれば、それは『0.1ms』のエラーとして観測されるほど、シビアな調整が求められます。


つづいて、輪列を組んでいきます。受けは面取りされて、上面にはさざなみ模様が入れられています。歯車の表面仕上げも丁寧で気品が感じられます。


香箱の角穴車と、それにつながる丸穴車と中間車が並びます。小さなパーツですが、細部までしっかりと作られており、組んだ時の動きも精密で無駄がありません。グレードの低い機械だとおもちゃっぽいガタつきなどがあったりしますが、操作した瞬間にそれらとは次元が違うものであることが指先にはっきりと伝わってまいります。


ムーブメントの組み上げが完了しました。IWC=International Watch Co. は、ロレックスやオメガと並んで人気の高い時計ブランドで、わが国では頭のインターナショナルを略して『インター』の愛称で好まれてきました。中高年以上の年代の方々にとっては『IWC』よりも馴染み深い呼び名ではないかと思います。


ムーブメントの特性をチェックします。12時下でやや歩度の遅れとビートエラーが取りきれずに残りましたが、分解前と比べればじゅうぶんに実用できる範囲に収まっています。


文字盤と針の取り付けに進みます。文字盤の表面の仕上げは彫り込みによるもので、独特の表情を演出しています。


ケーシングまで来ました。ケースは18金製です。


最終特性

左上)文字盤上 振り角 253° 歩度 +030 sec/day

右上)文字盤下 振り角 240° 歩度 +021 sec/day

左下1) 3時下 振り角 200° 歩度 +015 sec/day

左下2)12時下 振り角 187° 歩度 -004 sec/day

右下3) 3時上 振り角 190° 歩度 -011 sec/day

右下4)12時上 振り角 190° 歩度 +025 sec/day


ケースは軽いツヤ出しの研磨をしてあります。研磨前(左)研磨後(右)


研磨前(左)研磨後(右)